第40話 姉妹で……

前書き


 この度、私のデビュー作品である。

 《あくまで怠惰の悪役貴族》2巻が12月20日に発売が決まりました。

 1巻が11月10日発売なので、2ヶ月連続発売です!!!


 TOブックス様のサイトから予約ができるようになっておりますので、どうぞご予約をお願い申し上げます(๑>◡<๑)


 2巻の表紙は近況ノートにあげております。


 リューク、シロップ、カリンのメイン三人が描かれた表紙が最高なので、どうぞ一度見てみてください(๑>◡<๑)


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《side瀬羽優実》


 時刻は十一時半、まだ私は今日の出来事が脳裏に過ぎって目を開けていた。

 規則正しく呼吸を刻むヨウニイの横顔をジッと見てしまう。


 今日は怖いからと二人と一緒に寝てもらって、ヨウニイが先に眠ってしまった。姉さんはヨウニイに抱きついている。

 流石に私はそこまではできないから、ヨウニイの横顔を見てしまう。


「……ヨウイチさん、ずっと私があなたをお世話するわね」


 幸せそうな姉さんの言葉に、私は羨ましさを感じてしまう。


 今日はヨウニイが来てくれなかったら私はどうなっていたんだろう。

 暗い路地で無理やり連れて行かれて、嫌なことをされたのかもしれない。

 昔から、男の子から人気はあった。

 だけど、付き合うのが怖くて、避けている時にヨウニイに出会った。


 ヨウニイは、優しくて頼りないように見えて、姉さんのことを助けてくれた。

 それに絵を描いている時の集中力は、凄くてその横顔がカッコいいなって思うようになった。


 そんなヨウニイが私が助けて欲しいって思った時に来てくれた。


「……ふふ」


 眠り続けるヨウニイの手を握ってみる。

 この手から伝わる温もりが嬉しい。

 ずっとずっと握っていたいとさえ思える。


「ユミ」

「うん。……姉さん、起きてる?」


 姉さんに呼ばれて自分がヨウニイの手を握っていたことがいけないことに思えて手を離した。

 流石に姉妹でも姉の彼氏に好きになってはいけない。


「少し話さない?」

「うん」

「こっちに来て」


 ヨウニイの側にいると体が火照ってくる。

 眠ることは少し難しい。


 これでもし一人だったら、今頃ヨウニイの名前を口にして姉さんと同じように抱きついていたかもしれない。


「ちょっと夜風に当たりましょ」

「うん」


 体を起こしてベランダにでた。

 広いダブルベッドから降りて、冷たい風が入り込まないように気を付けた。


「寒いわね」

「……でも今はちょうどいいよ」


 火照った体を冷やすにはちょうど良かった。

 姉さんにはバレているだろう。

 怒られるのかな?


「今日はあなたが無事で本当に良かったわ」

「うん。ヨウニイのおかげだよ」

「そうね。私だけじゃなく、ユミも助けてくれて、本当にヨウイチさんには感謝しかないわ」


 姉さんはヨウニイを見るように窓越しに視線を向ける。

 その顔は綺麗でヨウニイのことを心から愛しているのが伝わってくる。


「姉妹で同じ人に助けられることになるなんてね」


 姉さんの言葉を聞いて、ヨウニイに抱きついた時の匂いと鼓動でまた体が熱くなってくる。

 抱きしめられた時にヨウニイに包み込まれているような安心感があった。

 さっき手を握った時もそう。

 大きくて、包み込まれるような幸せな気持ち。

 

 気づくと姉さんは大きな胸に手を当て、甘い吐息を零していた。


「姉さん……いいなぁ」

「ヨウイチさん」

「ツッ……!」


 姉さんの呟きに、叱られたような錯覚を覚える。

 私もヨウニイのことを考えていたから、バレたのかと思った。


「ヨウニイって……凄いよねぇ」

「ふふ……、そうね。他の人はいくら助けを求めていても体が動かないと思うわ」

「うん。カッコよかった……」

「ねぇ、ユミ」

「何?」

「私はね。家族ならいいって思っているの」

「えっ?」


 姉さんは何を言っているのだろう? 


「私たち、本当に似たモノ家族ね。ユミもヨウイチさんを好きなのでしょ?」

「んんん!!!」


 姉さんの指摘に私は顔が熱くなるのを感じた。

 ヨウニイに抱きしめられたい。

 包み込まれていたい。


「ふふ、かわいいわね」


 姉さんが私を抱きしめてくれる。

 柔らかくて気持ちよくはある。

 だけど、ヨウニイに抱きしめられた時とは違って安心感はない。


「ヨウイチさんに抱きしめられると気持ちいいでしょ?」

「うん。凄く安心できた……」


 溜息を吐いた姉さんから離れ、私はヨウニイを見る。


「ヨウイチさんは家族を失っていて、自分を蔑ろにしているところがあるから」


 あんなにも優しくて、守ってくれる大きい人なのに……。

 

 寂しい人なんだ……。


「たくさんの人から愛される人になって欲しいの。才能もある。だけど、見えない人じゃなくて、側で支えてあげられる人がたくさんいてあげてほしいの」

「いいの?」

「えぇ、私はヨウイチさんを幸せにしてあげたいの。たくさんお世話がしたい。だけど、私だけじゃ足りない。全部を補えない。絶対にヨウイチさんを依存させたいの、私が居ないと生きていけなくさせたいの……。それくらい私はヨウイチさんをダメダメにしたい」


 姉さんの頬は紅潮してみたこともないほど妖艶な雰囲気を醸し出している。

 だけど、私もその気持ちがわかってしまう。

 甘えたい! もっとヨウニイに包み込まれていたい。

 

 姉さんがお世話をしたいと思うように、私ももっとヨウニイの側で一緒にいたい。


「もちろん、ヨウイチさんに好きになってもらうことが大切だからね」

「うん。わかってる。私もヨウニイに好きになってもらいたい」

「ふふ、やっぱり姉妹ね。ヨウイチさんに家族をたくさん作ってあげましょう」

「わかったよ!」

「そろそろ寝ましょうか」

「うん。ありがとう。姉さん」


 ベッドに戻るとヨウニイは、スヤスヤと寝ていて全然起きる気配がない。


「一度眠るとなかなか起きないみたい。だけど、絵を描くようになると全く寝ないのよ。寝かしつける時がまた可愛いの」

「そうなんだ。もっと泊まりに来てもいい?」

「ええ。歓迎するわ」


 左右からヨウニイに抱きついた。

 やっぱりヨウニイに引っ付くと幸せな気持ちになる。

 姉さんは顔をつけて匂いを嗅いでいる。

 

 私も……。


「ヨウニイの匂い……」


 心は落ち着いた。だけど、体の火照りがました気がする。

 

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