第29話 母娘を描いてみよう

 あれからスミレさんのお母さんであるハヅキさんと、妹のユミさんはよく遊びに来るようになった。


 お義父さんは仕事が忙しいそうで、会ったことはないが何故か二人とも俺によくしてくれている。


「えっと、お母さんとユミをモデルに?」


 恐る恐るスミレさんに聞いてみた。

 スミレさんは美人なご家族と仲良くすることを嫌に思ったりしていない。


 家族でも、他の女性と話すのは嫌だと言う人もいるが、スミレさんはむしろ率先して家族との交流を持たせようとしているように見える。


「うん。スミレさんが嫌じゃなければ」

「なぜ嫌なんですか? ヨウイチさんの絵は素晴らしいと思います。二人とも喜ぶと思いますよ」


 心から嬉しそうに言ってくれる。


「ありがとう。モデルをしてもらえるとありがたい。二人を描かせてもらったら新しい絵が描けるかなって思ったから」

「なるほど、いいですね。二人もヨウイチさんの役に立てるなら喜ぶと思うので、言っておきます」

「ありがとうございます」


 スミレさんにモデルを頼んでから、数枚の絵を描いて投稿した。

 仕事は何件か依頼が来ているが、急ぎではなかったので左腕の包帯が取れて、しっかり使えるようになるまで無理は良くないとスミレさんに止められてしまった。


 そこ、練習とリハビリを兼ねて、スミレさん以外のモデルで、違うキャラを描いみることにした。


 ハズキさん、ユミさんの二人にお願いしてみることにした。

 

 まぁ知り合いがいない俺としては、他に頼めるところがなかっただけなんだが……。


 早速二人が家に来てくれた。


「水着で良かったかしら? モデルなんて何年振りかしら?」

「スクール水着しか持ってないけど、友達にプール行くの誘われたらときに断らないで買っておけばよかったよ」


 なぜ、家族というのは似るのだろうか? 裸ではないだけマシだけど。

 モデルを頼んだ二人が着替えてくるわねと言って、水着で現れた時は驚いて言葉を失ってしまう。


 ハズキさんは年齢を重ねたことで、胸やお尻が大きく成長して、スミレさんを上回って色気が止まることを知らず。


 対比するように発展途上のスク水はスレンダーな体に、しっかり膨らみとあどけない可愛さが見てはいけない背徳感を与えてくる。


「もう、二人ともモデルだからって張り切りすぎよ。水着じゃなくてもいいわよ」


 裸でモデルをしようとしていたスミレさんが、二人を嗜めている光景はどうにも不思議な感じがする。

 それに二人同時に描くわけではないので、一人ずつでよかった。


 しかし、どちらかに待っていてもらうのも忍びない。


「えっと、スーツと制服でお願いできますか? それと二人で座っていただいて」


 なんとか二人同時に描き切るために、椅子の位置を工夫して、正面と左右から二人を見れるように配置した。


「はい。それでまずはハヅキさんから下書きをしていきます」


 年齢も近いので、お母さんということに違和感を感じたので、名前で呼ぶことを許してもらった。


「あら〜、若い子に名前で呼ばれるなんてなんだかいいわね」


 だから、若いって言っても六つだけですからね。


「えっと、10分ほど動かないでいてくれると嬉しいです」

「わかったわ」

「ユミさんはそれまでゆっくりしていて」

「は〜い」


 とりあえず下書きを始める。


 ジッとハズキさんを見つめていると、ほんのり赤くなっているように感じる。気のせいだろうか?


 下書きと言っても、モニターに描いていく映像が見えるので、ライブ的な様子で見てもらえる。


 といってもつまらないかもしれない。


「うわ〜凄いね! それに速い!」

「本当ね。こんな感じで描かれるのって見たことないからドキドキするわね」


 下書きと言っても姿を見ながら描くので、すでに下書き段階でキャラ立てをしていく。


「よし」

「えっ? もう終わり?」

「とりあえずは下書きなので」

「凄いね! お母さんってわかるし、スーツでビシッとした感じ」

「ふふ、なんだか凛々しく描いてくれているわね」

「次はユミさん、お願いします」

「はい!」


 なんだか緊張した様子でお澄まししてくれるユミさんに笑いそうになりながら、制服姿の下書きを描き上げる。


「一先ず休憩にしましょう。ここからはお一人ずつで大丈夫ですから」

「ハァ〜なんだか緊張するものなのね」

「楽しかったよ」


 ハヅキさんとユミさんを退出させて、俺は下書きの原型を固めていく。

 一人一人の横側や輪郭を明確にして色付けをしていく。


 下書きに色付けをして、二人にプレゼントしておこうと思う。


 その後は30分ずつ二人の横顔や立った姿のポーズを下書きさせてもらって、色をつけたラフ絵が二枚完成する。


「どっ、どうでしょうか?」


 本当は背景や細かい描写を加えたいけど、ここからは一人で作業部屋にこもってしたい。


 二人には印刷した絵をプレゼントした。

 

 このためにプリンターも良いものを買い替えた。


 二人に渡すと、二人とも固まってしまった。


「スミレさん?」

「二人とも感動している所悪いけど、ヨウイチさんに感想を伝えてあげて」

「えっ! ええ、そうね。凄いと思ったは下書きだけでも綺麗だったけど、色をつけると格段に良くなるのね。それになんだか自分がこんな風に見られていると思うと恥ずかしいわね」


 ハズキさんから褒めら、恥ずかしいと言われたが顔は嬉しそうに笑ってくれているので良かったかな?


「うん。凄かった! ヨウニイって構いたくなる可愛い感じかなって思ってたけど、真剣な顔で見られるとドキドキする。それに描き上がった絵は凄く綺麗。ありがとうございます」


 ユミちゃんからもお礼を言われて、二人にはこのキャラをネットにアップしても良いか許可をもらってアップさせてもらった。


 二人を見ながらドキドキしていたのは俺の方なので、真剣にやらないと嫌われないかヒヤヒヤしていたのは内緒だな。

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