第51話 二日酔いと……

 目が覚めると激しい頭痛と、裸の自分の体に驚く。


「イッテェ〜。えっと、何が起きたんだ?」


 スミレさんと食事をして、途中から記憶がない。


「ヨウイチさん、目が覚めましたか? おはようございます」

「はい。えっ!」


 スミレさんがベッドに上がってきて挨拶をしてくれる。その際に前屈みになって服の下に何も着ていないのが見えた。

 長袖で丈の長いダボっとしたトレーナーだから、胸元も緩い。


 多分、それ俺のですよね?


「ふふ、どうかしましたか?」


 イタズラっ子のような笑みを浮かべて見上げてくるスミレさんは、昨日までのお世話をしたがるお母さん風ではなく。

 どこか年下女性らしい可愛らしさを前面に押し出しているように見えます。


「あっいや、おはようございます。すいません。昨日の記憶がほとんどなくて、もしかして俺って失礼なことをしましたか?」

「いいえ、全然そんなことないですよ。むしろ、お酒を飲まれたヨウイチさんは、男らしかったですよ」


 男らしい?! 酒を飲んだ俺よ、何をしたんだ?


「私は今まで、ヨウイチさんをたくさん甘やかしてお世話をしてあげたいって思ってました。だけど、もっと、もっとヨウイチさんに甘えてもらいたいって昨日で思ったので! 私もたくさん甘えますね」

「えっと、はい。それは嬉しいので歓迎ですよ」

「嬉しい」


 スミレさんがそのまま俺の胸に抱きついてきた。

 何もつけていないトレーナー越しに伝わってくる温もりにドキドキさせられる。ヤバい! いつも以上にスミレさんが可愛い。

 

 ドキドキさせられ過ぎて、俺は殺されるのか? 


「ヨウイチさんはすぐに仕事ですか?」

「あっいや、多分、今日にでも資料は来ると思いますが、朝は大丈夫だと思います」

「なら一緒に散歩に行きませんか?」

「散歩?」

「はい。頭を使うことばかりなので、たまには気分転換に行きましょう」


 二日酔いがしんどいはずなのに、スミレさんに抱き締めれられているだけで和らいでいくような気がします。


「わかりました。少し頭痛があるので、シャワーを浴びてきます」

「はい。ご飯の用意をしておきますね」


 顔を洗うために、シャワーに入って頭を冷やした。

 チラチラと見える豊満な胸元が歩くたびに揺れていた。

 何も着てない姿を見たことがあるのに、服装が違うだけでドキドキさせられる。


 男を悩殺する魅力をスミレさんは常時装備しているから油断するとヤバい。


「ふぅ」


 頭を冷やすと先ほどよりも痛みが和らいだ気がする。


「大丈夫ですか?」

「はい。ちょっと二日酔いです」

「では、こちらを」

「白湯?」

「はい。ちょっと温めです。それと薬を飲んでください」


 差し出された薬とお湯をいただき、食べやすいお粥をいただいた。

 ハァ〜昨日の濃い味とは違って素朴で優しい。

 怪我をした時に出してくれたお粥よりも今日のは塩が効いていて美味い。


「美味しかった!」

「ふふ、よかったです。髪を乾かして、お薬が効いてきたら散歩に行きましょう」

「はい」


 食器を片付けたスミレさんが、俺の頭にドライヤーをかけてくれて、セットしてくれる。


「うん。かっこいいです」

「誰も見ていないですよ」

「私が見てますよ〜」


 スミレさんが選んでくれたジーパンとシャツに秋用ジャケットを羽織って外へ出る。


 スミレさんは秋らしいニットロングワンピースにブーツと履いて、元々見た目がいいのにさらに可愛くなって、一緒に並んでいると見劣りしてしまうから申し訳ない。


「どうしたんですか?」


 そんな俺にスミレさんが腕を組む。

 大きな胸が腕に当たって、朝に見た光景を思い出してしまう。


「あっ! いや、スミレさんは凄く綺麗で可愛いなって」

「えっ? ふふ、嬉しいです。昨日から、ヨウイチさんはそういうことを言ってくれるので嬉しいです」


 昨日の俺が何を言ったのかはわからないが、どうやらスミレさんのことを褒めたようだ。ナイスだ! 昨日の俺。


「それとヨウイチさんもかっこいいですよ。お母さんもユミも言っていたと思いますが、前からちゃんとしていれば、モテたと思いますよ」

「そうなのかな? ずっと絵ばかり描いていたので、意識したことないですね」

「ふふ、そういう天然なところが自然でいいと思います」


 今日のスミレさんは常に上機嫌で、散歩に出たはずなのに腕を組んで楽しそうに話をするからデートをしているようだ。

 

 どこかにいくわけではないけど、自然に買い物ができるような場所に向かって原宿方面に向かっていた。

 表参道を歩くスミレさんは凄く似合っていて、どんな服を着てもスミレさんなら似合うだろうなぁ〜と思えてしまう。


「どうかましたか?」

「あっいや、スミレさんならモデルとかしても、似合うだろうなって」

「え〜そうですか? う〜ん、ヨウイチさんは私に来てほしい服とかありますか?」


 上目遣いに問いかけられて、俺はどうしたものかと視線を彷徨わせる。

 すると、遠くにメイド服を着ている女性が目に入った。

 

「うん? ふ〜ん、ヨウイチさんはああいう服が好きなんですか?」

「あっいや、この辺で見かけるのは珍しいなって思っただけで」

「いいですよ」


 スミレさんがそっと俺の耳元で囁く。


「ヨウイチさんだけのメイドさんになってあげます」

「えっ!」

 

 今日のスミレさんは終始ご機嫌で、圧倒されるばかりだ。


 スミレさんはゴスロリ衣装が売られている店に入って、メイド服を購入してしまった。


「楽しみにしてくださいね」


 スミレさんが狐狸相先生のような衣装を着ている姿を思い浮かべて、可愛いよりもエロいと思ってしまったのは内緒だ。

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