第68話 熱々の恋人どうしになりたい

 月曜日の昼休み。


 俺は伸七郎と一緒に昼ご飯を食べていた。


 いつもの日課。


 ここで俺は伸七郎にお礼をしようとしていた。


「お前の励ましのおかげで、俺は昨日、告白をすることができた。どうもありがとう」


 俺が頭を下げると、伸七郎は驚いた様子。


「告白したのか? それで、相手は?」


「同じクラスの夏浜さんだ」


「才色兼備で、しかも性格がいいと評判の夏浜さん? 今まで告白されても、告白した全員に対して断っていた乃百合さんに告白したのか?」


 伸七郎はさらに驚いている。


「夏浜さんは、俺とはつり合いがとれないと思うほどの素敵な女性だと思う。でも俺は夏浜さんのことが好きになった。この想いをどうしても伝えたかった。それで、告白をしたんだ。ただ、お前のアドバイスがなければ、告白ができなかったと思う。お前にはお礼をいいたい」


「お礼は別にいい。そう言ってもらえるのはありがたいけど、お前が勇気を振り絞って告白したんだ。俺は特に何もしていない」


 伸七郎はそう言うと、少し恥ずかしそうにする。


 そして、


「夏浜さんは性格がいいという話だし、お前も性格がいいから、うまくやっていけると俺は思っている。でも今まで誰とも付き合ったことがない人だから、お前も敬遠するんじゃないかと思っていた。だから、お前が夏浜さんのことを好きになり、告白するとは思わなかった」


 と言った。


 伸七郎にとっては予想外のことだったようだ。


「俺も誰とも付き合っていないと言う話は聞いていた。俺が告白しても断られてしまうんじゃないだろうか、と思うこともあった。それでも俺は夏浜さんのことが好きになっていったんだ」


「それで、返事はどうだったのか? 付き合ってくれることになったのか?」


「付き合うことについてはOKをもらった」


 それを聞くと、伸七郎は、


「よかったじゃないか。俺もうれしいよ」


 と言って微笑む。


「ここまで進むことができたのは、お前のおかげだ。改めてお礼をしたい」


「さっきも言ったけど、いいんだよ。お礼なんて。付き合うことができるようになったのは、お前の想いが夏浜さんに通じたからだ」


「いや、お前のアドバイスがなければ、俺は告白できずに悶々としていたと思う」


「そんなことはないと思う。とにかく、付き合うことができてよかった。うれしいぜ」


 自分のことのように喜んでくれる伸七郎。


 いい友達を持ったものだと思う。


「舞居子ちゃんは夏浜さんの友達だと聞いている。舞居子ちゃんも、夏浜さんと付き合う人がお前だったら、より一層喜んでくれると思う」


「初林さんも、俺にアドバイスしてくれて、ありがたいと思っている。二人には感謝の気持ちでいっぱいだ」


「俺たちは友達としてアドバイスをしただけだよ。当然のことをしたまでだ」


 しかし、俺は前世で、こういう友達を作ることができなかった。


 今世でこういう友達を作れて、本当によかったと思う。


「次は。二人が恋人どうしになっていくことだな。付き合い始めだから、まだ熱々というわけにはいかないだろう?」


「それはその通りだ」


「俺たちの方も、付き合い出したとはいうものの、幼馴染で長年疎遠だったので、まだ熱々という状態にはなったいないんだ。でもあせらずに、距離を縮めていこうと思っている」


「お前たちもそうなんだ……」


「まあ、これから一生連れ添うと決めた人だ。これからいろいろ出かけたりして、熱々の恋人どうしになっていこうと思っているんだ」


「俺たちもそうなっていきたいと思っている」


「ただ俺もあまりよくは知っているわけではないんだが、夏浜さん、体は決して強くなさそうだという話は、舞居子ちゃんから聞いたことはある」


「俺も夏浜さん本人から聞いた」


「俺が言うことではないんだけど、夏浜さんの体調に配慮しながら、仲を深めていく必要があると思うな」


「ありがとう。その点は充分配慮していきたい」


「いずれにしても、お互い、仲を深めていこうぜ!」


 伸七郎はそう言うと、ニッコリ微笑んだ。


 俺は夏浜さんと仲を深めていき、伸七郎の言う、熱々の恋人どうしになりたいと思った。

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