第22話
〈璃々視点〉
暖かな陽気の中で縁助先輩が私の作ったサンドウィッチを口いっぱいに頬張っている。
飲み込むといつもの人を安心させる笑顔で美味しかったって言ってくれる。
地元にある大きな公園で私たちは大きな木の下で大きく口を開けて笑い合っている。
あはは
うふふ
そんな幸せな夢は唐突に終わりを告げた。
ーーーーーーーーー
玄関からドアを叩く音が聞こえる。
私はそれのせいで都合の良い夢から覚めてしまった。
寝ぼけ眼で取り敢えず携帯を見る。
時刻は午前1時半。
こんな時間に誰だ。
携帯の通知は沢山のメッセージが来ている事を教えてくれていた。
縁助先輩のものもある。
何かあったのだろうか。
もしかして外にいるのは先輩だろうか。
ドアを叩く音がまだ続いている。
「すみませぇん!中田さんご在宅ですか!警察です!」
えっ?警察!?
ドア前にいる人物は警察を名乗った。
私は驚いて取り敢えず携帯片手にドアの方へと音を立てないように向かう。
覗き穴から外を見る。
確かにそこには警官の格好をした女性がいた。
私は自分の思い当たる犯罪行為にいくつか考えを巡らせるがバレたものがあるとは思えなかった。
何よりこんな時間に唐突だ。
私は取り敢えず落ち着いてドアから離れて先輩のメッセージを見る。
電話が数回来ており、その後にメッセージがあった。
【璃々、お前の所に性犯罪者が向かってる。そいつはあのゴリ豚だ。愛陰会を既にお前の家に向かわせている。奴のターゲットは魅李、俺の家族、そしてお前だ。俺は一旦家に行ったら直ぐお前の家に行く。何かあれば直ぐに連絡しろ。】
ゴリ豚
私はその名前を見て一瞬にして体から力が抜けそうになる。
あの男が外に…?
どうやって?
先輩はあいつが40年は外に出れないと言っていたはずだ。
私はドアから離れて寝室に戻り先輩に電話する。
「璃々!メッセージは見たか!?」
「はい、見ました…」
先輩は直ぐに通話に出た。
私は彼に外の警察に聞こえないように小声で返答する。
先輩は外にいるようだ。
息が荒く走っていることがわかる。
「メッセージの通りゴリ豚がお前らの所に向かっている!取り敢えずあいつらをお前の家の近くに行かせてるが、何か異常はないか?」
「それが、その、私の家に警察が来ていて…」
「警察…?」
電話口の先輩が無言となる。
何か考えているようだ。
「その警察は女か?」
「え?ええ、女性ですね。」
「………璃々、正直あまり信じられない話なんだが…。」
先輩は警察が女性である事を知ると更に考え込んだかと思うと重々しく会話を再開した。
「普通に考えたら魅李ちゃんが通報した警察がターゲットにされた璃々を保護しに来ているって事になるけど…」
確かに先輩の言う通りそれで警察が来ている事には納得がいく。
しかし先輩は別の可能性に思い至っている様だ。
「そもそも俺はゴリ豚がどうやってこの時間にお前らを襲うつもりなのかが分からなかった。強盗の様に押し入るつもりだったのか?流石に住宅地で何件もそんな動きをすれば通報されて警察に捕まるだろう。」
「つまり、先輩は今私の家に来ている警察がゴリ豚が用意した私を外に誘き出す為の餌だって言いたいんですか?」
しかしと、私はカーテンの隙間から外を伺う。
「でも私の家の前にマジのパトカーが止まってます。後、さっき覗き穴から見ましたけど本物の警察の格好でしたよ。」
「それでも、だ。」
つまり先輩の話だと本物の警察が奴に協力していることになる。
「俺はさっき入院している病院で看護師に襲われた。」
「はい!?ど、どういうことですか!?」
「中田さん!いらっしゃるんですか!」
あっ、しまった。
私の、いや私が大好きな先輩が他の女に襲われたと聞いて思わずシャウトしてしまい外の警官に私がいる事を知られてしまった。
「とにかく、あいつは女を脅して看護師だろうが警察だろうが支配している可能性が高い。」
「そんな、無茶苦茶な…」
それが本当だとするととんでもない事だ。
ただの性犯罪者が警察組織を意のままに操るなんて。
「とにかく、璃々。お前は俺がつくまで家に篭ってろ。」
「いえ、もう私が在宅しているのを向こうに知られてしまいました…、それに…」
警察がゴリ豚の為に動いているとすると魅李先輩達も危ない。
