第48話 伸七郎も俺もいい方向に進みたい

 このまま伸七郎が告白できないで進んでしまったら、二人とも絶対に後で後悔すると思った。


 伸七郎は初林さんのことが心の奥底では好きだ。


 初林さんの方はどういう気持ちだろう?


 伸七郎にも言ったが、伸七郎が告白したとしても、初林さんは、最初は戸惑ってすぐには受け入れないかもしれない。


 疎遠になっていた時間が長かったので、それは充分ありえる話だろう。


 しかし、初林さんも今まで他の人の告白を断り続けていたことからすると、舞居子さんのことが心の奥底では好きだと思う。


 伸七郎の告白を心の奥底では待っているのだと思う。


 告白の一回めでは、心の準備が整わなくて、付き合うことをもしOKしなかったとしても、心さえ整ってくれば、告白を受け入れてくれるだろう。


 二人には、相思相愛になり、幸せになってもらいたい。


 これからも二人を応援したいと俺は強く思っていた。




 伸七郎には初林さんに告白をすすめた俺。


 次は自分の今後について検討しなければならないと思った。


 乃百合さん。


 前世と同じ状況になるのであれば、もう間もなく、乃百合さんの方から俺の方へあいさつをしてくるはずだ。


 そういう状況になってほしいと思う。


 しかし、一方で、前世では、せっかくあいさつをしてもらったのに、そのチャンスを生かすことはできなかった。


 そこから親しくなって、おしゃべりを楽しむということさえもできなかったのだ。


 今度は、そういう失敗はしたくない。


 乃百合さんがあいさつをしてきたら、


「乃百合さん、申し訳ないのですが、ちょっと話があります」


 と言って、二人きりになり、


「好きです。付き合ってください」


 と言って告白をする。


 もちろん、付き合ってもらえるかどうかはわからない。


 前世でも好意は持ってもらっていたようだが、あいさつすらほとんどできない仲だったので、俺に恋をしているということはまずなかったと思う。


 付き合うのを断られる可能性はないとはいえない。


 いきなり告白されることで、俺のことを嫌いになるかもしれない。


 しかし、だからといって、俺からアプローチをしなければ、前世のような人生を繰り返すだけだろう。


 俺は乃百合さんを理想の女性だと思っているし、好きだ。


 恋人にしたい。


 その想いを乃百合さんに伝えたい。


 もちろんその想いは受け入れてほしい。


 相思応愛になりたい。


 断られるかもしれない。


 断られなくても、友達から始めましょう、と言われるかもしれない。


 でもまずは、乃百合さんにその想いを伝えなければならない。


 前世ではそれさえもできなかったのだ。


 断られた時のことは想像したくはないが、その場合は、今世では縁がないということになるのだろう。


 その時は、乃百合さんの幸せを願いながら、別々の人生を歩んでいくしかない。


 しかし、前世で持っていた好意が今世で全くなくなるとは思えない。


 いきなり断られることは、まずないだろうと思っていた。


 友達から始めましょう、と言われることは、確率としては大きいかもしれないと思った。


 この場合は、すぐに恋人どうしになれるわけではない。


 しかし、断られたわけでもない。


 付き合うこと自体はできることになる。


 少しずつ親しくなっていけば、やがて、恋に発展していくこともできる。


 もちろん乃百合さんに、恋人として付き合うことをOKしてもらえれば一番いいと思う。


 その場合は、結婚へ向かって二人で進んでいく。


 俺は伸七郎にアドバイスをした。


 それを受けて、伸七郎は、長年疎遠になっていた舞居子さんに告白しようとしている。


 俺も乃百合さんに告白する時がきていると思っている。


 ここ数日が、伸七郎にとっても、俺にとっても、大切な時になるだろう。


 二人一緒に、いい方向に行くことを願っていきたい。


 俺はそう思うのだった。

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