第23話

「取り敢えず愛陰会の皆で街中のパトカーを探してます。でも、すみません先輩。みんなが下半身露出しているせいで普通に私たちを捕まえようとする警察も出てきました。」

「分かったありがとう璃々。後連中には無理をしない事とズボンを履く様に言っておいてくれ、風邪引くぞ」


璃々に礼を言って通話を切る。


璃々が愛陰会を使って美咲達を保護してくれた。

しかし結局警察はゴリ豚の手先で魅李の家には誰もいなかった様だ。


かなりまずい状況だ。


取り敢えず幸いにも美咲と璃々は問題ない。

なら俺もゴリ豚の捜索に加わるべきだろう。

100人ちょっとの愛陰会が街中を探してくれているが璃々の話では普通の警官も俺達の対応に当たり始めたらしい。

どさくさに逃げられる可能性が高い。

ゴリ豚もこの異常事態に流石に気付いているだろう。

愛陰会のグループチャットには多くの報告が上がっている。

しかしゴリ豚や魅李を乗せたパトカーは見つかっていない。

時間が掛かると普通の警察に愛陰会が制圧されて終わる。

早く見つけなければいけない。


「おい!そこのお前!」


路地で止まって考えているとライトを向けられて怒鳴られる。

男の警官だ。


「お前も露出狂集団の仲間だな!お前ら何考えているんだ!」


そんな事俺が知りたい。

何であいつら下半身露出してるんだ。


俺がフルチンなのは深い事情が故だが。


警官が近づいてくる。


くそっ、めんどくさいな。


警察に腕力で俺が勝てるわけないので逃げる以外の選択肢はない。


しかし俺が逃走を始める前に別の警官が現れた。

今度は女の警官だ。

男の警官は彼女を見て驚く。


「佐竹?お前今日休みじゃあ…」

「田中くん、彼は私が拘束するから君は他の場所の対処を。」

「えっ?いや、取り敢えず俺が拘束するから。」


この女はゴリ豚に堕とされてそうだな。

俺のチンコを見て鼻で笑いやがった。


くそが、あのクソ野郎どんだけの女を堕としてきたんだ。

かなり入念に準備をしてきた事が分かる。


しかし、そうだな。

入念に準備された作戦に対抗するには内部から切り崩すのが1番効果的だろう。


「猿渡縁助。大人しくついてきなさい。」


女警官がそういって拳銃を抜いて俺の方へ向ける。

おいおいマジかこいつ。

男性警官も驚愕して彼女の手を強引に下げさせる。


「お前何やってんだ!ただの露出狂に!」

「邪魔しないで田中くん。威嚇しているだけよ」


まともな警官は敵であり味方だな。

俺は2人が言い争っている内にポケットから錠剤を取り出して飲み込む。


以前味わった意識が飛ぶほどの快楽が全身を駆け巡る。

快感以外の情報が全てシャットアウトする。

五感は全て性感を感じるための物へと堕ちる。

まるで全身で世界とSEXしている感覚だ。


何を言ってるんだ俺は。


「うぉおおおおおおああああ!!!」


快楽を己の肉体の内に留めておく事が出来ずシャウトする。


言い争っていた2人がびっくりしてこちらに注目をした。


1回目よりは効きが弱くなっている気がするがえげつない快感だ。

こんな短期間で摂取を繰り返したら確実に中毒になる。

だが今は気張る時だ。

