第24話

ゴリ豚を路地の奥まで引きずって壁の方に放る様に手を離す。

あー、重かった。


「ぐぅっ!」

「ボロボロだな。ええ?おい。轢かれたんだろ?死ななくて良かったよ。」

「な、なんでそれを…」


ゴリ豚は病院で見た時の余裕ぶった様子は既になく身体も服も泥だらけの傷だらけだった。

無抵抗に俺に引きずられた様に既に動く気力もほとんど残っていない様だ。


「お前が轢かれる前に迎えに行った女警官が居ただろ?そいつに聞いた。」

「どういう事だ…?」


ゴリ豚は理解が出来ないのだろう。

自分に服従させた女が裏切った事など。

こいつにとって、女は唯の所有物でしかない。

歪んだ心のクソ野郎だ。


「お前、捨てられたんだよ。何でだと思う?」

「あの豚共が俺を捨てた…?は、はは、馬鹿な。」


真実を伝える俺の言葉を豚は信じない。

ならこのイカれチンコ野郎のふざけた世界に沿った証明をしよう。


「これがその証拠だ。」

「………は?」


俺は適当に拾ったタオルで隠していたブツを取り出す。


「な、なんだそれは…?」

「何ってペニスだよ。お前の股にも付いてんだろ?俺のと比べたらそりゃあ無いも同じだと思うかもしれんがな。はっはっは…あー、つまんね。」


俺の股間に視線が釘付けになっているゴリ豚の腹を蹴飛ばす。


「げほっ!」

「これを見せたら面白いぐらい俺の言うことを聞いてくれたよ。」

「そ、そんな。俺の、俺のより大きいなんて…」

「てめぇのチンコも元は借り物だろうが。自分よりデカい奴なんていくらでもいんだよ。」


ゴリ豚は自分のプライドを折られたのか肉体的だけではなく精神的にも参ってしまった様だ。

意気消沈した顔をしている。


「さて、答え合わせも済んだところでさっさと済ませるか。」

「っ!」


俺は懐から警棒を取り出す。


「ま、待て!猿渡、お前の女に手を出したのは謝る!だがそれだけのチンコを持つお前なら分かるはずだ!」

「ああ?」


屠殺寸前の豚が両手を突き出して醜く喚く。


「女は男に奉仕する生き物なんだ!俺は勘違いした女の目を覚まさせてやっただけだ!お前も下らない常識に縛られているだけだ。それだけのモノを持っているお前なら俺の言うことが分かるはずだ!」

「ああ〜、はいはい。」


俺が話を聞く態度を見せると豚の顔が綻ぶ。

その顔を俺は警棒ではたく。


「ぺぎゃっ!」

「興味ないよ、そのお前のイかれた世界観の話なんか。あの世で喚いてろ。」

「あ、あの世?」


ゴリ豚はようやく俺の殺意に気付いたのか景気の悪い面を更に青くし俺を涙目で見る。


「俺を殺すのか…?ば、馬鹿!考え直せ!今のこの俺を殺したらどうなるか分かってるのか?」

「どーなんの?教えてせんせー?」


俺が馬鹿にした様にふざけた声で問うと軽くイラついた顔で豚が命乞いを始める。


「今お前が俺を殺す事は私怨でしかない!更に俺は無抵抗で既にボロボロだ!お前は少年院行きに確実になるだろうな!親が悲しむぞ!」

「性犯罪者が偉そうに言うなよ。」

「だからどうした!犯罪者だろうが俺には人権がある!お前は俺に何も出来ない!」


確かにこの豚の言う事は正しいだろう。

俺がこの豚をこの場で撲殺する事の法律的正当性はない。

豚の顔に余裕が出てきているのが分かる。

隠しているつもりなのだろうが醜い顔がほくそ笑んでいるのがよく分かる。

そう、よく分かるよ。

こいつの内心が。


「俺ももう懲りた、悪かった。大人しく捕まる。全てを証言しよう。ちゃんと罪も償う。それに俺が死んだらお前の仲間も困るだろう。俺が全てを詳らかにしなければ確実に捕まるぞ!」


