第17話 引っ越します!
スミレさんはメイド姿を気に入った様子で、あれから家事をする際にはメイド姿で家事をしています。
ただ、一つだけいっておきたいことがあります。
「幸せすぎてありがとうございます!」
「えっ? 何か言いましたか?」
「あっいえ、なんでもないです」
初日に見たメイド服は生足でした。
あれはやばかった。
なので、タイツかハイソックスを履いてほしいとお願いしました。
タイツなら、最悪パンツが見えてもタイツで隠れると思ったからです。
だけど、俺は判断ミスを犯したことを知りました。
まずハイソックスを履いた時の太ももは凶器だと言っておきましょう。
これは厳選なる研究結果なので間違いない。
スカートと太ももという黄金領域が生まれるのだ。
こんなところに桃源郷があったのかというほど、自分のミスを呪いたくなる天国が、座っている目線の高さで披露されることになるのだ。
今まで知らなかった。太ももとはここまで魅力的なのか!!!
そして、タイツ!!!
彼女がチョイスした色は黒。
黒タイツは艶かしい。
美しい女性が生足に黒タイツを履いて、ミニスカのメイド姿を想像してほしい。しかも二十歳のグラマラス黒髪美女だ。
豊満な胸を見ても幸せ。
黒髪が似合う美しい顔を見ても幸せ。
黒タイツを履いた艶かしい太ももを見ても幸せ。
ふっ、表現がおじさん? 当たり前だ。
俺はおじさんなんだ。
この場で宣言してやりたい。
おじさんは最高、バンザイ! 若者の青い恋など知らん。
むしろ、開き直ってエロい物はエロいと言ってしまえる。
これが歳を取るということだ。
恥ずかしい? 何を甘っちょろいことを言っている。
男ならば、言ってやりたいぐらいだ。
「そのムチムチで魅惑的な太ももを僕のモノにしたい」
バカだと思うか? バカだよ。
もうバカにならなくちゃ耐えられないんだ。
スミレさんは、全部がエロい。
女性として完璧なんじゃないだろうか? 昨日のことが夢物語であっても、俺は少しだけ決めたことがある。
この部屋で、世話になっている間は手を出さないと決めていた。
あれだけ密着してくれるということは、スミレさんは俺を嫌ではないと思ってくれているはずだ。水着だが、お風呂も、一緒に入って洗ってくれる。
家事全般のお世話もしてもらっている。
これは俺をペットとして扱っているのかもしれない。
ならば俺自身が、犬や猫のつもりで甘えてもいいんじゃないだろうか? だって、可愛い女の子がお世話をしてくれるんだから甘えたい!
ただ、節度は守る! 変態風にはしない!
ペットだから擦り寄るとか、気持ち悪く犬の真似をするなどは絶対にやらない。これは俺なりの誓いだ。
「そう言えば住民票が届きましたよ」
「あっ、はい! そうですね」
自分で仕事をしようと思って、引っ越しを提案した。
先ほども行ったが、この家を出たら誓いはノーカウントになる。
一緒のベッドで寝ていることを知ってから、狭い部屋の小さなベッドで眠っていたい。だから引っ越したくないという気持ちは強くなった。
だが、流石にもう我慢ができる秒読みに入っている。
もしも、何か自分の心を決壊するような出来事があれば、俺は抑えられないだろう。
「今日は不動産屋に行きましょうか?」
「そうですね」
様々な思い抱えながら、俺たちは話し合いを行った。
結果的には部屋を借りるのは、スミレさんということになった。
そこに、ご厄介になることに……。
左手のこともあるのだが、色々と普通の生活が送れていない俺を心配したスミレさんに説得されてしまった。
こんなにも日常生活を送れないとは思っていなかった俺も自信をなくすほどの浮世離れした自分が情けない。
そのため社会的に慣れるまでスミレさんに教えてもらうことになったのだ。
もしも今頃スミレさんに出会っていなかったら、家もなく、マトモな食事もとれないで、これからのことを考えながら漫画喫茶で呆然としていたことだろう。
「さて、間取りはどうされますか?」
不動産屋は女性の営業で、私たちを見て間取りを予想してくれた。
2LDKの家族用マンションを勧めてくる。
「これからお子さんを作る場合でも、お部屋が一つ多くある方がいいですよ」
その言葉にスミレさんは上機嫌で内見に行くことに決まった。
間取りは先ほど話していた2LDKで、日当たりもよく仕事をする空間としては申し分ない。
「どうです? ヨウイチさん」
「俺はいいよ。環境的にも十分だ。立地やスーパー、通勤手段でスミレさんに合わせてくれた方がいいかな?」
「なら、もう一軒見せてもらえますか?」
「もちろんです」
そう言って、そこから五件ほどのマンションを回ったが、最初のマンションで決めることになった。
「それでは契約書はこちらになれます。家具付きで即時入居になります。家具が壊れた場合や、交換する場合でも、保証が付いていますので一報ください」
なんだかトントン拍子に話が決まって、新居への入居は週末に行われることになった。
スミレさんの手際の良さに脱帽しながら、俺は新たな新居で仕事をしながら、社会復帰に向けてスミレさんの世話を受けることになる。
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