第11話 彼は流されない
《side瀬羽菫》
ヨウイチさんと暮らす日々が、一週間経とうとしています。
私は自分でも男性から好まれる体型をしていると思っていました。
それなのに、ヨウイチさんは一向に私を求めようとしないのです。
私も大人なので、そういう行為がどういう意味を持っているのかちゃんと理解しています。
最初は恩義から彼を部屋へと招き入れました。
ヨウイチさんも男性ならば、欲望が我慢できなくて、私は押し倒されてしまうかもしれない。
初日はあんなことがあって、そこまでは考えていませんでした。
だけど、二日が経っても、三日が経っても、ヨウイチさんは紳士的な振る舞いを崩しません。
むしろ私の話を優しく聞いてくれて、ご両親が亡くなっている話をゆっくりと話してくれて、その寂しそうな表情に私の下腹部がキュンと締め付けられるのです。
女性だって欲情します。
今まで、私を見てきた男性たちは、私にこんな気持ちを頂いていたのでしょうか? ヨウイチさんは私を助けてくれた人です。
初めて助けられた時、私よりも背丈が高くて男性らしい。だけど、どこか頼りにならない冴えない雰囲気を感じました。
初日に、腕が不自由な彼のためにお風呂に入った際に男性のヨウイチさんの身体を見ました。
細いながらに筋肉があり、伸び放題な髪は濡れて捨てられた犬のようで可愛かったのです。
次の日に買い物に行って、髭剃りを購入してきました。
電動髭剃りに気後れしているようでした。
髭を剃ると思ったよりも童顔な、可愛い顔をしておられます。
さらに次の日に髪を切りに行きたいと言われ、近くの理髪店に付き合います。
三ミリのバリカンでサイドを刈って、目と耳に髪がかからないように切り揃えてもらうように指示されました。
いつもこのスタイルだと言って、完成したツーブロック。爽やかイケメンが登場です。
いや、イケメンなのかは正直わかりません。
もう私はヨウイチさんの虜になっています。
何をされてもカッコよく見えてしまうのです。
だから他人から見れば、やっぱり冴えないオジサンのままなのかもしれないません。
ボサボサで頼りないと思っていたオジサンが、小綺麗でサッパリとした爽やかな男性に変われば、ギャップで胸がドキドキしてしまいます。
もうもうもう、どうしてヨウイチさんはそんなにカッコよくなるんですか?!
私はどんどん、ヨウイチさんマニアになってしまうじゃないですか?!
今日も散歩帰りにヨウイチさんを洗ってあげるために、一緒にお風呂へ入りました。
ヨウイチさんは元気そうに散歩をしていたはずなのに、お風呂場でフラフラになり、体を洗ったところで「上がる」といって立ち上がって体調が悪そうです。
身体と髪を拭いて、リビングに来ると、そのままソファーで寝てしまいました。
しんどかったのか、熱を測れば39度になっています。
「やっぱり、まだ本調子ではないのですね。もう私に心配かけないように強がっていたんですね。ヨウイチさんは表情があまり変わらないからわからなかったです」
私は寝てしまったヨウイチさんを見て、頬を膨らませます。
どうして年上の男性は強がってしまうのでしょ? あまり私に頼ってくれません。
もっとハッキリと言ってくれたらわかるのに、表情もあまり変わらないから、一人で我慢していたんだと思うと悲しくなります。
「もう、そんなに私は頼りにならないですか?」
眠っているヨウイチさんの頬を突いてみるけど、起きる気配がありません。
寝方が悪かったのか、左腕を痛そうにしています。
「こっ、これは不可抗力ですからね。ヨウイチさんが腕を痛そうにしているので、仕方なくしてあげるのです。私が欲情して強引にしているんじゃないですからね。だけど、本当はもっと私を求めていいんですよ。ヨウイチさんのお世話をするのが、今の私にとって一番の幸せなんですからね」
一人で言い訳を言いながら、私は眠っているヨウイチさんの頭を抱き上げて、膝の上へと乗せました。
左腕が浮いて少し楽そうな顔になります。
胸が大きくて、ヨウイチさんの顔がちゃんと見えません。
目の前に鏡を置いていてよかった。
だけど、寝息から痛そうな感じが取れたので、これでいいかな?
「ふふ、髪を切ったばかりだから、ジョリジョリです。あまり男性の頭は触ったことがなかったですが、気持ち良いです」
やっぱり十二個も年下だから、子供扱いされているのでしょうか? 同級生や無遠慮な視線を向けてくる男性たちからは、私の体は好まれて結構人気だと思っていました。
だけど、そんな視線よりも好きな人に見てもらえないことが、こんなにも悲しいとは思ってもいませんでした。
「えっ?」
「あっ、起きましたか?」
ヨウイチさんの体がビクッと震えて、私の胸を押し上げる。ふふ、ヨウイチさんの顔が私の胸を……ハァ。
「すいません!」
彼が起きあがろうとするので止めました。
いきなり起きると立ちくらみをしてしまいます。
「ふふ、大丈夫ですよ。ゆっくりしてください」
私はヨウイチさんを諭して、しばらく膝枕を続けさせてもらいました。
「体調が良くなったように感じるかもしれませんが、これまでの疲れも出ているようで、熱がまた上がったようです。無理してはいけませんよ」
これは私だけの特権です。
お世話をさせてもらう。
ヨウイチさんの怪我が治ってしまって、家を出るなど考えたくない。もう我慢できないかもしれません。
私はヨウイチさんのいない生活に戻るなど考えられません。
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あとがき
どうも作者のイコです!!!
凄い!ラブコメ週間ランキング21位になりました!!!
これもスミレさんのおかげですね!!!
みんなお世話されたい!
作者が一番お世話されたい!
投稿して一週間ほど立つので、そろそろレビューコメントが欲しい!!!
おねだりしてみました(๑>◡<๑)
よろしくお願いします!
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