第75話 新たな挑戦
カスイさんから嬉しい報告をもらった。
俺が書いたイラストが、好評で狐狸相先生の作品が評価されたと言ってもらえたのだ。
報酬としては、一回だけになってしまったが。
自分の絵で稼いだお金だと思うと、伊地知先生という名前に守られていない俺個人の稼ぎだと思えた。
「ヨウイチさんおめでとうございます!」
「ヨウニイおめでとう!」
「ありがとう二人とも!」
十二月最初の報告に、二人は喜んでくれて俺も嬉しくなる。
後半にあるクリスマスには三人で過ごしたい。
だから、二人にプレゼントができる資金もできたから、今回はそれで良かったのかもしれないな。
「ねぇ二人はクリスマスに欲しいものはある?」
「欲しいものですか?」
「逆にヨウニイは何が欲しいの?」
「俺? 俺は二人と過ごす時間が欲しいかな?」
「ふふ、それなら私もそうです」
「私も私も!」
二人といることは幸せだ。
だけど、このまま彼女たちに溺れているだけの俺じゃだめなんだ。
「ありがとう。なら、クリスマスの日は一緒に過ごそう。それと各々でプレゼントも用意して、相手のことを思って考えてみるよ」
「う〜ん、難しいけど、それがいいかな?」
「そうですね。何かが欲しいって言うよりもあげたい物をもらえる方が嬉しいです」
二人とも本当にいい子だと思う。
俺は、俺にできることで二人を喜ばせたい。
だから、俺にできる二人が喜んでくれることは絵を描くことだと思う。
それも今までと同じじゃだめだ。
絵にだけこだわるんじゃなくて、話も書こうと思う。
伊地知先生には微妙だと言われたが、編集の仲介さんには面白いと慰めてもらった。
だから、俺は漫画を描こうと思っている。
今は、電子漫画の公募もたくさんあるので、そちらに応募しみようと思ったのだ。そのための題材として、スミレとユミとの生活を誇張して書いてみようと思っている。
所謂、ラブコメのハーレム物だ。
実体験なので、上手く書けるような気がするのだ。
「でっ? 私をモデルに何を描くつもりだって?」
俺はジュリアさんをモデルに主人公を作成することにした。
ボディーガードとして働くジュリアさんは美人であり、かっこいい。
「うむ。まぁ私をモデルにするのは別にいいけど、それっていいの? 二人は紐田さんが好きだから、紐田さん自身をモデルにした方がいいんじゃないの?」
「……オジサンが主人公にはします。ただ、少しだけ誇張してカッコよくもしたくて、お願いします」
「ふぅ〜、仕方ないなぁ〜」
ジュリアさんは俺の願いを聞いてくれてモデルをしてくれることになった。
今回のモデルは、いつもの止まったままの姿勢を描きたいわけじゃない。
動きがある絵を描きたい。
「なるほどね」
格闘技を経験しているジュリアさんに、一つ一つ動きをしてもらって確認していく。アクションなど動きを映像で見るとの、実際にしてもらうのは全然違う。
「凄い!」
「ちょっ!」
必死になって俺はジュリアさんの動きを追いかける。
「危なっ!」
それがこうでここはどうなっているんだ?
「もう! コラ!」
「はっ?」
「さっきから危ないだろ! 形をやっている時に近づいたらダメだよ!」
「えっ?」
「えっ? もしかしてわかってない?」
「すみません。集中すると……」
いつもの癖で集中すると周りが見えなくなる癖が出てしまったようだ。
「ハァ〜本当に危ないんだからね。回し蹴りをしているのに後に立たれたら蹴っちゃうだろ。全く当たらないのが不思議なくらいだよ」
「すみません」
ジュリアさんに怒られてしまった。
もう見せてもらえないだろうか? ふと冷静になってジュリアさんの姿を見れば運動をしやすいようにスポーティーな体のラインがハッキリわかるタイトな服装をしている。
絵を描くことばかりに集中していて、全く気づいていなかった。
「紐田さん。そんなに女性の体をジロジロ見るのは失礼だと思うよ」
「はっ! 本当にすみません」
「いいけどね。なんだろう。紐田さんって憎めないって言うか真剣にやっているのは伝わってくるから……。まぁいいんだけど、私も女性だから、ジロジロと見られているのは恥ずかしいんです」
かっこいい系の美人であるジュリアさんがモジモジと恥ずかしそうにしていると可愛いと思ってしまう。
しかも元々が美人なジュリアさんなので、こっちまで恥ずかしくなる。
スミレやユミがいるのに、俺は何を考えているんだか。
「そうですね。今日はこの辺りで終わりにしておきましょう。またお願いするかもしれませんが、今日の分を参考に描いてみます」
「そう? 大丈夫なの?」
「そうですね。モデルをしてもらったので、ジュリアさんには一番に見せます」
「うん。興味があるからお願い」
ジュリアさんと約束して、俺は家に帰って作業を始めることにした。
クリスマスまでには完成させて短編を書き上げる。
簡単な内容になってしまうけど、枚数を少なくすればできるはずだ。
俺はいつも以上に集中して作業に取り組むことにした。
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