第57話 撮影会 前半

 カスイさんから、一旦挿絵についてストップがかけられたので、作業をすることがなくなってしまった。


 表紙と口絵に関しては、すでに提出している物に細かな色付けをすれば完成なのだ。

 とりあえずはそこだけに集中させてもらうことにした。


「ヨウイチさん、荷物が届きましたよ」

「荷物?」

 

 何か頼んでいただろうか? 

 最近は仕事に集中していて覚えていない。


「忘れているようですね。後でユミもきますから。時間があればお話しましょう」

「はい」


 表紙も口絵はほとんど完成している。

 色合いも決まっているから

 あとは確認を取って気に入らないところがないか修正するだけだ。


 ふぅ、声をかけてもらってから一時間ほどで作業を終えた。

 もう、あとはメールで表紙と口絵を送ってしまえば、確認してもらうだけだ。


「スミレさん。仕事が終わりました」


 作業場を出てリビングに向かうと、スミレさんはいなかった。


「スミレさん?」


 荷物が開けられた紙袋が畳まれていた。

 何が入っていたんだろう? 俺は袋を持ち上げて伝票を見ようと思ったけど、それも外されて捨てられいた。


「ふむ?」

「ヨウイチさん」

「ヨウニイ」

「えっ?」


 スミレさんとユミさんに呼ばれて、振り返るとそこには楽園が広がっていた。


「どうですか?」

「ニャンニャン。ヨウニイが見たがっていた猫の獣人さんだよ」


 白いウサギ耳に白いミニスカドレス、白タイツを履いて恥ずかしそうにしているスミレさん。

 黒い猫耳に黒いフワフワドレス、黒いタイツを履いて、ポーズをとるユミさん。


 スミレさんが恥ずかしそうにモジモジとしているのが可愛い。 


 全てを知っているはずなのに、恥ずかしくしているだけで胸がドキドキする。

 普段のお世話をしてくれているスミレさんは、恥ずかしさを出さないようにしているのに。


 今はコスプレをして恥ずかしそうにしている姿が……凄くいい。

 いつもの姿にコスプレ衣装が合わさって、可愛さが増大している。


「コラ〜、姉さんばっかり見過ぎだぞ!」


 スミレさんをガン見しすぎていた。

 ユミさんが、二人の間を邪魔するようにカットインしてきた。


 いや、モジモジ恥ずかしそうにしているスミレさんはもちろん可愛い。


 対象的に化粧をして雰囲気の違うユミさん。

 普段は学生ということもあり、幼く見えていた。

 そんな普段とは違って、甘えるのが上手いユミさんが、今日は猫のコスプレしていることで大人びて見える。


「すいません! えっと、ユミさんもメチャクチャ可愛いです!」

「なんで敬語なの?」


 緊張して敬語になってしまったことをユミさんに笑われてしまった。

 

「ユミだけですか?」

「えっ?」


 俺がユミさんだけを褒めたことが不満だったのかな? 頬を膨らませているスミレさんがいた。


「もう! 姉さん! 今日は撮影会に来たんだから、嫉妬しないで」

「はいはい。ヨウイチさんがしたいって言うから来てもらったのよ」


 あ〜この姉妹は俺の願いを叶えるためにコスプレを着てくれたんだ。

 そう思うと嬉しいような、恥ずかしいようなメチャクチャありがたい。


 注文した自分を褒めてやりたい。

 エッチな服にしていなくてよかった。

 どっちもドレス型のワンピースを選んからな。

 

 俺ナイス!


「ヨウイチさん、いかがですか?」

「はい! 凄くいいです! 可愛いです。いつも大人びて見えるスミレさんが恥ずかしそうにしていて、コスプレ衣装と合わさった可愛いさが、いつもとのギャップに魅力が爆発してます」


 スミレさんを褒めた後でユミさんを見る。


「ユミさんはいつもの女子高生の少女と大人の女性という狭間の愛らしさが、化粧をすることで雰囲気がガラリと変わって、大人びて見えます! それは小悪魔的な感じがして、魅力されます」


 出来るだけ変に聞こえないように感想を告げたつもりだった。

 そのはずなのに、スミレさんは余計に恥ずかしそうな顔にしている。

 先ほどまで構って欲しそうにしていたユミさんまで、恥ずかしそうな顔をしてしまった。


 あれ? 何か変なこと言ったかな?


「ヨウニイってあれだね」

「ええ、こう言うところですね」

「えっ? えっ?」

「はいはい。なんだかヨウニイが話すと恥ずかしくなるから終わり。撮影会をするんでしょ。そろそろ始めよう」

「そうですね。これ以上は恥ずかしくて耐えられないです」


 コスプレ衣装を身に纏った二人が俺の腕をとってソファーへ座られた。

 二人が腕を組んだことで、胸が当たってドキドキする。


「まずは、私たちの姿を見てください」


 ソファーに座った俺の前で、二人がゆっくりと衣装を見せてくれる。

 背後に向いた二人は尻尾まで再現されていて可愛い。


 ウサギの尻尾をつけたスミレさん。

 猫の尻尾がついたユミさん。


 服についている尻尾なのに掴みたくなる。


「さて、いかがですか?」

「どう?」


 二人が俺の感想を求めて前屈みに問いかけてくる。

 胸元が見えるわけではないのだが、寄せられた谷間と獣コスプレという背徳性が増して、獣コスプレの醍醐味である四つん這いのような姿勢がいけないことを妄想させられる。


 いかん! 彼女であるスミレさんはまだいいとしてもユミさんでそんな妄想をしては!!! 俺の理性よ鎮まれ!

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