第27話 美女に囲まれて夕食
美人鍋って、鍋に入っているもので決まるのだと思っていた。
だけど、実際は美人を見ながら食べる鍋だったのか?
何を馬鹿なと言われるかもしれないが、美女に囲まれた食卓ほど緊張するものはない。
やっとスミレさんに多少は慣れたところに、二人も増えて、しかも見つめられたらヤバい。
食卓を美人が囲んだ鍋のことだったんだと思うぞこれは、美人は迫力あるというが、三人もいたら絶景としか言えない。
「ふふふ、朝晩は、少し寒くなってきたから、お鍋はいいわねぇ〜」
「お母さん。お父さんのお世話をしなくてもいいの? 一緒にご飯食べてくれるのは嬉しいけど」
本日の料理はお義母さんの手作り鍋で、何やからお肉がいっぱいでとても美味しい。
出汁が効いている鍋なんだか、味が全くわからない。
「ヨウニイ。はい、お肉だよ」
「あっ、うん。ありがとう」
ユミさんが、お肉を取って器に入れてくれる。
その際に前屈みになってチラリと見えた発展途中の谷間から目を逸らす。
そこにはスーツを脱いで胸元が開いた服を着ているお母さんが目に入る。
俺は今どこを見ればいいのだろうか? 四人で座るテーブルで上座に俺は座っている。
隣にはスミレさん。
正面にはお母さん。
その隣にユミさんが座っている。
どこを見ても美人! どこを見ても六つの膨らみ!
しかも、三人から……。
「ヨウイチさん。左腕が痛みますよね? 器は私が持ちますよ」
「あらら、そうだったわね。まだお怪我が治っていないのよね。なら、はい。フーフー、おネギも食べる?」
「私も私も」
美人三人からあ〜んされるって、どんな天国なんだろうか?
「えっと、右手は使えるので自分で食べれますよ?」
一応、断ってみるが……。
「ヨウイチさんは私のお世話がいいんですよね?」
ニコニコと器を持って差し出してくるスミレさん。
「え〜、ママも息子を甘やかしたいわ」
「姉さんだけ、ズルい! 私もヨウニイに食べさせてあげたい」
ここは天国なのだろうか? しかもママって言ってますが、俺と六つしか違いませんよね? 先ほど年齢を聞いたら、十八歳でスミレさんを産んだと言っていたので、二十歳のスミレさんの年齢で計算すると、俺とほとんど変わりませんよ。
それにユミさん、ボクはペットとかじゃないですよ! 食べさせてあげたいはちょっと違う意味に聞こえますよ。一人でご飯を食べられない子供でもないので、大丈夫ですからね。
「ヨウイチさん」
隣から名前を呼ばれてスミレさんを見ると、感じたことのない圧力を感じる。
「はっ、はい!」
差し出された白菜を口にする。
スミレさんの後ろから黒いモヤというか、オーラみたいなものを感じて圧倒されてしまう。
ここでお母さんやユミさんを選んではいけないように思った。
「まぁまぁまぁ、ふふふ」
「む〜姉さんだけズルい」
なっ、なんだろうか? 今の圧力は? 絶対に断ってはいけないような気がした。
「あらあら、スミレちゃん。あんまり強引にしてたらヨウイチ君に嫌われるわよ」
「えっ?!」
「そっ、そんなことないですよ。スミレさん。凄く嬉しいよ。だけど、右手は使えるからね。ほら! 自分でも食べられるでしょ?」
俺は器に入った肉を掴んで口に入れる。
「それはそうですが、私が食べさせたいのです」
「いいなぁ〜、私もヨウニイのお世話をしたいなぁ〜」
ユミさん? 君は先ほどからどうして俺のお世話をそんなにしたがるのかな? 嬉しいんだけど、スミレさんのいる前で言われちゃうと……。
俺がスミレさんを気にしてみるが、スミレさんはユミさんのいうことはあまり気にしていないようだ。
むしろ、俺がみんなからお世話をされない方に不満を抱えているような気がする。
「えっと、とても美味しいです」
「ふふふ、よかった。ヨウイチさんはお怪我をされているんです。それに私を助けてくれた恩人ですからね。これぐらいされて当然なんです」
「当然? いやいやいや、みんなでご飯が食べられるだけで凄く嬉しいことだよ」
家族を亡くしている俺としては、こうやって楽しく賑やかに食事ができるだけで嬉しいことだ。
ただ、やっぱり美人に囲まれているのは落ちつかない。食べさせてもらうのはどれだけ言われても恥ずかしい。
「なるほど、なるほど、そういう反応なのね」
「えっ?」
お母さんが何やら一人で納得された顔をしている。
「ふふふ、可愛い。私がお世話したくなってきちゃうわね」
「えっ? えっ?」
「お母さん。ダメですからね。ヨウイチさんのお世話おするのは私です」
「む〜姉さんいいなぁ〜」
なぜ彼女たちは俺のお世話をする権利を取り合うような発言をするのだろうか? 俺は自分で自分のことができるので、必要ないと思うのだが。
ただ、スミレさんとはお付き合いするときに世話をさせて欲しいと言われたので、二人きりの時は受け入れるつもりだが、やっぱりお母さんたちがいる前でするのは恥ずかしいので、控えめにお願いしたい。
「さぁご飯も食べたから、そろそろ帰りましょうか?」
「え〜もう? 仕方ないなぁ〜。スミレ姉さん。ヨウニイ。また来るね」
「二人ともお気をつけて」
「ちょっとマンションの入り口まで送ってきます」
「はい。気をつけて」
一緒に行こうとしたが、俺は怪我をしているから玄関まででいいと断られてしまった。
まぁ、マンションのエレベーターを降りるだけなので大丈夫かな? それにしても嵐が過ぎ去ったように感じる。
美人に囲まれるって疲れることだったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます