第30話 デートをしたわたし (すのなサイド)

 デートの日。


 つまらない時間を過ごすことになることも覚悟していたわたし。


 待ち合わせの駅で、わたしはいきなり落胆させられた。


 島森くんの服装は、ありあわせのものを着てきたレベル。


 わたしはそれなりにおしゃれをしてきたのに、この差は酷いと思った。


 しかし、それ以外については、予想とは違っていた。


 島森くんはその日の為に、いろいろ準備をしていたようだ。


 話も面白いとは思わなかったが、いつものように無言になってしまうことは少なく。気配りをしてくれていた。


 意外と楽しく過ごせたと思う。


 テーマパークの帰り、喫茶店に入った後、サプライズがあった。


 なんと、わたしにプレゼントをしてくれたのだ。


 これは予想外のことだった。


 そこまでの気づかいはないものと思っていたからだ。


 まあ、わたしのような美少女が付き合っているのだから。これくらい尽くしてくれるのは当然のことだろうとは思う。


 それでも、うれしかったことはうれしかった。


 わたしの島森くんへの好感度は上がっていく。


 その日の夜も島森くんは、


「池土さんが好きです」


 という言葉を送信してきた。


 今まで、そういう言葉には一切返事をしてこなかったわたし。


 しかし、わたしは、


「島森くん、好き」


 という言葉を送付した。


 まだ恋まで到達したというわけではない。


「好き」とはいっても好意が少し発展した程度


 それでもそう書いて送付したのは、島森くんの気づかいに対する礼儀だ。


 島森くんは、


「ありがとう。とてもうれしいです。これで、恋人どうしになれましたね」


 と返信してきた。


 複雑な気持ちだった。


 島森くんは、これでわたしと恋人どうしになったと思っている。


 わたしとしては、まだまだそういうつもりはない。


 依然として、彼氏ではあっても恋人ではない。


 わたしはそれに対して返信はしなかった。


「まだそのつもりはない」


 という返信はしたかったが、さすがにデート直後、


 返信しないだけにしておいた。


 それに対して何か反応してくるかもしれないと思った。


 恋人どうしになったことを強調してくる可能性もあった。


 しかし、特に反応はないまま。


 そして、


「おやすみなさい」


「おやすみ」


 というあいさつのやり取りがあって、今日のルインのやり取りは終了した。


 わたしはその後、ベッドの上に座り、今のやり取りを思い出していた。


 それにしても、島森くんはなぜ反応しなかったのだろう?


 もしかすると。わたしが返信しなかったのは、


「恋人どうしになった」


 ことに対して、恥ずかしがっていたと思ったのかもしれない。


 そんなことはなかったのだけど。


 とはいいつつも、島森くんに対して、好意はさらに大きくなってきていた。


 そして、恋をする方向に向かってもいいという気持ちは、少しずつ湧いてきていた。




 クリスマスイブの一週間ほど前。


 わたしはイケメンで有名な先輩に、校舎の外れに呼び出された。


「二人きりで話がしたい」


 とのことだ。


 何の用だろうと思った。


 この先輩は、学校内でとても人気がある。


 今まで、何人もの女性と付き合ってきたそうだ。


 現在は、誰とも付き合っていないようだけど、付き合いたいと思う女性はたくさんいるに違いない。


 わたしも付き合いたいと思ったことはないわけではない。


 しかし、先輩というところが、敷居がまず高い。


 どうしても同学年の方がいいように思える。


 そして、まず知り合う機会がない。


 したがって、話をしたこともない。


 そういう状況なのであきらめていたのだけど……。

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