第42話 sideラノベ作家 1
《side
私はweb投稿サイトから拾い上げてもらって、ライトノベル作家としてデビューすることが決まっている。
自分が書きたい世界感があり、その大好きな時代背景の資料や、服装の一つ一つにまでこだわりを持って書き上げたい。
だが、書籍化を目指すに当たり内容は流行りの物語を念頭にストーリーを組み込み。
文章も読みやすさを大事にした。それは説明を極力省き、キャラやストーリーの面白さを大切にしたかったからだ。
代わりに世界観や衣装、キャラクターにはこだわりたい。
時代は中世ヨーロッパの中でもフランス革命前の繁栄期を選んだ。
衣装はコルセットやドレスなんて煌びやかで華やかな時代。
キャラクターもその時代に流行っている髪型や色使い。
習い事をしている芸術への情景など、ストーリーとは関係ないところで自分なりのこだわりを詰め込みたい。
そうなると文章では表現が行き届かないところがある。では、どうすればいいか? 視覚で表現してもらうしかない。
自分の拙い文章力が申し訳ない。
それは今も練習中だ。
いくら言葉重ねても良いのであれば、重厚な文章にして説明を何百文字も書き綴りたい。
しかし、そんなことをしていても読者様は離れていってしまう。
ではどうすればいいのか? イラストレーターさんに表現してもらうしかないではないか!
私が言葉では表現しきれないイメージを絵によって浮き上がらせてもらう。
「だから私は資料を集めて、提出したんです。それなのにイラストレーターさんが決まらないってどういうことなんですか! もう三十件以上も断られているそうじゃないですか!」
カスイさんは、編集さんとして頑張ってくれているのはわかる。
だけど、どうしてそんなに決まらないのか? それが普通なのか? 今回がデビューの私にはわからない。
「狐狸相先生! イラストレーターさんが決まりました。ストリングさんって言う方で新人さんなんですが、背景をとても綺麗に描く方なんです」
そういうメールを見た私はホッと息を吐いた。
私の要望があまりにも細かいから、誰も受けたがらないのかと思い出していた。
もう誰でもいいから、書いてくれよと願ってしまうほどに。
ただ、決まったら自分の話に合うイラストができて欲しい。
「わかりました。楽しみにしています」
メールを返しながらも、不安が心を包み込んでいく。
それから数日がして、主人公のラフ画が届いたと言われてメールが届きました。
「えっ!」
「いかがでしょうか? 大分先生の要望に近い出来上がりだと思うのですが?」
PDFを開くと自然に涙が流れた。
「あっ、あれ。あは、凄い」
私が描きたかった主人公は、コルセットを巻いて腰をギュッと締めたドレスをきた縦巻きロールのお嬢様。それが、再現されている。
それだけじゃない。
家の中は様々な色が散りばめられた茶色や赤を基調とした部屋の色彩が完璧に表現されていた。
「完璧です!」
「よかったです! それでは表紙をお願いしようと思います。ページを捲った際の扉絵も二枚ほどカラーで行こうと思います」
イラストレーターさんが決まって、どんどんイラストのイメージをまと待っていく。
この方なら、私の絵のイメージを再現してもらえる!!
資料をさらに追加で提出して、カラー絵を作ってもらう。ここまで嬉しいとは思いもしなかった。
「え〜と、凄い情報量ですね。イメージも伝わりやすいと思います。あとは、本の挿絵も8枚ほど決めてもらえますか? どの場面で入れたいとか、イメージとかもありだと思います」
なるほど、凄い凄い。
表紙は主人公の一枚目で、扉へには断罪されるシーンを描いてもらって、そしてそして……。
夢が膨らんでいく。
自分の文章がこんなふうに再現されるなんて思いもしなかった。
「それとコミカライズも、決まりましたのでイメージに合わせた漫画家さんも紹介させていただきます」
漫画!!! 私の小説が漫画になるの?!
嬉しい。
だけど、これだけの絵を描いてもらって感動したのに、今度は物語のキャラたちが動くのだと思うと、こんなにも感動できるなんて。
「カスイさん、色々と我儘を言いましたが、叶えていただきありがとうございます」
「いえいえ、私も良い作品を作るお手伝いをしたいと思っていますので、一緒に頑張りましょう。それと、今回のイラストレーターさんは男性の方なのですが、よくわかってくれている方で良かったです」
えっ!
私は勝手にイラストを描いてくれた人は女性だと思い込んでいた。
これを描いたのが男性? とても信じれられない。
細部まで丁寧に表現されていて、繊細な女性にしかわからない所作がしっかり描き込まれている。
「勝手な思い込みをしてはいけないな。私のこだわりについてきてくれたんだ。男女の差異なんて関係ないよね」
私は自分が思う話を書くだけだ。
「はい。よろしくお願いします」
「よかったです。それでは進めさせていただきますね」
カスイさんには色々と迷惑をかけてしまったけど、頑張ってくれていい人だった。感謝しかない。
だからこれからは打ち合わせで一緒にいい作品を作られるように頑張ろう。
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