第62話 乃百合さんへの告白

 乃百合さんと俺は、改めて向き合った。


 さわやかな風が吹いてくる。


 間近で見る乃百合さんは、とてもかわいい。


 そして、匂いが素敵。


 それだけでも心がとろけてくる。


 しかし、今度こそ俺は告白をしなければならない。


「夏浜さん、俺、今日はあなたに伝えたいことがあります」


「伝えたいこと?」


 乃百合さんの方も緊張してきている。


「俺、始業式で夏浜さんに初めて会った時から、好意を持っていました」


「好意を?」


「そうです」


 本当は、今年の高校二年生の始業式ではなく、前世での高校二年英の始業式の時から好意を持っていた。


 そう言いたいところだが、前世のことを思い出している様子はない。


 言うことができないのは残念だが、そうは言っていられない。


「それから俺は、夏浜さんへの好意が高まっていきました。いつしか恋をするようになっていたのです」


「恋? わたしに?」


 恋という言葉を使った瞬間、俺も恥ずかしい気持ちになったが、乃百合さんの方も恥ずかしくなったのか、顔を赤らめていく。


「それで、今日。俺は夏浜さんをここに呼ぶことになりました。来ていただいて、本当にありがとうござます」


 俺は一回言葉を切る。


 もう恥ずかしさで、この場から走り出したい気持ち。


 でも俺は、次の言葉を言わなければならない。


 乃百合さんは恥ずかしさを抑えつつ、俺の次の言葉を待っている。


 このような状況なのに。心には、


「断られたらどうしよう」


 という気持ちが急激に湧いてくる。


 何をやっているのだ、俺は!


 そのマイナスの心を振り払い、俺は前に進む。


「夏浜さん、好きです。付き合ってください! 俺の恋人になってください!」


 俺は夏浜さんに頭を下げる。


 ようやく言うことができた。


 前世の時から、乃百合さんに対して、ほとんど何もアプローチのできなかった俺。


 やっと、その想いを伝えることができた。


 しかし、ホッとしたのもつかの間。


 乃百合さんは俺の想いを受け取ってくれるだろうか?


 どのような返事がくるのか、気になってくる。


 乃百合さんは、俺の言ったことに驚いたのか、戸惑っているようだ。


 返事をするのに困っている様子。


 ここで告白されるとは思っていなかったのだと思う。


 この様子だと、すぐには付き合うことをOKしてもらえそうもない。


 この状況は予想していないわけではなかったが、避けたいと思っていた。


 その点では残念な状況になりつつある。


 でもすぐに断るということでもなさそうだ。


「少し時間をください」


 と言われそうな気がしていた。


 そう言われたら、乃百合さんの心が俺の方に傾くのを待つしかない。


 俺が覚悟を決め始めた時、乃百合さんは、


「島森くん」


 と言った後、話をし始めた。


「わたし、なぜだかわからないのですけど、始業式の時、島森くんと出会った時、初めて会った気が全くしませんでした。どこかで会ったような気がしていたのです。幼い頃に会っていたわけでもない。どうしてそういう気持ちになるのかわかりませんでした。でも島森くんの雰囲気は、どこかで懐かしく思う気持ちがありました。それで、わたしは島森くんと仲良くなりたいと思ったのです。そして、まず友達になりたいと思いました」

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