第84話 聖夜の
12月24日は特別な日だと誰かが言っていた。
だけど、俺はそう思ったことはない。
これまでの人生で、幸せに彼女と過ごした記憶などない。あるのかもしれないが、遠い記憶すぎて覚えていない。
「……あぁ、こうやってみんなで食べるケーキは幸せなんだな」
「ヨウイチさん。ふふ、そうですね。美味しいです」
「ヨウニイ、おじいちゃんみたいだよ」
「ヨウイチ、私も彼と過ごすクリスマスは初めてだから。わかるわ」
ラフ絵を描いてから一週間が過ぎて、全てを完成させた。色を入れてジュリアも急遽追加したことで、主人公は正直どうでもよくなった。
元々、ジュリアをモデルにしていたのに似たような主人公は変だから、主人公だった彼を女性に変更して、三人が過ごすクリスマスの風景に描き変えた。
俺というオジサンサンタがやってくる漫画が完成する。
「ふふ、確かに私たちのサンタさんは、ヨウイチさんですね」
「ヨウニイって、絵が上手いだけじゃないんだね。可愛い。この話。絵本みたいだよ」
「ああ、三人分に印刷してくれたのも嬉しいな」
今日の俺が幸せだと思う理由はケーキだけじゃない。
「そっれっよっりっも、ヨウニイ! 私たの衣装はどうかな?」
そう、本日のメインディッシュは俺のプレゼントなんてものじゃない。
三人の衣装が今日の俺へのプレゼントになっている。
「まずは、私からだな」
そう言って、ファッションショーが始まる。
ソファーに座っている俺の前にジュリアが姿を見せる。
これはどう表現すればいいのだろうか? 色々と経験したことでジュリアは、大胆なことにも挑戦するようになった。
その答えがこれなのだろう。
「セクシーさを強調するために、私自身をリボンで結んでみたんだ。どうだろうか?」
だっそうだ。
全身、大事な部分だけがリボンで隠されて、お腹のところで大きなリボンが完成している。
これはプレゼントとしては完璧だが、どうなっているのか見当もつかない。
「もちろん、すごく綺麗だよ」
「ふふ、ありがとう。ヨウイチに喜んでもらいたくてしたんだ。完成して見せるまでコートを着ていると、まるで変態みたいだったから恥ずかしくなってしまっていてな」
確かにコートを脱いで見せられた時は、色々と驚かされた。
「まぁ、好きな人の姿でとても嬉しかったよ」
「ふふ、ヨウイチがそう言ってくれるなら、嬉しいよ」
そう言って俺の頬へキスをしてジュリアは道を開いた。
「次は私! ヨウニイ、どう? どう?」
フワフワなミニスカワンピース姿に赤いピンヒールを履いて、少し派手目なメイクをしたユミは、可愛いとセクシーを両立させている。
「うん。凄く可愛いのに、女性として魅力的だと思う」
「ふふん! そうでしょそうでしょ。今日のために色々と体を引き締める訓練をジュリア姉さんに指導してもらったんだ。それに成長期なのかな? 最近、胸のサイズもアップしたんだよ。今はDまであるからワンピースを着てもズレないよ」
セクシーな足元と、肩にかかるストールに、サンタ帽が可愛い。
ユミの愛らしさと大人へと変わる姿がサンタ帽に集約されているように思う
「最後は私ですね」
ユミが俺の額にキスをして、ジュリアとは反対に移動して、道を開けると恥ずかしそうにスミレが現れる。
先ほどまで見ていたが、こうやってマジマジと見て為のステージを用意されると緊張する。
「どうですか?」
ジュリアがプレゼントでリボン。
ユミが可愛くてセクシーなサンタ。
そこにスミレはトナカイの衣装だ。
ただ、それが規格外すぎる。
「えっと、物凄く可愛いんだけどエロい」
頭の上につけられたカチューシャにトナカイのツノが付いて。
もう下着が見えてしまいそうなほど短いミニスカートは、トナカイの毛並みを表した薄い茶色。
そのミニスカと合わせるように胸を隠すだけの衣装は、可愛いおへそと豊満な二つの間にできた谷間を見せつけてくる。
ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
ジュリアの破壊力に対して、ユミの可愛さ。
そして、清楚なスミレが見せる恥じらいが、たまらなく三人のコスプレ衣装を際立たせた素晴らしいバランスだった。
「えっと、三人とも凄く綺麗で可愛いよ」
「ヨウニイ。誰が一番いいのかな?」
「うっ!」
「そうだな。私も決めて欲しい」
ポーズをとると、ほとんど裸なジュリアは、美しい容姿なので異常に似合っている。
「わっ、私は別に」
モジモジとしながらもチラチラと俺の顔を伺うスミレ。
ニヤニヤするユミのイタズラが俺の心をかき乱す。
「あ〜絶対に決められない! それに決めても誰も嬉しくないだろ。後に遺恨を残すことはしない!」
俺の宣言にユミはやっぱりニヤニヤとしていて、ジュリアは不服そうに頬を膨らませ、スミレはホッと胸を撫で下ろす。
ただ、心の中ではどうしても隠されているのにチラチラと見えるスミレの衣装が、態度と相まって一番胸を打たれたことは否めない。
破壊力はジュリア。
可愛いのはユミ。
ただ、気になるのはスミレという。
それぞれの部門で彼女たちは一位であることは間違いない。
それに彼女たちならどんな衣装を着ても似合ってしまうんだから、俺には決めることなどできない。
「さぁここからは、夜のクリスマス開始だよ」
「そっちでは負けないぞ」
「ふふ、三人を相手にしてもらうので、ヨウイチさんは大変ですね」
俺は夜に備えて、近くにあったシャンパンを一気に飲み干した。
ケーキの味はわからなくなるけど、三人のことはしっかりと満足させてみせる。
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