こいつは懲りてなんかない。

悪かったなんてこれっぽちも思っていない

先程俺に少し語ってみせた異常な価値観のままに自分を正当化するだろう。

命さえあれば何度でも再帰可能だと思っているのだろう。

今回の様に。


こいつの言葉はオナ禁始めたと宣う中学生ぐらい信憑性がない。


だが、俺は黙って聞いた。


豚は自分の期待通りに事が進むと思ったのか飛ばす唾の量を増やす。


「な?お前本当に自分の人生を生贄にして俺を殺す気か?考えなおせ、若いから分からないだろうが若い時の躓きは一生モノだぞ?」

「分かってるよ。俺、あんたが思ってるより子供じゃないんだ。」

「は?」


俺はこいつと違ってイかれた話を他人にはしない。

俺はただゆっくりと豚に近づく。


「ま、待て!落ち着け!深呼吸しろ!よく考えろ!魅李と会えなくなるんだぞ!」


その言葉に立ち止まる。


「は、ふ、ふ、ふ…」


過呼吸になった豚が玉の様な汗を流して大きく瞳孔を開きこちらを見ている。


「お、お前。魅李が好きなんだろう?お前が何年少年院に入るか分からんが確実に言えるのはその間にあの女は誰かのモノになる!」


魅李。

ゲームのヒロインで俺の友達だ。

そして親友の想い人。

そして俺は魅李の事が好きだ。


「俺を殺そうとするほどあの女が好きなんだろう!?馬鹿馬鹿しいと思わないのか?下らん容姿や関係性で女が他人に取られるのが!」


初めて純一の紹介で彼女と会った時、可愛らしい女の子だなと思った。

それは姪っ子を見る感覚だった。

そりゃそうだ。

出会った時俺らは小1で、俺は人生2周目で化け物級のロリコンではなかったのだから。

だがお互いに成長していくにつれて、彼女と関わっていくうちに段々と惹かれていった。

気持ち悪いが彼女と付き合った時の妄想をした事もある。


だが最初からその恋は始まる前から終わっていた。

彼女には純一がいたからだ。


きっと彼ら2人はこのまま一緒に人生を歩んでいき家族となって一緒の墓に入るのだろう。

精々彼らの人生で俺の役割など結婚式で友人代表スピーチをする程度の存在だ。

いい歳して格好付けた厭世家の様な考えを持っていたものだ。


「抱いてやれば良い!お前のそのチンコならそれが可能だ!いや、寧ろそれが俺らの様な人間の義務なんだ!」

「そんで俺の肉便器になった彼女を貪り尽くせってか?」

「そうだ!女なんて思うがままに使ってやれば良い!好きなら、なおさらやってしまえばいい!自分のチンコの事以外何も考えられなくしてしまえばいい!」


想像してみる。

あの豊満な肉体をいつでもどこでも使い放題。

金がなくなったら風俗で働かせてその間に俺は別の女を抱く。

醜くなったら捨てれば良い。

自分の欲の赴くままに魅李を消費する事を妄想する。


薬によってフルボッキ状態のチンコがさらに硬くなった。


豚はそれを見てにやける。


「あの女はまだ処女なんだろ?最高だぞぉ〜、処女を奪うのは。俺も何百人の女を抱いてきたが処女が1番良い。処女を奪う瞬間は特別だ。そうだ!俺が熟成させている処女の女共をお前にやろう!」


ゴリ豚の目に最早恐怖はなかった。

俺を仲間を見つけたかの様に見ている。


「特に彼氏持ちとか好きな相手がいる奴の処女を奪うのはこの世のあらゆる快楽を勝るぞ?泣きながら彼氏の名前を言って謝罪してた女が段々と快楽に溺れる身体に困惑している姿は喋ってるだけで勃っちまいそうだ。」


その話に確かに俺のチンコは更に弾道を上げた。


「プライドや精神の支柱を折ってやって俺の与える快楽に縋らせてやれば従順な肉便器の完成だ。な?聞いてるだけで楽しいだろ?」

「そうだな。」

「だろ!?だから…」

「それがエロゲーの話ならなぁ!!」


俺は意気揚々と腐った話を続ける豚の腹にヤクザキックをぶちかます。


「ぐぅ、ぐぅげえええええええ!!」


腹に受けた衝撃で豚は吐瀉物を路地にぶちまける。


「このイカれ野郎が!お前はただの性欲異常者の性犯罪者だ!てめぇに同意出来る事など一つだってねぇよ!」


俺は豚の髪を掴んで顔をこちらに向けさせる。


「俺は他人の人生を自分の欲のままに消費して笑って過ごせる様な精神構造してねぇんだよ!そんな妄想はフィクションで充分だ!不倫も寝取られも親子丼も未成年淫行もレ◯プもリアルじゃ笑えねぇんだよ!」

