第73話 ユミも一緒に
旅行から帰ってくると、いよいよ十二月に入って年末ムードに差し掛かる。
そして、俺は知らなかったが、ユミの卒業式は一月に行われるそうだ。
あと一ヶ月で高校生活を終えると告げられた。
「最後の高校生活かぁ〜」
「そうだよ。まぁ、私は進路も決まってるし、大学を受験する子たちは勉強に集中しているから邪魔しないようにしているけどね」
「色々と大変なんだな」
「うん。学校も最後のテストが終わったから、来たい子は学校にきてもいいけど、来たくない子は行かなくてもいいだって」
十二月に入ってから、ユミはほとんど毎日家にくるようになった。
十一月までは週末だけにして、最後のおさらいテストを受けていたそうだ。
成績には関係ないのだが、自分の実力を知るために記念のテストという意味合いがあると笑っていた。
「スミレは、大学三年の単位を先に取って、司法試験に力を入れるって言ってたよ」
「そうだよね。姉さんは頭もいいから、将来は弁護士になるって言ってたよ」
「弁護士か〜、俺には絶対に無理だな」
「私も無理だよ!」
今日はスミレが大学の講義を受けているので、ユミが昼食を作りにきてくれた。スミレほど料理が得意というわけじゃないけど、何かとお世話をしたい言われしまえば俺に断る理由はない。
「そうだ。ヨウニイ」
「うん??」
「この間江ノ島であった男の子覚えている?」
「三島くんだったかな? ユミの同級生だよね?」
「うん。それが、最近は全く学校に来てないからあまり知らないんだけど、なぜか退学扱いになって、進路が全てダメだったみたい」
「えっ? 退学?」
「うん。仕方なく就職をしたみたいだけど、その就職先があまりいい会社じゃないって噂なんだ」
ユミの話によれば、三島くんは、ユミと別れた後……。
友人たちの元へ戻ったが、喧嘩別れをしていた様子で。
仲間たちからも避けられ、学校に戻ると卒業ではなく退学を受けたそうだ。
つまり、高校生として卒業資格がもらえないで、中卒ということになり、決まっていた私立の大学も取り消し。
だからといって他の高校に行く費用も親は出さないといったそうだ。
彼も色々と苦労をしているんだろうな。
「自分の力で高校に入り直して、3年生の単位だけでも取れれば仕事にはつけるし、何か才能を見出してやるのもありだから、頑張って復帰してくれるといいな」
「そうだね。嫌な相手だって思うけど、大変なのはかわいそうだって思うよ」
ユミと話をして、ランチを食べた後は、スミレから買い物を頼まれているということで一緒に買い物に向かう。
手を繋いで歩くとユミも彼女になったんだと実感してしまう。
「どうしたのヨウニイ?」
「うん? ユミと二人で出かけるってあまりないから、ユミが俺の彼女になったんだなぁ〜と思っていたところだよ」
「もう、そろそろ一ヶ月ぐらい経つんだからね。慣れてよ。それに一月からは私も一緒に住もうと思っているからよろしくね」
「そうなのか?」
個別の部屋はないのにいいのかな?
「クローゼットの半分を姉さんが貸してくれるから大丈夫だよ。自分の部屋が欲しいとかは思わないから、寝るもの三人一緒になられたら嬉しいな」
「そうか、ありがとう」
どうやらもう少し大きいサイズのベッドを買った方がいいかもしれないな。
ただ、ユミとスミレに挟まれて眠るのは、うん。
嬉しいな。
「ヨウニイ、今エッチなこと考えた?」
「あっいや、そんなことはないよ」
「本当に〜? 別に考えてもいいんだよ」
ユミは腕を組んで胸を押し当てる。
小柄なユミだか出るところは出ているので、柔らかさが伝わってくる。
「うっ」
「ふふ、姉さんほど大きくはないけど、柔らかいのは一緒なんだからね」
「うん。わかってるよ」
もう片方の手には荷物が持たれているので、抵抗もできない。
ユミが満足するまで、腕を組んで歩きながら家へと帰っていく。
帰ってきた家の前には、金色の髪をしたモデルのように高身長美人が玄関に立っていた。
「えっ? ジュリア姉さん」
「うん? ユミ? OH、久しぶりですね」
高身長美人は、どうやらユミの知り合いのようだ。
「どうしたの? こんなところで?」
「ふふ、あなたたちのマザーから護衛の依頼が来ました。ですから、私があなたたちのボディーガードとしてやってきたのです。それで? あなたがマザーが言っていたMr.ヨウイチ・ヒモタさんですか?」
鋭い視線が向けられる。
美人に睨まれるとこんなにも緊張するものなのか? スミレは優しいほんわか美人で。ユミは可愛い系だった。
そこに綺麗な金髪美女とタイプの違う女性にタジタジになってしまう。
「はっはい。マイネームイズヨウイチヒモタ」
「ふふ、そんなに硬くならないで、私は瀬羽ジュリアよ。ハズキ叔母様の姉である、フタバマザーと海外パパから生まれたハーフなの」
どうやらスミレたちの従姉妹になるそうだ。
握手を求められて手を握ると白くて綺麗な手がしっかりと俺の手を握り返す。
「あなたがどんな男なのか見極めさせてもらうわね」
やっぱりこの人。怖いかもしれない。
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