第37話 スミレさん……
すでに作ってもらった夕食をいただき、後はお風呂に入って寝るだけだと仕事場のパソコンを開くとDMが入っていることに気づいた。
「ヨウイチさん。お風呂の用意ができましたよ」
「はい! ちょっとすみません。DMが」
「えっ? 何か仕事ですか?」
「ええ」
俺はDMを開いてみれば、異世界転生ラノベのイラスト依頼が届いていました。
「イラストの依頼ですね」
「はい。ちょっと話を聞いてみようと思います」
伊地知と決別が完全にできた今となっては気分も前向きになれた。
今後は仕事を受けて、しっかりとスミレさんを養っていきたい。
「よし。明日話し合いをします」
俺が仕事を決めたことをスミレさんに伝えると、スミレさんは座っている俺の額に手を置いて前髪を持ち上げ顔を近づけた。
「ちゅっ」
スミレさんの柔らかな唇が俺の額に触れる。
突然のことに呆然とする俺をクスクスと微笑ましそうに見つめながら、スミレさんが俺の頭を抱きしめた抱きしめてきた。
「凄いです! おめでとうございます。ヨウイチさんはたくさんの人に認められているんですね! すごいすごい」
自分のことのように喜んでくれる。
柔らかくて優しくて、簡単に嬉しいことをしてくれる、……ああもう!
俺は何も嬉しくて何も言えなくなってしまう。
スミレさんの胸元に顔を埋めて、恥ずかしさと嬉しさでその温もりに身を委ねてしまう。しばらくの間、俺はスミレさんに抱きしめられ続けていた。
女性としての魅力と、俺を甘やかしてくれる世話してくれる母親のような母性……。合体させたような愛情を向けられる。
どんどん溺れてしまう。
「そろそろお風呂に入りましょう」
「はい!」
互いに体温が熱くなり、スミレさんが話題を変える。
このままベッドに行ってしまいたいけど、公園に行った汗も流さないといけない。
もう秋と行っても、昼はまだ暖かいからな。
服を脱いで体を洗い始める。
「失礼します♪」
「……うん?」
あれ、今何か聞き逃してはいけない言葉が聞こえたような……。
怪我は治ってからは一緒には入っていなかった。
一度だけバスタオルを巻いたスミレさんが入ってきたことがあるだけだ。
まさかと考える俺の背後で扉が開く音が聞こえてきた。
まさか、まさかまさかスミレさん!?
唾を飲み込む俺が見たのは……。
「ちょ……!?」
バスタオルすら巻いていないスミレさんの姿。
「夜は寒いですね」
と言って戸を閉めて俺のすぐ傍にやってきた。
「……………」
口をパクパクしながらもスミレさんの肢体から目を離せない。
初めて何もつけていないスミレさんの姿を見る。
俺がスケベなのか、いやそれはどうでもいい。
我に返った俺はすぐにスミレさんから視線を逸らした。
彼女はクスクスと笑って俺の背後に回った。
「そんなに恥ずかしがらなくても良いと思いますよ。私たちは彼氏彼女なのですから」
「……それはそうですが」
「ふふ、じゃあイタズラです」
スミレさんが俺の背中に抱きついた。
腕が俺のお腹に回すようにして抱きしめられた。
柔らかい感触を背中に、これでもかと感じる。
肌と肌が密接に触れ合い、緊張して背筋が伸びる!
「このまま体で洗ってしまいましょうか?」
「えっ!」
俺はされるがままにスミレさんに身を委ねる。
スミレさんは俺の目の前にあるボディーソープを手につけて二人の間に塗り始めた。
彼女は鼻歌を口ずさみながら俺の背中を洗いだす。
「ふんふふ~ん〜ふんふ~んふふん♪」
凄く楽しそうに体を擦り付けるスミレさん。
初めて感じる空間の中で、ド緊張して考えるような余裕すらなくなる。
楽しそうな様子のスミレさんとは裏腹に、俺は固まって元気になっていく。
「流しますね」
「……はい!」
温かいお湯が出たシャワーを肩から掛けられ、泡が綺麗に流れて、再びスミレさんが抱き着いてきた。
「綺麗になりましたよ」
「……あっ、ありがとうございます」
先ほどから体が熱くて頭がグルグルとして落ち着けない。
しばらくそうしているとスミレさんの笑い声が耳に聞こえてくる。
「少し寒くなったので湯舟に浸かりましょうか?」
「……はい」
俺が湯船に浸かって冷静になろうとしている間に、スミレさんは髪を洗っていく。その肢体はどこを見ても美しく完璧だと思ってしまう。
「お待たせしました」
髪を洗い終えたスミレさんが、湯船に入ってくる。
二人で入っても十分に大きなユニットバスの中で、心臓がうるさいぐらいにドキドキする。
俺もスミレさんもタオルを身につけていない。
少し視線を向ければ、その全てが見えてしまう。
色々とハプニングのようなものはあったものの、こうして裸の付き合いのようなものは初めてだった。
「……ヨウイチさん」
「あっ!」
見ていたのに気づかれた! 恥ずかしい。
「ふふ、気になりますか?」
恥ずかしくて顔を背けた俺をスミレさんが見ていた。
その瞳に見つめられ、俺は目を逸らすことが出来ない。
綺麗な黒髪が濡れて肌に張り付き、彼女の豊満な肢体は水面を隔ててもしっかりと見えている。
真っ白な肌は健康的そのもので、これほどに綺麗な女性を俺は知らない。
自然に俺はスミレさんに手を伸ばしてキスをしていた。
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