「ぐ、ぐぅ…、そ、それはお前が下らん常識に囚われてるだけだ…」


豚はまだぶひぶひ宣う。


「大体俺はちんこま◯こしか言わない魅李の事が好きな訳じゃねぇんだよ。これは堕ちた後の女のバリエーションが少なくてキャラの魅力が無くなるって言うエロ同人ゲームの難しい所と話は通ずるけどよぉ〜」

「な、何の話だ?」

「エロ同人ゲームの話つってんだろ!」


ゴリ豚の顔面をぶん殴る。


俺は咳き込んでうずくまるゴリ豚を見下ろす。


「てめぇの堕とした女共もきっとその前の方が魅力的だったぜクソが。そんでちゃんと言っておくが俺は、確実に、この場で、お前を殺す。」


希望など抱かせない様にゆっくりはっきりと殺害宣告をしてやる。


「お、俺の話を聞いてなかったのか?」

「お前の妄言ならしっかり聞いたよ!」

「その前の話だ!お前とお前の仲間は確実に捕まってお前の好きな女は他人のものになるんだぞ!」

「俺の仲間は捕まんねぇよ。お前が死んでもお前の手下にした女共に証言させる。」

「はっ!どうやって……っ!」


奴は俺の話が成立することに気付いたのか言葉につまる。


こいつの都合よく使っていた女達は俺のチンコで主従権をこちらのものにした。

しっかりと自分の罪を告白してもらい償ってもらう。

表沙汰になれば警察の大スキャンダルだ。

裁かれるにしても揉み消すにしても俺達の集団露出などそれに比べれば些事だ。

俺としてはもみ消す方に一票を投じたい。

彼女達も被害者だ。


自分を守る盾が一つ無くなりゴリ豚は焦る。


「だ、だが俺を殺せばどちらにしろお前は少年院行きだ…。魅李も…」

「魅李には純一がいる。」

「…強がるなよ、お前はそれで良いのか?」


良いかと言われれば良くない。

確かに俺は魅李の事が好きだ。

だが俺は璃々の事も好きで、なんなら白峰、黒岩、実妹の美咲の事すら好きだ。

男子高校生、いや男など美人であればちょっと関わるだけで直ぐに好きになってしまう生き物だ。

そしてそれが誰かのものになると見当違いの喪失感に駆られるものである。

だがそんな事はなにも特別な事じゃない。

それでレ◯プ敢行することが常識ならこの世界は2秒で滅んでいる。

そして俺は死んでも良いと思えるほど彼女が好きな訳じゃない。

この極論野郎の話で鼻から俺の心は揺れたりしなかった。


「好きな女が頭パーになるよりはマシだボケ!俺は魅李の身体が好きなわけじゃねぇんだよ!」


ごめんそれは嘘。

格好付けた。

正直先程心の中で考えた彼女を段々と好きになった理由の大部分は歳を重ねる毎に彼女の身体が豊満になったからだろう。

だが豊満な身体に清らかな心を持ってこそ俺の好きな魅李である。

そして俺はこいつの最後の勘違いを正す。


「そして俺はお前と心中して自分の人生を台無しにする気など一切ない。」

「な、何だと?」

「あー、ごめん。殺さないってわけじゃない。お前は殺すよ。改めて言うけど。お前の話を聞いてやったのは遺言だからだよ。」


異常者が異常者を見る様に俺を見る。


「俺、お前が脱獄してきた時点で殺すって決めたんだ。お前やべぇよ。なんでただの性犯罪者が脱獄出来んだよ。何で折ったはずのチンコ復活すんだよ。何で看護師や警察動かせんだよ。」


俺はあの時こいつを殺す気だった。

それはこいつを生かしておくと理不尽に俺が死ぬ事態になるからだ。

常人には理解できないだろうがそれは俺にとっては正当防衛の一種だった。

しかしチンコを折って豚箱にぶち込んだ時点でこいつへの殺意は無くなった。

なのにこいつはあまりにふざけた形で復活を果たした。


「どうせまたどれだけの罪で捕まろうが出てくんだろ?チンコ折ろうがキンタマ潰そうがタイで復活すんだろ?じゃあもう殺すしかないじゃん。やんなきゃ俺が死ぬんだからさ。」

