第67話 電話でのやり取り

「俺は夏浜さんのことが好きです」


 俺は乃百合さんにその言葉を送付した。


 しかし、返事はすぐにはこない。


 どういう返事を書こうか、悩んでいるのだろうか?


 いや、俺のことがこれで嫌いなり、返事自体を出さないのでは?


 俺の心はまたマイナスの思いに覆われてくる。


 でも俺は、今日、乃百合さんの前で直接「好き」という気持ちを伝えている。


 直接言うのとルインで言うのとは、状況は違うとは思う。


 しかし、その想いは一緒なので、伝わるはず。


 そう思い、俺は返事を待つことにした。


 すると、


「電話で話をしたいんですけど、よろしいですか?」


 という言葉が送付されてきた。


 乃百合さんの方から電話で話をしたいと言ってきている!


 そういうことは想像をしていなかったので、心が沸き立ってくる。


 俺は、


「もちろんかまいません。俺から電話をかけていいですか?」

 と書いて送付した。


「お願いします」


 乃百合さんがそう送信してきたので、俺は、すぐに電話をかけた。


 恥ずかしいと思っている時間はなかった。


 乃百合さんは、


「島森くんのわたしに対する『好き』という気持ち、改めて受け取りました」


 と言った後、続ける。


「今日お話しした通り、わたしは島森くんのことを懐かしく思っていました。始業式の時に初めて会った人だとは思えなかったのです。でもわたしの手のとどかない存在だと思っていました。それが、今日、声をかけてもらったので、うれしい気持ちになりました、そしてさらに今日、お話しをすることによって、もともと持っていた好意はより一層強いものになってきています。ただ、その強い好意が、恋に変化しているかどうかは、自分でもわかりません。ごめんなさい。でもわたしが持っている島森くんへの好意を。恋に育てていきたいと思っています」


 俺は少し残念な気持ちになった。


 恋人どうしになるのには、少し時間がかかりそうな気がしたからだ。


 しかし、乃百合さんの立場になってみれば、当然のことだろうと思う。


 俺たちはまだ付き合いだしたばかりなのだ。


 あせってはいけない。


 乃百合さんの言う通り、好意を恋に育てるまで待つことが大切だ。


「俺は夏浜さんのことが大好きです。夏浜さんに恋をしています。できれば今日すぐにでも恋人どうしになりたいと思っています。でも夏浜さんの気持ちも理解します。これから付き合っていくことによって、お互いのこと理解し合い、仲を深めていきたいと思います」


「ありがとうございます。わたしもこの好意を恋に発展したいと思っています」


「ただこれだけはお願いしてもよろしいでしょうか?」


「何でしょう?」


「これから毎日『夏浜さんのことが好きです』という言葉を送付していきたいと思います。それだけ、夏浜さんに対する想いは強いのです」


 乃百合さんは受けてくれるだろうか?


 胸のドキドキが大きくなってくる。


 乃百合さんは少しの間沈黙していたが、やがて、


「ありがとうございます。その言葉をいつもいただけるような素敵な女性になれるよう努力していきます」


 と応えてくれた。


「こちらこそありがとうございます」


 俺も乃百合さんに恋してもらえるような素敵な男性になれるように、より一層の努力をしていこうと思うのだった。

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