私は先輩からその可能性を指摘されたので警戒する事が出来るが普通は警察を怪しんだりなどしない。
何せ相手は本物の警察なのだから。
「先輩、私が外に出て先輩の考えが正しいのか確かめます。」
「いや、ちょっと待て!危険だ!」
「魅李先輩の方が危険です!…それに近くに皆いるんですよね。私なら平気です。」
「お前…」
もし先輩の悪い想像通りであるならば私は家に引きこもっていられない。
魅李先輩。
それに美咲ちゃん。
私が傷付けた人達を助けて、そして先輩の負担を減らしたい。
これは贖罪ではなく、私が私として前向きに行動を決めた気持ちだ。結果だ。
「頼んだ、璃々。ただ無理すんなよ」
「任せてください!先輩の璃々にお任せです!」
ーーーーーーーーー
私が玄関のドアを開けると私をずっと呼んでいた警官がほっとした顔をした。
「良かった!警察の高岡です!」
そう言って彼女は警察手帳を見せてくる。
本物に見える。
彼女は焦った様子で私に説明を始めた。
「実はレ◯プ魔が脱獄してこの辺りに潜伏しているんです。そしてその犯人のターゲットに中田さんがいまして、警察で保護する為に参りました。」
「は、はぁ。そうなんですか。」
内容は予想がついたものでただ重要なのは彼女がクロかシロかである。
どうやって確認しよう。
取り敢えずこの提案を拒否しよう。
「わざわざありがとうございます。でも私なら大丈夫ですので…」
「えっ!?いや、犯罪者があなたを襲いに来るんですよ?早く警察署に行きましょう」
「いや、でもこんな遅い時間ですし…」
「遅い時間だから危ないんですよ!良いから行きましょう。」
彼女は同行を拒否する私の手首を掴んでくる。
強引だ。
やはり怪しいか?
車の中まで誘導されそうになるが高岡さんの肩を掴んでそれを止める人物が現れた。
「璃々たそに何してるんだ!」
「な、何?誰ですか?」
愛陰会の幹部のシバちゃんだ。
構成員達に私は警察に強引に何かされそうだったら間に入ってもらうように事前にメッセージで伝えていた。
「俺は璃々たその下僕だ!」
普通に友人とかって言って欲しい。
誇らしげに奴隷宣言をしたシバちゃんに引いた様子を見せる高岡さん。
「えーっと、中田さんのご友人?申し訳ないけど彼女は今危険な状況なの。構ってる暇はないから離してくれないかしら?」
「…断る!」
「はい?」
「彼女なら俺達で守る!バビロン共の手は借りん!」
「俺…達?」
「集っ!」
シバちゃんの号令によって隠れていた愛陰会の皆が集まってくる。
「な、中田さん。彼ら何なの?」
「えーっと。友人です。」
30人ほど急に物陰から現れた事に高岡さんは引いた様子だ。
私は彼女の握力が弱くなったタイミングで私の手首を掴んだ彼女の手を外す。
「あっ…」
「高岡さん、私は彼らに守ってもらうから大丈夫ですので…」
「いや、しかし…」
シバちゃんが私と警察官の前に身体を入れる。
「そういう事だ、去れ!国家権力の犬が!」
最近ダークヒーローもののアニメにハマってるシバちゃんが勇ましく警察に吠える。
「………いえ、彼女は警察で保護します。どきなさい。」
高岡さんは苛立った様子で懐から手錠を取り出した。
「公務執行妨害で捕まりたいの?貴方達まだ高校生でしょ?親御さんはどうしてるのかな?」
高岡さんが国家権力の力をいかんなく示すと愛陰会の子達は皆少したじろいだ。
愛陰会の構成員は殆どが普通の高校生だ。
警察に逆らうなんて大それたことは出来ない。
シバちゃんも言葉が詰まって何も言えなくなっている。
現実はアニメの様には行かないものだ。
「シバ…」
「マル…」
そんな様子に幹部のマルくんが近づいてきてシバちゃんの肩を叩く。
「俺ら、決めたはずだろ?元締めの事を次は絶対信じるって…」
「シバ………、ああそうだったな。」
数秒彼らは見つめ合うと私と警察の間に改めてたった。
「あのね、あなた達に構ってる暇はないの。本当に捕まりたいの?」
「うるせぇ!これを見ろ!」
うんざりした様子の高岡さんに対して2人はおもむろに下半身を一気に露出した。
「は?あなた達何をやって?」
「璃々たそを連れてくなら俺らも連れてけ!捕まえるものなら捕まえて見せろ!」
