第31話 先輩に告白されるわたし (すのなサイド)

 今まで話もしたことがない先輩からの呼び出しなので、わたしへの告白以外のことはまずありえないと思う。


 期待が膨らみそうになるわたし。


 でもすぐに思い直し始める。


 わたしは島森くんと付き合っているのに、そういうことを想ってはいけない。


 今の時点で、わたしはまだもっといい男性と付き合いたいという気持ちは全くなくなっていたわけではない。


 しかし、その気持ちよりも。わたしは島森くんのことを恋人だと思う気持ちの方が強くなってきていた。


 お互いを名前で呼び合うようにもなっていた。


 そして、わたしたちは恋人どうしだという認識を、お互いに持つようになってきていた。


 それなのに、先輩に心を動かすというのは、決していいことではない気がする。


 そういうことを思っていた。


 しかし……。


 先輩の誘いは、わたしにとって魅力のあるものだ。


 もともとわたしは島森くん以上の男性が現れたら、その男性と付き合おうと思っていた。


 先輩はイケメンで、わたしの理想とする人だ。


 先輩が告白してくれるなら、島森くんを捨てて、喜んで先輩の恋人になろう!


 そういう気持ちが急激に湧き上がってくる。


 しばらくの間、わたしは悩んでいたが、結局、先輩のところへ行くことを決断した。


 わたしの待っていた王子様は、島森くんではなく、先輩だと思ったからだ。


 そうなると、もうわたしの心は先輩のことでいっぱいになる。


 わたしは期待に胸を膨らませて、。先輩のところに向かった。




 先輩は、ベンチの近くで待っていた。


 わたしは先輩のそばに行く。


 それまでは、遠くから眺めたことしかなかった。


 それでも先輩のかっこよさは際立っていた。


 しかし、間近で見る先輩は、わたしの想像をはるかに越えるものだった。


 イケメン中のイケメンという表現がぴったりだ。


 王子様というのはこういう人を言うのだろうと思った。


 先輩に告白されたら、それだけでもわたしは幸せ。


 そう思い、


「先輩、池土です。こんにちは」


 と言ってまずあいさつをする。


 すると、先輩は、


「こんにちは。池土さん」


 と微笑みを浮かべながら応える。


 わたしはこの笑顔により、一気に心が沸き立ち始めた。


「おお、間近で見るあなたは、遠くから眺めているよりもはるかに美しい」


 先輩は、うっとりとした表情でわたしを見る。


「そ、そんな、恥ずかしいです」


 うつむいてしまうわたし。


 もちろん本心ではない。


 わたしのような美しい女性はそう褒めてもらうのは当たり前なのだ。


 でも、いきなりそういう素振りを見せてしまえば、嫌われてしまうだろう。


 先輩にはつつしみ深いところを見せていきたい。


「恥ずかしがらなくてもいいです。あなたは素敵な女性です。そんなあなたにわたしは恋をしてしまった。今日ここに来てもらったのは、わたしと付き合ってほしいと思ったからです」


「付き合ってほしい?」


 わたしはさらに心が沸き立ってきた。


 先輩がわたしと付き合いたいと言っている……。


 そして、先輩はさらに続ける。


「ただ付き合いたいと思っているだけではありません。あなたと恋人どうしになりたいと思っているのです」


 恋人どうし。


 先輩が、わたしと恋人どうしになりたいと言っている。


 わたしは夢でも見ているような気分だった。


 手が届かないと思っていたイケメン先輩。


 それが手の届くところにきた。


 そう思っていると、先輩は予想外のことを言い出した。


「わたしは、あなたに今付き合っている人がいると聞いています。付き合っている人がいるのに、あなたに告白をしても断られるだけだと思っていました。でもわたしは、あなたの美しさに心を奪われてしまったのです。今までわたしはいろいろな女性と付き合ってきましたが、これほど魅力のある女性はいません。彼氏がいようといまいと、告白したいと思うようになってきました。それで今日、申し訳ありませんが、ここにあなたを呼び出したのです。わたしはあなたと恋人として付き合いたいと思っています。よろしくお願いします」


 先輩は熱を込めて言う。


 そして、心の底からのやさしさが伝わってくるような気がする。


 そうだ。こういう方をわたしは待っていたんだ!


 わたしはこの瞬間、島森くんと別れて、先輩と付き合うことを決めた。

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