第35話 楽しいことの連続 (すのなサイド)

 わたしとイケメン先輩は恋人どうしとして進んでいく。


 それからしばらくは、楽しいことの連続だった。


 クリスマスイブの日、イケメン先輩はわたしを高級レストランに招待してくれた。


 港とその周辺を一望することができ、夜景がとてもきれい。


 そこで豪華な料理を提供された。


 今まで食べたことがないほどのおいしい料理だった。


 招待なので、費用はイケメン先輩持ち。


 さすが、お金持ちは違う。


 イケメン先輩の恋人になっていなければ、来ることはできなかった場所だ。


 島森くんと別れてよかったと思う。


 イケメン先輩には感謝したい。


 でも一方で、わたしは、学校一の美少女なのだから、これくらいはしてもらっても当然だという気持ちもあった。


 イケメン先輩の方も、わたしのような美少女がいなければ、こういうところには来づらかったのではないかと思う。


 周囲は美男美女でいっぱいなのだから。


 わたしほどの美しさのない女性と、もしここに来た場合、恥ずかしく思ってしまって、食事どころではなくなってしまうはずだ。


 わたしの方も、イケメン先輩から感謝されてもいいのではないかと思う。


 食事が終わった後、イケメン先輩は、


「どう? いい味だったでしょう?」


 と微笑みながら聞いてくる。


「もちろんです。ありがとうございます。先輩の恋人になれてよかったです」


 わたしがそう応えると、


「気に入ってもらってよかった」


 とイケメン先輩は応える。


 そして、わたしたちは、港の近くにある公園に行った。


 周囲はカップルだらけ。


 わたしもイケメン先輩とキスがしたくなってくる。


 イケメン先輩も同じ気持ちだろう。


「すのな、好きだ」


「先輩、好きです」


 重なり合う二人の唇と唇。


 思い出に残る甘いキス。


 もうわたしはイケメン先輩に夢中だった。




 正月も一緒に出かけたし、その後も週一度は一緒にでかけていた。


 仲はどんどん深まっていったと思ったのだけど……。


 わたしは次第に、もどかしく思うようになってきた。


 それは……。


 イケメン先輩は、一月中旬のデート以降、わたしに対してキス以上のことを求めなくなった。


 今まで付き合った女性たちとも、ある一定の時期が過ぎると、二人だけの世界に入らなくなっていたという。


 わたしもイケメン先輩に飽きられてきたのでは……。


 そう思わないこともなかったが、イケメン先輩の方も疲れるのだろうと思い直した。


 こちらから求めるのははしたないことだ。


 わたしのことを大切に思うので、会う度にではなく、一回おきにするとか、そういう配慮をしているのかもしれない。


 求められる時だけ応じればいいと思い、悩まないようにすることにした。


 とはいうものの、わたしとしてはイケメン先輩と、二人だけの世界にたくさん入っていきたかった。


 恋人どうしであれば、そこまで到達していきたいと思っていた。


 一月中旬のデート以降も、わたしは、いつ求められてもいいように準備をしていた。


 服もイケメン先輩の喜びそうなものを選んで着ていった、


 デートをした後は、そのままホテルに行って、二人だけの世界に入っていくのが普通だと思っていたのだけど、それ以上には進むことはなく帰ることになってしまった。


 こういうことがだんだん続くようになり、その度にわたしは落胆した。


 どうして二人だけの世界に入ってくれないのだろう。


 期待していたのに……。


 今思うと、クリスマスイブのデートは特別なもので、素敵だった。


 イケメン先輩も、


「きみとの今日は最高の思い出を作ることができた。ありがとう」


 と言ってくれたのに……。


 どうして進んでくれなくなってしまったのだろう……。


 その後もデートをして、キスまでは進む。


 しかし、依然としてそれ以上には進まない。


 わたしは、


「二人だけの世界に入っていきたいです!」


 という直接的な表現するのは、嫌われてしまうかもしれないと思ったし、それ以前に恥ずかしくて無理だった。


 その為、


「先輩、もう少し一緒にいたいです」


「先輩、わたしはもっと仲良くしたいです」


 と言う遠回しの表現で、イケメン先輩を誘惑しようとしていた。

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