第70話 先輩対すのなさん
すのなさんが俺に対して、
「わたしと付き合って!」
と言ってくる。
ようするに、
「よりを戻したい」
と言っているのだ。
俺はもう乃百合さんと付き合い始めている。
俺を振ったことを後悔しても、もう間に合わない。
すのなさんの申し出を断ろうとしたその瞬間……。
「すのな、ここにいたのか!」
一人のイケメンが声をかけてくる。
「先輩……」
すのなさんがつぶやく
「教室にはいなかったから、少し探してしまったぜ」
声の主は、イケメン先輩。
この学校で一番のイケメンな男性だ。
俺もそのことは、認めざるをえない。
でも、先輩は、すのなさんのことを捨てたはず。
それなのに、なぜすのなさんのこと探していたのだろう?
そう思っていると、イケメン先輩は、
「俺はお前とよりを戻しにきた。うれしいだろう。さあ、これからデートしよう!」
と言い出した。
な、なんだこの人は?
開いた口が塞がらない。
自分が捨てた女性に対して、よくそういうことが言えるものだと思う。
すのなさんはどう対応するのだろうか?
そう思っていると、
「先輩はわたしを捨てたのではなかったのですか?」
とすのなさんは言った。
想像以上に冷たい口調だ。
「うん、確かに俺はお前と別れた。その時は、新しい恋人ができていたからな。でも、もう今は飽きてしまった。それで別れることにしたんだ、でも新しい恋人がなかなか見つからない。それで、お前のことを思い出して、よりを戻すことにしたんだ。どうだ、俺とこうしてまた付き合えるんだ。以前付き合っていた時は、一度しか二人だけの世界に入らなかったけど、これからはどんどん入っていこうと思っている。光栄なことだろう。喜んでいいんだぞ」
イケメン先輩は胸を張って言う。
「先輩、そういうことを言って、今さらわたしが喜ぶと思っているのですか?」
「思っているよ。だって、お前は俺のことが今でも好きだろう?」
「わたしは先輩のことが大好きになった時はありました。イケメンで心のやさしい人だと思っていて、わたしの理想の人だと思ったからです。でも今は違います。わたしの目の前で、先輩は他の女性とキスをして、わたしに大きな打撃を与えました。わたしはその時、心に大きな傷を作っていまったのです。先輩は、わたしが思っていたような心の底からやさしい人ではなく、わたしの理想の人ではなかったのです。その後、どれだけわたしが悲しい思いをしたことか、先輩にはわからないでしょう」
そう言うのであれば、俺の受けた心の傷のことも理解してほしいと思うのだけど……。
「お前が傷を作ろうが作るまいが、俺はお前とまた恋人どうしになりたいと思っている。それでいいだろう。もしお前が俺のことを嫌いになっているのだったら、また好きになればいい。お前のような美少女の恋人になっていいのは、この俺だけだ」
すごい自信の持ち主だと思う。
「悲しみ続けても先輩はこちらに振り向いてくれない。そこでわたしは思い直しました。もう、先輩のことは忘れて、次に付き合う人を決めようと。そして、先輩とはもう二度と付き合わないようにしようと」
「ずいぶん厳しいことを言うもんだ。でもそう簡単に付き合う人を決めるのは無理だろう。俺以上の人間なんて、いるわけがないんだから」
そう言うと、イケメン先輩は笑う。
「いいえ。それがいたんです」
「どこにいるというの?」
「ここにです!」
すのなさんは、俺の方を向き、手で指し示す。
「この男だって?」
イケメン先輩は驚いた。
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