薬に頼るのは今回で最後だ。

最後にしてやる。


「な…、急に叫んでどうしたんだ?」

「あ、ああ…そ、そんな馬鹿な。」


男の警官は怯えを見せた表情で俺を見る。

女性警官も恐怖、いや畏怖の表情でこちらを見ている。


寒さによって縮こまっていた俺のマイサンは薬蔵印のドーピング剤(媚薬)によって元気を取り戻していた。


「へ、変態だ。」

「う、嘘よ。ご主人様よりお、大きいなんて。」

「ご主人様?」


俺は深夜に勃起したチンコを警察に見せつけるという変態としては新たなる境地の中に入った。


「佐竹よ…。」

「は、はい。」


俺は厳かに佐竹と呼ばれていた女性警官に声を掛ける。

彼女はそれに畏まった様子で返答する。

男性警官田中は何が何だか分からずに俺のマイサンと佐竹婦警の方に視線があっちゃこっちゃ彷徨っている。


「鬼頭はどこだ。」

「い、言えない。ご主人様に逆らったら…もうお情けを頂けなっちゃう。」

「愚か者が!よぉく見ろ!」


俺は両手を大きく広げながら彼女に近づいていく。


彼女の視線は俺の下半身に釘付けだ。


「俺ならばお前に奴以上の快楽を与えられる。証拠はこれだ。」


腰を一振り。

マイサンがそれに合わせて陽気に踊る。

佐竹婦警は即座に俺に傅いた。

彼女は咄嗟に身体が反応した様子で自分でも困惑している様だった。

ゴリ豚の調教の成果って奴か。

あいつやっぱり催眠おじさんなんじゃないか?


「あ、頭が痛くなってきた。これは現実なのか?」


田中警官は悪夢でうなされた様な顔で目の前の現実から逃げている。


俺も全く同じ気持ちだ。


早くこの冗談みたいな悪夢から醒めたい。


それには悪夢の主のゴリ豚を討伐する他ない。


俺のチンコで男根至上主義者達をこちらの味方にして敵戦力を削ぐ。

そしてゴリ豚を捕捉して奴から魅李を取り戻す。

馬鹿馬鹿しい話だ。

設定だ。


こんな下らない話に付き合うのは今回が最後だ。


そして俺はこの事態が収束するまで下半身を露出し常に勃起し続けなければいけないことが確定した。


本当にこんな事は今回が最後にしたいものだ。


ーーーーーーーーーー

〈鬼頭視点〉

クソッ!どうなってやがる!

俺は苛立ちを抑えられずに叫びそうになるのを必死に我慢する。


パトカー走らす街中では目出し帽を被った下半身を露出した変態と追いかけっこをする警察が背景となっている。


何なんだこの異常事態は!


この混乱の中あの中古オナホの家と猿渡の家に向かわせた雌ブタ共と連絡が取れない。

更に病院で猿渡を拘束させている豚共とも連絡が取れなくなった。


車内ではこの事態の状況を無線が伝えてくれている。


【◯◯交差点にて露出狂集団が通る車を追いかけてます!】

【こっちもだ!なんであの変態共は俺らに追われながら検問まがいの事をやってんだ!】

【知るか知るか!全員しょっぴけ!】

【パトカーを無断使用している者がいるのもどういう事だ!◯◯番と◯◯番の車を使っているのは誰だ!】

【後◯◯番もだ!何がどうなってんだ全く!】


変態共は俺の支配下の警察以外の警察を週末の深夜に誘き出した。


折角時間をかけて警察内に俺の信者を作って作戦を練ったのに台無しだ!


