第80話 素直になって

 前書き


 どうも作者のイコです。


 未縁(ひつじゆかり)先生に、またしてもファンアートを描いていただきました。@hitsuji_yukari


 ヒロイン、スミレさん。

 湯煙バージョンです。

 超絶可愛いです!

 ありがとうございます!


 近況に載せていますが、胸元が隠されていないため、サポーター様限定にさせてもらっています。胸元が湯気で隠れた物は、私のXにてポストさせてもらいました。


 ご興味のある方は、サポーターとして、もしくはXにて確認してみてください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《side瀬羽ジュリア》


 私はどこかで男の人を馬鹿にしていた。

 自分よりも弱い存在で、自分の方がなんでもできて、お金も、地位も、社会的な立場も上であると勝手に認識していた。


 だから、紐田さんが私の姿をモデルにするのに材料が足りないと言われた時、仕事を馬鹿にされたような気がして無理難題を押し付けてやろうと思っていた。


 実際に、朝早くから連れ出して稽古をしているのを見せた。どれだけ大変なのか見せるためだ。


 書類をしている間も座らせることを許さないで、お茶を入れてもらったり、私の秘書のように扱った。


 だけど、紐田さんは文句一つ言わないで、じっと私を見ていた。


 私は見られていることが、自分が悪いことをしているような気分になって、次第に後めたさが勝ち始めた頃に仕事も佳境に入った。


 残されているのは管理しているビルの見回りだけだ。


 これが終われば、あの観察されるような視線から解放される。

 そう思って取り組んだのに、こんな日に限って侵入者がいるようだ。


 いや、こんな年末近くになっているからこそ、変な輩が増えるのだろう。


 これでは紐田さんに危険が及んで怪我をさせてしまったら、スミレやユミに申し訳が立たない。


「紐田さんはここにいてください!」

「いえ、一緒に行きます!」


 今ここで口論をしている時間はない。

 私は仕方なく、紐田さんを伴って現場に向かった。

 そこには人の気配が有り、最悪だと思う。


 実践経験が少ないとかではない。

 制圧できる自信はある。

 だけど、もしかしたら紐田さんに危険が及ぶかもしれない。


 そんな自分の戸惑いが仇となった。


「ウラー!」


 太ったおじさんが強引に力で私を押し退けて、私は机の角で背中を強く打って息が上手くできない。

 すぐに立つことができなくて、朦朧とする意識の中で太ったおじさんがさらに危害を加えようと近づいてくる。


 こちらを蔑むような視線で、罵っている声が聞こえる。


 くっ! こんな、はずじゃないのに。

 私は頭を守るためにガードをしようとするが、背中の痛みで腕すら上げることもでない。


 こんな奴に好きにやられるなんて……。


 私は身構えた衝撃がやってこないことに目をあけた。


「お前がでしゃばってんじゃねぇ!」

「はっ?!」


 紐田さんが太ったおじさんの背後から椅子で殴りつけた。

 頭を避けたのは、間違いを起こさないためだろうか? 冷静な判断に私は素直に驚いてしまう。


「うわっ!」


 おっさんが椅子で殴られた痛みで倒れる。


「ジュリアさん! 大丈夫ですか?」 

「うっ」


 お礼を言いたいのに背中が痛くて声も出せない。

 呼吸がうまくできなくて、意識を保つのも辛い。


 その後は紐田さんが警察を呼んでくれて、犯人を逃さないために奮闘して、そして……お姫様抱っこで私を医務室へ運んでくれた。


 意識はあった。


 私は昔から身長が高いから、お姫様抱っこはすることはあってもされることはなかった。だから、男性に抱き上げられるって思っても見なくて……。


 絵を描いて真剣な顔をしている姿はお世話をついしたくなるほど可愛くて。

 そのくせ、私がピンチの時にはしっかり男らしく守ってくれる。

 それに細くて頼りないと思っていたのに抱き上げて、お姫様抱っこまでしてもらってしまった。


「これはそう、お礼をしないといけないわね」


 病院まで付き添ってくれて、ハズキ姉さんから母さんに連絡が行くまでの流れまで全てがしてくれた。


 確か、クリスマスパーティーをするって言ってた。

 その前にお礼に伺おう。


 今回の私は色々と嫌な奴だった。

 それを謝ってお礼を伝えたい。


 怪我の入院は一週間ほどで、痛みは残るが生活に支障がない程度にまで回復することができた。溜まっている書類仕事はしなくてはいけないけど、現場はしばらく休ませてもらうことになった。


 そのため、スミレとユミの専属ボディーガードとして、ヨウイチと会うことができる。胸の中が熱い。


「ジュリアさん。お怪我が治ってよかったです」


 本当は集中している時間なのに、私が来ると聞いて集中する作業から離れて顔を見せてくれた。


 それだけで嬉しくなってしまう自分がいる。


「あの時は助けていただきありがとうございます」

「いえいえ、お役に立ててよかったです」

「それに、あの日は色々と態度が悪かったと思います。すみません」

「えっ? すみません。全然覚えてません」

「それと、ヨウイチって呼んでもいいですか?」

「あっはい。もちろんです」

「それと、私のことも彼女にしてくれますか?」

「はっ?」


 私は胸がドキドキしながら、その流れで告白してしまう。

 すると、意味がわからなかったようでヨウイチは呆けて固まってしまう。


 代わりに、スミレとユミが笑い出した。


「やっぱりだね」

「そうね」

「何? 二人ともわかってたの?」

「もちろんだよ。ヨウニイと接して、わからせられるって思ってたから」

「そうね。ヨウイチさんに救われて何も思わないとは思っていなかったから」


 二人して笑われて私は顔が赤くなる。 

 だけど、二人とも私を否定することなく受け入れてくれたのは嬉しい。


 後はヨウイチだけ、なのに彼は固まってしまって動かない。

 

 ふふ、だけど気持ちは伝えたから後はアタックするだけよ。


 待っててねヨウイチ。

 あなたの心を私にも向けさせてみせるわ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。

いよいよ来月からカクヨムコンテストに入ります。


そのため新作を来週から投稿していこうと思っております。

それに伴い、こちらの《ヒモおっさん》を今週で完結させようと思いました。


残り7話ぐらいだと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


最後までお付き合いいただければ幸いです(๑>◡<๑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る