第34話 大きな打撃を与えるわたしたち (すのなサイド)

 島森くんをあきらめさせたいわたしたちと、あきらめたくない島森くんとの戦いは続く。


 わたしは、いい加減うんざりしてくる。


 もう島森くんのことは、何とも思っていないのに、なぜあきらめてくれないんだろう……。


 イケメン先輩も同じ思いだったようで、


「すのな、状況を理解しようとしない人に、もう一度見せつけてやろう」


 とわたしに言ってきた。


 イケメン先輩は、ここで大きな打撃をもう一度与え、今度こそあきらめさせようと思っているようだ。


 その思いに応えられなければならない。


 まだちょっと恥ずかしいけれど。


「はい、先輩、島森くんには、わたしが先輩の恋人であることを、強く認識してもらおうと思います」


 わたしたちは、再び抱きしめ合った。


「俺はすのなが好きだ。すのなは俺のものだ。あきらめることだな!」


「わたしは先輩のものです、先輩、好きです!」


 唇と唇を重ね合っていく。


 今度こそ、島森くんはわたしのことをあきらめると思った。


 大いに期待をしていた。


 しかし……。


 島森くんはそれでもあきらめない。


「先輩が俺のことをどんなにけなしても、すのなさんがどう思っていても、俺は、俺は、すのなさんのことが好きなんです。すのなさんは俺の恋人なんです!」


 島森くんは、最後の力を振り絞って反撃をしてきているようだ。


 わたしの心には、ほんの少しだけ島森くんに対する同情心が生まれた。


 でも、それは一瞬のこと。


 イケメン先輩の、


「俺たちのラブラブぶりは充分見せつけてやった。それでもあきらめないとは、どうしょうもないやつだ。こんなわからずやのやつに、もう構うことはない。そろそろ行くことにしよう」


 という言葉が、あっという間にその同情心を壊していった。


 わたしはイケメン先輩のもの。


 島森くんに対しては、同情心など持つ必要はない。


 イケメン先輩がわたしのことを愛してくれればそれでいい。


 これまでの攻撃で十分打撃を与えたので、反撃する力もこれでなくなったと思う。


 後は、もうここを去って、イケメン先輩との楽しい時を過ごしたい。


 そう思ったわたしは、


「そうですね。これだけわたしたちが親密なのに。それを理解しようとしないのですから。もうここを離れた方がいいと思います」


 と言った。


「よし、決まった。それじゃ、これからデートしよう。いいね」


「もちろんです。今日も一緒に楽しみたいと思います。


「そうだな。じゃあ、行こう」


 イケメン先輩は、わたしの手を握り、この場を去ろうとしていた。


 心が沸き立ってくる。


「ちょっと、二人とも待ってください」


 島森くんは、わたしたちを呼び止めようとする。


 しかし、もう気力がなくなってきているようで、声も弱々しい。


「まだ言いたいことがあるのかな? もうきみはすのなとは赤の他人だというのに」


 イケメン先輩は冷たい声で言い、わたしも、


「もう話は終わったのよ。これからわたしは先輩とデートをするんだから、じゃましないでくれる!」


 と厳しい表情で言う。


 島森くんは、その場にしがみこんだ。


 そして、涙が目からあふれてきている。


「もうこれで俺たちに抵抗する力もなくなったようだ。これから電車に乗って別のまちに行ってデートしよう。そして、楽しい時間を過ごすことにしよう」


「はい。行きましょう。先輩」


 わたしたちは手をつないだまま、歩き始めた。


 これで、もうわたしにアプローチをすることはないだろう。


 とてもいい気分になってきている。


 イケメン先輩と幸せになっていこう!


 わたしは強く思うのだった。

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