「な、何の話をしている。」


ゴリ豚は恐怖している。

自分の思考では一切分からない正当性を主張する異常者を前にただ恐怖している。

こいつには分からない。

いや俺以外には分からない話だ。


「ゲームの話だよ」


俺はアホ面で口を開くゴリ豚の口に警棒を突っ込む。


「あおごっ!ごぁう!?」

「暴れんなよ暴れんなよ。」


そして病院から盗んで持ってきたマウスオープナーで口を開いた状態で固定する。


「お前もこの世界の犠牲者なのかもな、だからせめて死ぬ時はお前の希望を叶えてやるよ。」


この世界がエロゲーの世界じゃなかったらこいつは最初の犯罪で捕まり罪を償いここまで歪む事はなかったかもしれない。

そして俺に意味不明な正当防衛の理論で殺される事はなかったかもしれない。


懐から瓶を取り出す。


「これはお前と同じ快楽至上主義者が作った媚薬………いや、興奮剤だ。お前俺に薬盛ったよな?キメセクが好きなんだろ?良かったなこれは本当にまさしくお前が体験した事のない天国に行くほどの快楽を得られるぞ。」


ゴリ豚が抵抗しようとするが壁へと顔を押し付けて固定する。


薬蔵がオーバードーズによって死ぬ可能性が非常に高いと言っていた薬だ。

この場で使い切ろう。

これに何回も頼っていたら本当にシャブ中になりそうだ。


「お前普段から薬使ってんだもんな。シナリオはこうだ。追い詰められたお前は現実逃避に薬物を大量摂取。オーバードーズによって死亡。つまり自殺だ。」


ゴリ豚が必死に首を振ろうとする。


「そう上手くいかないって?安心しろよ。警察はもみ消しに必死で多少の不自然は見逃すさ。警察にとってもお前が死んでいた方が話を身内で作れて都合が良いはずだ。死因は少なくとも確実に薬が原因になるんだ。それに俺に薬を手に入れるルートなんて一切ないからな、どんだけお前と揉み合った形跡があろうが俺が直接殺したとはならない。」