人生捨てにかかってるぐらいの気合いを見せて警察に反抗する幹部2人の様子に他の構成員達も感化された様な顔になった。
「はあ…、良い加減にしなさい。時間の無駄よ。中田さん、行きましょう?」
高岡さんは彼らと話すのは埒が開かないと思ったのか私の方に再度呼びかける。
「あの…、捕まえないんですか?」
「えっ?」
私の疑問に高岡さんは虚をつかれた顔をし、幹部2人は切り捨てられた!?と驚いた顔になった。
「いや、露出狂ですよ?捕まえないんですか?警察ですよね。」
「…子供のイタズラに構ってる暇はないの。あなた本当に危ない状況なのよ?」
「それでも応援を呼んで対応するとか出来ますよね。お姉さん1人で来てるんですか?」
高尾さんは露出狂2人を無視してあくまで私を車両に乗せる事を優先した。
それは私の安全を優先したとも取れるが…
「警察は2人1組が基本だ。」
「なっ、ゔ!」
私の疑問にたじろいでいた高岡さんに急接近した誰かが彼女の腹を殴る。
「し、志島!」
「いつまでこんな奴に構ってるんですか。元締めの方に助けに向かわないと」
志島くんはお腹を抑えて疼くまる高岡さんを蹴り飛ばす。
よ、容赦ない。
「し、志島くん。やり過ぎじゃあ…」
「君が言った通り彼女はかなり怪しい。僕は元締めの話とこいつへの疑問点から敵と認定した。」
志島くんは冷めた顔で私を見る。
彼は私に対して思うところがある様で他の構成員とは違い仲はよろしくない。
「それとも元締め補佐ともあろうものが元締めの言葉を疑うんですか?」
「…疑ってないし、最初から彼女に従う気なんて無かったから」
私は痛みでまだ動けない様子の高岡さんに近づく。
「あなたゴリ豚の手下ですよねぇ〜?魅李先輩達にもこうやってしてるんですかぁ〜?」
「ぐ、ぐぅ…、何をするの…あなた達本当に人生が台無しになるわよ。」
「私の質問に答えてもらって良いですかぁ〜?」
私はスタンガンを取り出すと高岡さんの髪の毛を掴んで彼女の顔にそれを近づける。
「ひっ!」
「分かってると思いますけど今更冗談でやってないですよぉ〜?聞かれたことだけに答えてください。ゴリ豚の命令で私の家に来たんですか?魅李先輩はどうしてるんですか?」
「し、知らない。やめなさい。あなた達本当に自分が何をしているか分かってるの?」
「璃々たん!」
私が尋問をしていると後ろから構成員の子が声をかけてくる。
「そいつのパトカーにこんなものが!」
彼が高らかに掲げたのは縄と液体が入った小さなスプレーだった。
「それ、何ですかぁ?」
「し、知らない。」
「これクロロホルムだよ!嗅いだことがある!」
彼が何故クロロホルムの匂いを知っているかは置いといてそれらは明らかに警察が持つのには似つかわしくないものだ。
「それで何をする気だったんですかぁ。」
「…」
何も言えず黙る警察。
私はスタンガンを更に近づける。
しかし彼女は髪の毛が千切れることも厭わずに自分の身体を後ろに倒してトランシーバーを掴む。
「高岡です!ターゲットの中田璃々にバレました!応援を…」
「はい」
私は彼女の首にスタンガンを押し付ける。
感電した彼女はすぐに気絶した。
私は立ち上がって皆を見渡す。
「どうやら先輩の言う通り警察を手下にした性犯罪者が璃々達を狙ってるみたいですねえ〜。」
幹部2人と志島くん、他数名はそれがどうしたって顔をしているが殆どの構成員は困惑した様子だ。
それはそうだろう。
彼らが間違っているにしても国家権力に逆らうなど普通の人間は考えられない。
元締めの言う通りに従っていて全てが終わった時に自分が逮捕されないのか考えるのが普通だ。
「志島!どこに行くんだ!」
「元締めの家に行きます。美咲さんを守りに行きます。こんな所で待っている時間はないんでね」
その様子に志島くんはため息をつくとこの場を去ろうとする。
「ちょ、ちょっと皆見てくれよ!」
先程パトカーからクロロホルムを見つけてきた構成員が今度は携帯を掲げて画面をこちらに向けていた。
そこには動画が写っていた。
「この警察の写真撮って趣味のグループに投稿しようとしたら友達からメッセージが来てて…、これって元締めだよな?」
彼が昏倒した女性警官の写真をどのような趣味のグループと共有しようとしたかはともかく確かにそこに写っているのは先輩だった。