俺の脳裏には奴の顔が出てくる。


猿渡縁助。


俺の邪魔をし俺のチンコを折って豚箱にぶち込みやがったクソガキだ。


絶対に奴によってこの事態は起こされている。


2年前の様に俺の邪魔をとことんする気の様だ。


だが、問題ない。


俺は内心焦りながらもニヤける。


良いだろう。

今回は痛みわけだ。


俺は後部座席を見る。

そこには俺が初めて狙った獲物を墜とし損ねたターゲットの魅李とその母親がいた。

2人とも薬によってぐっすり眠っている。

くっへへ。

分かったよ猿渡。

今回はこいつらだけで我慢してやるよ。


だが代わりにこいつらは徹底的に堕としてエグい裏ビデオの出演者となって俺の資金稼ぎに使わせてもらうよ。


「おい、一旦街を離れるぞ。俺は一時身を隠す。」

「は、はい。ご主人様。」


この俺に付き従った豚共は確実に重い罰を受けるだろう。

だがこいつらに後悔はないはずだ。

代わりに至高の快楽を与えてやったのだからな。


女は男に服従する為の生き物だ。

人間は理性があるフリをして賢いと呼ばれている連中ほど性を忌避するが全く馬鹿馬鹿しい。


人間も動物だ。

動物の目的は繁殖でその為のSEX、快楽は最も尊重されるものだ。


だが馬鹿共は結婚だの、法律だので生物の本懐を制限してきた。

俺の様な強い男が全ての女を従え、女は俺に奉仕し佐藤や猿渡の様な不能共は隅でシコってれば良い。

それが本来の正しい世界だ。


事実、俺は捕まる前は満足はしてないものの学校内でその世界を作ってきた。


恋愛なんて掃き溜めのゴミの様な価値観でイチャつく女には俺という男を教えてやった。

教育実習生で憧れていた教師の様になりたいだのほざいていたメスは散々その身体を虐めた後に風俗に堕としてやった。

俺は正しいことをしてきた。

女共に奴らの役割を思い知らせてやった。


しかし猿渡。

あのクソガキが俺の世界を壊しやがった。

俺の生物としての力を奪いやがった。


奴には生まれてきた事を後悔する程の屈辱を与えてやる。


奴の周りの女を全て俺のモノにし、奴はどこかに監禁でもして一生俺と女共の情事を見せ続けてやろう。


俺は愉快そうに楽しく笑う。


やはりSEXの事を考えるのは気分が良い。


「おい!あの車!」


俺が車内でニタニタ笑っていると通りすがりの露出狂の変態に指を指された。


「おい!皆!あの車だ!中里さんがいたぞ!」

「え、どこだ!………何だあの不細工野郎!俺より不細工じゃねぇか、ふざけんな!」

「みんなぁ!こっちだぁ!」


変態の掛け声で警察と鬼ごっこしていた変態達がこちらに全速力で向かってくる。


こいつらやっぱり猿渡の命令で俺を探していたのか!


「おい!信号でいちいち止まらずこいつらを振り切れ!」

「は、はい!」


先程までは目立たぬ様に車を運転させてたがバレてしまった今はなりふり構わずにギアを上げさせる。


しかし街中にはどこにでも露出狂がいた。


猿渡の奴!あいつ何者なんだ!


これだけの露出狂を集めた猿渡に俺は正直な所恐怖を感じた。

流石、俺の野望を阻止した男だ。


「ご、ご主人様…」

「なんだ!無駄口叩いてないで奴らを振り切れ!」

「い、いえ。どこかで車を変えませんか?」


メス豚がメス豚にしては良い提案をした。


この車の情報は露出狂共で既に共有されている。

なら車を変えてこっちの車を囮として使ってその間にこの街を去る。

良い作戦だ。


「よし、それで行こう。良い案だ。お前は後で1日中抱いてやろう♡」

「あ、ありがとうございます!」


俺が褒めてやるとトロンとした顔で喜ぶメス豚。

これが本当の幸せを知った女の顔だ。

俺は女達の為にもここで終わるわけにはいかない。


近くにいた女と連絡を取り合い何とか露出狂共を一時振り切って車を路駐に止める。


しかし時間がない。


街中に溢れかえっている露出狂共はいずれ俺を捕捉する。


早く車を変えなければ。


幸いにも入れ替える車はすぐに来た。


俺は車を降りる。


「ご主人様!お待たせしました!」

「よし!こいつらも載せるぞ!」


俺は後部座席の扉を開けて魅李達を抱きかかえようとする。


瞬間。


横から衝撃。


「げぶらあああああ!!」


俺は車道をバウンドして吹っ飛んだ。


な、何が起きた。


全身に激痛が走る。


痛い

痛い

痛い


俺は霞む目で俺に当たってきた物体を見る。


パトカーだ。


だ、誰だ?

まさか猿渡?


あいつ俺を轢きやがったのか!?


ふ、ふざけやがってクソ殺人鬼が。


しかし俺の思考は間違っており座席から出てきたのは見知らぬ男だった。


いや、少し前に見たことがある。


あいつは魅李の父親だ!


遅れて助手席から佐藤純一が出てきた。


なんて奴らだ人を轢くなんて。

くそくそくそ!


俺はふらふらしながらも立ち上がる。

意外にも俺の体はまだ動く。

獄中で鍛えていたのが功を奏したのか分からないがまだ俺の体は動く!