ゴリ豚の口に瓶の口をあてがう。


「喜べよ、最高の快楽の中で死ねるんだ。快楽至上主義者のお前にはこの上ない幸福だろ?」

「もが、もがあああ!」


俺は一気に瓶を傾けて中身を口内にぶちまける。


「しかも処女が好きなんだろ?良かったな俺は正真正銘、前世も含めて処女だよ。俺の処女を奪って快楽の中死ねる。お前の希望通りだろ?だから………恨むなよ。」


随分ふざけた理由でご都合に復活したなゴリ豚。

だがお前の末路はコミカルには終わらせねぇぞ。

俺は瓶の中身をカラにしてゴリ豚の口からマウスオープナーを取り外して奴から離れる。


ゴリ豚は拘束が外れると口の中に残っていた薬を吐き出し既に飲み込んでしまったものを取り出そうと口に指を突っ込もうとした。


だが


「んほぉおおおおおおおおおお♡♡♡やっべぇええええええ♡♡♡逝くっ!逝っちゃううううううううううううう♡♡♡」


醜い豚が快楽に絶叫し海老反りを繰り返して痙攣する。


汚い路地の中を野太い絶叫を響かせのたうち回る。


「逝くっ♡♡♡逝く♡逝きしんじゃうううううううう♡♡♡」

「うわぁ…」


俺は想像していたより想像を絶する光景に思わず引いた声を出してしまう。


殺人の覚悟を決めたはずだがこの異常な光景に謎に胃が痛くなる。


ゴリ豚は数分間のたうち回ってその後動かなくなった。


俺はゆっくりと近づいてゴリ豚の口元に耳を近づける。


息をしていない。


確実に死んでいる。


「………ふぅ〜。」


じゃあなゴリ豚。

今度はそのイかれた思考が受け入れられる世界に転生出来るといいな。


俺は俺の初めての人となったクソ野郎の死を祈ってやり路地から出た。


しかし………、結構コミカルな末路になっちゃったな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

パクった自転車で魅李達がいる場所に向かう。

魅李の安全を確保出来た段階で愛陰会には散会して逃げる様に伝えてある。

仮に捕まってても警察との話し合いの中で確実に助けてやる。

今後の事に思いを馳せながら自転車を走らす。


今回肝を冷えた事は何度もあったが魅李の父親がゴリ豚を殺そうとした事を聞いた時は本当にゾッとした。

子供を傷付けられた親の恐ろしさを知った。

彼がゴリ豚が語った話ではないがあのクズと自分の人生と心中する事にならなくて本当によかった。


しかし本当に散々な日だった。

まだ癒えてない体で駆け回る羽目になるわ処女を散らすわ。

この後も女警官達との口裏合わせ、警察との話し合い。

やることが沢山ある。


こんなイかれた世界で俺は今後も生きていけるのだろうか。

まるで全てが終わった様な感覚だったが肝心の主人公の純一と魅李がいまだに突き合ってない。


目的地に近づいてくる。

場所は俺の家だった。


玄関の前に大勢の人間がいた。


俺の両親、美咲。

幹部2人、璃々。

なんか璃々が気まずそうにしているな。

そして志島に愛陰会の何人か。

つーかお前らズボンまだ履いてねぇのかよ。

純一とその家族。

魅李の両親もいるな。

なんか純一と魅李の父親の太ももからなんか生えてるぞ?

そして魅李。


「おおーい!」

「元締めぇええええええ!」


俺の姿を視認すると下半身露出した変態共が俺の方に走ってくる。


「おげぇ!近づくな!ズボン履けアホ共!」

「いや、兄貴も履いてないのは何で?」


皆にもみくちゃにされながら家の前に着く。

魅李は玄関前で幸薄そうな表情で笑う。


「縁助君、また私何も出来ずにやられちゃったね…」

「あー、まあ、うん。」


彼女はまた後ろ向きな発言をする。

しかし不思議と彼女の表情はそこまで悲観的じゃない。


「何度も言うけど、本当にありがとう!皆!」


魅李は俺含め皆に頭を下げる。


「私、今回は皆に助けられてばかりで何も出来なかった…、皆のおかげで本当に助かりました!今度何かあったら私に言ってね!絶対協力するから!」


魅李のその言葉に皆が皆、璃々含めて満更でもない顔をしている。

きょとんとしているのは俺の家族だけだ。

ターゲットの一つだったが終始蚊帳の外だったからな。


「なあ、協力って何してくれんのかな?オナサポとか?」

「馬鹿!使用済み下着くれるぐらいに決まってんだろ?中里さんは清純派だぞ?」


なにやら盛り上がっている馬鹿共を無視して魅李に再度話しかける。


「魅李ちゃん、前向きになったね。」

「…うん、今回も助けられた私が言うのも何だけど正直あんな警察使ってくる犯罪者に対抗するのは私1人がどんだけ強くても無理だったと思う。」


彼女は申し訳なさそうに笑いつつもしっかりと俺の目を見る。

いつもの力強い意志を感じる目で。


「だから私、やっぱり人を大事にする事にする!」

「…今までしてなかったの?」

「もう!茶々入れないで!もっとって事!」


話に入ってくる純一に憤る魅李。


「私は私に出来る事で皆の役に立ってそして私も皆に助けてもらう!」


彼女は後ろめたさもなくそう宣言をして俺を見る。


「そうすれば縁助君の負担も減るでしょ?」

「友達を助けるのを負担なんて思ってないけどね。」


しかし彼女の言う通りだ。


今回俺は璃々の手を借り、愛陰会の手を借り、そして魅李の父親と純一が魅李を助けた。


それも全て彼女が愛されてるからだ。


そんな彼女はゲームでは純一との純愛ルートでしかその面影を残さない。


「魅李ちゃん。取り敢えず今度さ皆でピクニックにでも行かない?早速協力してよお弁当作り。」

「えっ?………うん!とびっきり美味しいの作るから期待してて!」


酷い目に、怖い目にあったのに気丈に笑う彼女の魅力的な顔を見て、俺はそれだけで今日の苦労が報われた気になった。


彼女の笑顔はゲームで見たより、そしてこの世界で見たなによりとても魅力的だった。


「先輩、2人で行く約束では!?」


あ、すまん璃々。

2人で行くのはまた今度だ。

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