第50話 告白を決意する伸七郎

 昨日は悩みで少し元気がなかった伸七郎だが、今日はいつも通り元気いっぱい。


「おはよう」


「昨日は、アドバイス、ありがとな」


「少しでもお前の役に立ったならうれしいぜ」


「それで、俺、昨日の夜、悩んだんだが、舞居子ちゃんに告白することを決めたんだ」


「決めたんだな?」


「あれからも悩んだんだが、決めた。このまま告白しないままだと、お前の言う通り後悔するだろうと思った」


「いい決断だと思う」


 これで、伸七郎と初林さんの仲は前に進んでいける。


 俺は自分のことのようにうれしかった。


「恥ずかしさはあるけど、そんなことは言っていられないよな」


「期待してるぜ」


「まあ、もしかしたら振られてしまうかもしれないけど、その時は慰めてくれ」


「お前なら大丈夫だよ。一回目でOKしてくれなくても、長年の付き合いだ。お前の良さはよく理解している。お前の思いを伝えていけば、きっと相思相愛になれる」


「ありがとよ」


 俺たちは、微笑み合いながら校門へ向かって歩いていった。




 その日。


 俺は乃百合さんと。二人だけのあいさつをすることを期待していた。


 それには二人だけの状況が訪れる必要があるが、今日もその機会はなかなか訪れない。


 教室を離れる時も、一人でということはない。


 それだけ人気が高いのだから仕方がない。


 心は沸き立つ状態が続いていたので、次第に疲れてきた。


 二人きりになりたい!


 そう強く願うものの、一向にそのチャンスは訪れなかった。


 昼休み、いつものように伸七郎と昼ご飯を食べたのだが、食欲はあまりわかなかったし、おしゃべりにもいつもほどの力は入っていなかった。


「お前、元気があまりないようだけど、大丈夫か?」


「いや、大丈夫。ちょっと食欲がないだけ」


「体の調子が良くないとか、そういうのがあったら、すぐに医者に行った方がいいと思うぞ。疲れていたら休養が一番。お前、一人ぐらしで家事が大変だから、体も壊しやすいだろうからな」


「心配してくれてありがとう。でも医者に行くほどじゃない。大丈夫」


 伸七郎のおかげで、少しずつ力が湧いてくる気がする。


「それならいいんだけど」


「お前の方こそ、告白、期待してるぜ」


「ありがとう。期待に応えられるように、精一杯努力をしていくぜ」


「俺も精一杯応援する」


「お前の応援が俺の力になっていく気がする」


「うれしいことを言ってくれるな」


「俺もお前の恋人作りを応援していきたいと思っているんだ」


「ありがたい言葉だ」


「お互いに恋人を作って、いい夏休みを送っていく。もちろん夏休みだけではないぜ。その先の季節もそうだし、俺としては、このまま結婚に進むことだって夢見てる。それは、夢を見過ぎかもしれない。告白のOKもまだもらっていないのにな。もらえなければ、すべてが成り立たなくなってしまうというのに」


「それは心配しなくても大丈夫だ。お前と初林さんはきっと相思相愛になれる」


「うれしいことを言ってくれる。お前と話をしている間に、力がどんどん湧いてきた。ありがとう。お互いに努力していこう」


「ありがとうと言わなければならないのは俺の方だよ。少しずつ食欲も戻ってきたし、力も湧いてくる気がする。これからもよろしく」


 俺たちは微笑み合った。

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