魅李の父親は後部座席にいる自分の娘と妻の姿を見てホッとしたような顔をするとこちらに向かって歩いてくる。


奴の手には


拳銃があった。


お、俺を殺す気なのか!?


俺は信じられない気持ちだった。

なぜ俺が殺されなければいけない!


しかし事実奴は俺を躊躇いなく轢いて拳銃片手にこちらに向かってきている。


「ひ、ひぃああああ!!!」


俺は自分でも情けないと思う悲鳴をあげて必死にそいつから遠ざかろうとする。


想像していたよりは小さな破裂音がしたかと思うと俺の数メートル先の道に銃弾が着弾した。


本気だ。

本気で俺を銃殺する気だ。


そもそもあいつらの拘束を任せていた豚は何をしている!


油断している馬鹿共にスプレーを吹きかけて眠らせる事も出来ないのか!

そう激情を内心激らせる俺の目は魅李の父親のふくらはぎから何かが生えているのを写した。


ボールペンがその男の足には突き刺さっていた。


こ、こいつ正気か。


佐藤純一の足にも同じくボールペンが刺さっている。


俺はこの2人が完全に俺を殺す気だとこの時悟った。


逃げなければいけないが恐怖と痛みで身体が動かせない。


殺される。

殺される。


まだ全然満足していないのに

まだ女を抱き続けたいのにクソ共に逆恨みされて殺される。


「ご主人様逃げて!」

「つっ!邪魔だ!」


しかし幸運の女神は俺を見放さなかった。

メス豚がそいつに掴み掛かって邪魔をした。


いまだ!


俺は必死に体を動かしてその場を離れる。


「おいお前ぇええええ!戻ってこい!ぶっ殺すぞ!」


煮え滾る殺意が籠った怒声を後ろから浴びながら。

誰が殺されてたまるか。

覚えてろクソ野郎。

お前の娘も妻も本当の家畜以下の扱いにしてやる。


俺は脳内で奴の娘と妻に陵辱のかぎりを尽くす妄想をしてそれを気力としながら歩き続ける。


何故俺がこんな目に遭わなければいけない。

理不尽だ。

俺はお前らクズ男共が情けないから代わりに女共を正しく使っているだけなのに。


どいつもこいつもどいつもこいつも。


俺に女を差し出せ!

搾取させろ!


俺にはその資格がある!


俺は人気のない路地まで行って座り込む。


「はあ、はあ。」


幸い携帯は持っている。

俺には肉便器共が腐るほどいるんだ。

俺は適当な番号にかける


「ご主人様ですか!まずい状況です!露出狂達が減るどころか増えてきて…」

「そんなことはどうでも良い!俺のいる場所に今すぐ車をもってこい!」


御託を並べる豚の話を打ち切って場所を伝える。


「わ、分かりました。直ぐに動けるものをそちらに向かわせます。」


返事をせずに電話を切る。


ああ、クソが。

最悪な日だ。

本来なら猿渡の女共を全員寝取りつつ、猿渡を俺の雌豚共に寝取らせるダブルプレイで全員の絶望顔を見ながら快楽に堕としていたはずなのに。


現実は俺はドブの匂いがする路地に座り込んで1人だ。


だが俺は2年前。

マイソードを折られて絶望の淵に落とされても勃ち上がってきた。

次は必ずあの雌共を俺のモノにする。


暫く待つと路地の近くで車が止まる音がする。

こっそりと覗くとパトカーだった。

運転手は一度抱いたことがある奴だった。

つまり俺の肉便器だ。


俺はホッとしてそちらに向かおうとするが後ろから襟首を掴まれて後ろに倒される。


な、なんだ!


「よお、泥だらけでお似合いの格好にお似合いの場所じゃねえかゴリ豚」

「さ、猿渡ぃ……!」


あの日俺の世界を壊した破壊者がまた最後の最後に俺の前に立ちはだかった。


そいつは呻き声の様に名前を呼ぶ俺ににっこりと笑う。


「やり残した事をやりに来たんだろ?まだ帰るのには早いだろ。俺の用も全然終わってねぇんだよ。」


そして悪魔は嗜虐的に笑い俺を暗い路地の奥へと運んでいく。



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