第86話 純白

 青空が広がる麗らかな日に、俺は真っ白なタキシードに身を包んで教会にいた。


「新郎様」

「はい」

「新婦様のご準備ができました」


 俺は立ち上がって控え室をでた。


 会場へ向かっていくと、バージンロードの手前で葉月さんが待っていてくれた。 


 本来は、女性が後から入っていくものだが、扉が開かれると三人のウエディングドレスを纏った美しい女性たちが待っている。


「さぁ行きましょう」


 俺と腕を組んでバージンロードを葉月さんと歩いていく。


 あまりにも急展開に思えるが、三人と正式に籍を入れることは、この国では重婚と言われ認められていない。


 だけど、事実婚は一緒に暮らしていれば、妻として認められる。


 俺たちは誰とも結婚をしないまま、紐田陽一として彼女たちの夫になることを決めた。


「お願いします」


 純白のタキシードを着た俺が、赤絨毯の向こうで待っていてくれる三人の真ん中にやってくる。


 家族だけの挙式として、ご両親四人に見守られて式をあげる。

 

「汝、紐田陽一は、瀬羽菫、瀬羽優実、瀬羽ジュリアの三人と結婚し、病める時も健やかなる時も、互いに支え合って生涯を共にすることを誓いますか?」

「はい!」

「汝、瀬羽菫、瀬羽優実、瀬羽ジュリア。三人は紐田陽一との結婚を認め生涯を共にすることを認めますか?」

「「「はい」」」


 三人から元気な声が返ってくる。


「それでは、近いのキスを」


 俺は一人一人のベールをとって、キスをしていく。


 それぞれ別々の衣装に身を包んだ三人は、とても綺麗だ。


 体のラインがしっかりとわかるタイトな衣装に身を包んだジュリア。

 ミニスカの可愛いウェディングドレスを着た優実。

 正当なウェディングドレスに身を包んだ菫。


 三人の美しさを強調した衣装が似合っている。


「ヨウイチさん」

「ヨウニイ」

「ヨウイチ」


 三人がキスをする際に、名前を呼んでくれる。


「スミレ」

「ユミ」

「ジュリア」


 俺は三人の名を呼んで顔が見えるようになった彼女たちに視線を合わせる。


「こんな俺だけど、どうぞよろしくお願いします」

「ふふ、これからはしっかりヨウイチさんの夢を応援させていただきます」

「そうそう、家のことも、生活も、私たちが全部するからね」

「ヨウイチは、自分のしたいことだけをすればいいんだよ」


 三人は心強いことばをかけてくれる。


 金銭面的に、スミレだけなく、ユミもダイスケお父さんの影響で株や投資などをして資金を増やしていた。


 専門学校を卒業して技術を学べば、すぐにでも独立できる環境を整えられる。


 スミレは弁護士。

 ユミはネイリスト。

 ジュリアは警備会社経営。


 ご両親への挨拶を終えた後に家に帰った俺に三人からプロポーズを受けた。

 三人は、ジュリアの告白を聞いた日から今日のことを話し合っていた。


 俺に対して三人がどういう接し方をしたいのか? 


 そして、彼女たちの望む形で俺が嫌がらないか? 


 その質問を彼女たちは俺にしてくれた。


「ヨウイチさん。お話があります」

「はい」


 三人と向き合って座り三人から真剣な瞳を向けられる。


「私たちと結婚しませんか?」

「えっ? 三人と結婚?」

「はい。私たちの誰かの物になるのではなく、三人を平等に愛してほしいのです」

「それは俺としては嬉しいけど。三人はそれでいいの?」

「これは三人で決めたことです」

 

 スミレの言葉でユミとジュリアを見れば、頷いていた。


「俺は嬉しいよ。三人から愛されて、三人にどれだけ返せるのかわからないけど、精一杯頑張りたい」


 三人の女性と結婚できるなど夢のような話だ。


「はい。そこで三人で話し合った結果、言えることはヨウイチさんは夢を追いかけてほしいってことです」

「夢を追いかける?」

「はい。ヨウイチさんがイラストレーター。もしくは、漫画家さんになるために家で作業することを応援したいんです」

「それは、だけど、安定した収入が得られないから申し訳ないというか」


 世話ばかりされて、夢を追いかけてお金稼がないなんて、まるでダメダメじゃないか。


「いえ、収入に関しては私たちのお金で十分に生活ができます。何なら多少の贅沢をしても問題ありません。ですが、ヨウイチさんが病気になったり、仕事以外に時間を取られることの方が私たちは悲しいのです」


 スミレの言葉は本当に俺を思ってくれているのが伝わってくる。

 そして、三人が変わる変わる。

 家のことや、俺の世話もしてくれるという。


 俺だって多少の蓄えはある。

 それに生活だって自分でできなくはない。


 だけど、彼女たちがそれをしたいのであれば、俺はそれを受け入れたほうが幸せになれると思った。


「ありがとう。三人に愛されながら、自分の好きなことができるんだ。受け入れさせてほしい」

「ありがとうございます」


 それからの日々は本当にトントン拍子に過ぎ去っていった。


 挙式の日取りや、両親への報告など俺が知らない間に決まっていき、ウエディングドレス試着決めの際に連れ出されたり、三人それぞれとデートをしたりと日々はすぐに過ぎ去った。


 そして、今日……。


 俺は三人の夫になった。


 ほとんどヒモのような気がするけど、必ず大成功して彼女たちが自慢できる夫になろうと自分の中で目標もできた。


「ヨウイチさん」

「ヨウニイ」

「ヨウイチ」


 新婚初夜は高級なホテルの一室で三人が白いネグリジェを着て待っていた。


 俺は本当に三人を妻として娶ったんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あとがき


 どうも作者のイコです!!!

 残り一話!の前に宣伝とお願いのため、後書きを書いております!!!


 実は、11月10日にライトノベル作家デビューを果たしました!!!


 しかし、デビューあくまで怠惰な悪役貴族が売れ行き芳しくありません!


 なぜか、男性に売れていない!


 そこで、《美人ヒモ》の読者の皆様の中で読んでやってもいいぜって方がおりましたら、どうかどうか一冊手に取って読んでみてださい!

 内容はウェブ版よりも読みやすくなっておりますので!!!面白さは保証します!


 作家イコを応援、助けると思ってどうかお願いします!

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