第66話 乃百合さんとのお付き合いが始まる

 俺は今日、乃百合さんに告白し、お付き合いをし始めることができた。


 長い道のりだった。


 前世からの想いをやっと伝えることができた。


 まだ恋人どうしになるところまではいけなかったが、仲を深めていくように努力していけば、いずれそこまで到達しることができると思っていた。


 今は夜。


 間もなく十一時になる。


 俺は紅茶を飲んでくつろぎながら、今日のことを思い出していた。


 うれしさが湧き出してくる。


 それにしても、乃百合さんがここまで素敵な人だったとは。


 今までは遠くからしか眺めることしかできなかったし、第一あいさつすらできなかった。


 今日は、間近で話すことができたし、なんといっても手を握ることができた。


 付き合っている人たちがしていることが初めてできたのだ。


 これだけでも俺は心が沸き立ってしまっている。


 これから恋人どうしになり、キス、そして、それ以降の世界に二人で入っていく。


 そこまで進むと、俺の心はとろけきってしまうと思う。


 想像もつかない世界だと思う。


 そういう世界にすぐにでも入っていきたい気はする。


 しかし、乃百合さんの方の心の準備が必要だ。


 少しずつ仲を深めて恋人どうしになった時に、そういう世界があるのだと思う。


 その為にも、毎日のルインのやり取りが大切だ。


 ただ……。


 いざルインのやり取りをしようとすると、どのようなことを書くべきなのか、悩む。


 明日は休日なので、デートに誘いたいという思いもあった。


 しかし、まだ付き合いだしたばかりなのに、


「明日デートに行きましょう」


 と書いて送付することは、いくらなんでも無理だ。


 それこそ乃百合さんの心の準備が必要だし、俺の方も、乃百合さんに満足してもらう為、計画を練っていかなくてはいけない。


 デートに誘うのはもう少し付き合ってからにすべきだろう。


 ではどういう内容をかくべきか?


 いろいろ悩んだが、まずは俺の想いを書くべきだという結論になった。


「夏浜さんのことが好きです」


 この言葉を送付したいと思った。


 しかし、今日恋人どうしになったばかりだというのに、そう書いていいのだろうかと思う。


 困惑されてしまうかもしれない。


 そうなると、俺の書いたことに対する返事がこなくなって、ルインのやり取りがうまくできなくなってしまう。


 あいさつとちょっとした雑談ぐらいにするべきだろうか?


 しかし、それでは、仲が深まっていかないだろう。


 俺は乃百合さんともっと仲を深めていき、やがては結婚したいと思っている。


 そうなっていく為には、俺はむしろ毎日、「夏浜さんのことが好き」と送付し続けなければいけない気がしてくる。


 とにかく送付してみよう。


 困惑するかもしれないが、それを怖がっていたのでは、いつまでたっても前に進めない。


 俺は、


「こんばんは」


 と書いて送付した。


 まずはあいさつから。


 すると、乃百合さんはすぐに、


「こんばんは」


 と返事をしてきた。


 少し時間がかかるかもしれないと思っていたので、このスピードの速さは予想外だった。


 これは、うまくいけるかも。


 そう思った俺は、


「俺は夏浜さんのことが好きです」


 と書いた。


 後はこの言葉を送付するだけだ。


 しかし、ボタンがなかなか押せない。


 心が沸き立ってきて、その決断ができない。


 困惑されて、返事がこなかったらどうしょう……。


 先程、その思いを振り払ったばかりなのに、また俺の心を覆いつつあった。


 後一歩というところなのに。


 俺はどうしてこうマイナスのことを思ってしまうのだろう……。


 すると、乃百合さんから、


「今日はありがとうございます」


「告白されて、うれしかったです」


「これからよろしくお願いします」


 という言葉が送付されてきた。


 俺はうれしくなるとともに、この言葉に応えなければと思った。


 今こそ俺は、乃百合さんに「好き」という言葉の送付をする!


 俺は、返事がきてほしい、と一生懸命願いながら、勇気を振り絞ってボタンを押した。

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