動画の先輩は自転車で街中を疾走していた。
フルチンで
「なんかSNSでこの動画が拡散されてるらしい」
「本当だ…」
私も自分の携帯で見てみると
【居酒屋出たら変態がいた件www】
という文章と共に先輩の動画が拡散されていた。
事情があるんだろうけど相変わらず私の愛しの先輩はイカれている。
私はそう考えていたのだがその動画を見た皆は1人、また1人と先輩の様に下半身を露出し出した。
泣きながら。
こいつらもイカれている。
彼らは先輩が集めた超弩級の変態達である。
彼らの論理が私には理解出来ない。
ただただ異様な光景だ。
しかし数人は私と同じ感性があるのかいまだに困惑した様子だ。
「お、お前ら急にどうしたんだよ?」
「どうした?…まだ分からんのか貴様らぁ!」
疑問を口にする構成員を叱責するシバちゃん。
私にも教えて欲しい。
なぜ彼らが急に泣きながら下半身を露出したのか。
「元締めは…、覚悟を決めているのだ!下半身を露出する事で警察になんて鼻から対抗する気だと!我々に道を示したのだ!」
絶対に違うと思う。
「我々の目的は何だ!」
「えっ…そりゃ幸せそうなカップルの邪魔をする事ですよね?」
「えっ?俺は童貞卒業出来るって元締めに言われて入ったんだけど」
「俺は裏ビデオの視聴会が出来るって聞いて…」
各々が色々な目的を語る。
先輩もよくこれだけの変態を2年で集めたものだ。
「そうだ!その通りだ!」
シバちゃんはどれに同意したのだろうか、力強く彼らの言葉を肯定する。
「我々は負の感情で性と向き合ってきた!決して大通りで幸せを堪能した様な面で歩いているカップル共の様にはなれない咎を背負っている!」
深夜の大演説は周囲の住民を起こしてしまい窓から何人か顔を出している。
下半身丸出しの男達を見て覗いた住民はギョッとした顔をする。
しかしシバちゃんは彼らを気にせずに話を続ける。
「しかし、どれだけ異性に嫌われようと!馬鹿にされようと!我々だって彼女欲しい!SEXしたい!なんか、こう…こんな感じの性玩具とか使ってみたい!しかし我々には事実女性がいない!何故だ!」
シバちゃんは腕を大きく振り上げる。
「イケメン共が卑怯な手を使って女性を独占しているからだ!」
違うと思う。
「あいつらは更にこれが格好良いとか格好悪いとかを勝手に決めて我々の様な男達を公衆の面前で馬鹿にする!他人を下げて自分の評判を上げるクソ野郎共だ!」
彼の目には涙が浮かんでいた。
そういえば先輩が愛陰会でぶっちぎりでイカれているのはシバちゃんだと言っていた気がする。
確かに私達が起こした大事件には必ず彼がいた気がする。
「尚且つ今回!女性を使って我々のアイドルである璃々たんと中里さんを手籠にしようとすらしている!そしてそれに我々が反抗すると犯罪だと?ふざけるな!」
彼は勘違いしている
ゴリ豚はイケメンじゃないしただの性犯罪者だ。
「それが正義、それが正しい光の道だと言うなら我々は陰の道を行くだけだ!………道は元締めが示している。」
シバちゃんはポッケから目出し帽を取り出して被る。
「我々は今宵イケメンに占有された女達を解放する。保護対象は女性警官と我らの三女神。抹殺対象はゴリ豚とか言う璃々たそと中里さん。後美咲様を狙っているイケメン野郎だ。」
先程まで困惑していた構成員の顔にも最早迷いはない。
何故かスッキリした顔で同じく目出し帽を取り出す。
「正直このイカれ野郎何言ってんだって思ったけど確かに女を自慢気に連れ回す友人にムカついて愛陰会に入ったんだ俺。」
「我々が童貞なのはどう考えてもイケメンが悪い。」
「富の再配分が出来ていない事を政府はもっと重要視するべき」
「我々にはトリクルダウンすらしてこないのはどう言う事だ。」
「えー、ヤンキーの中古女なんかこっちから願い下げだろ。」
「お前死ねよ。」
それぞれがイカれた思想を撒き散らしながら下半身を露出し目出し帽を被りだす。
シバちゃんはその様子を満足そうに眺める。
「我々には元締めが着いている。我々が問題を起こしてもいつも元締めが何とかしてくれた。だから今回も大丈夫だ」
そして責任をトップの先輩にさりげなくふって私の方を向く。
「さあ璃々たそ!我々に命令を!」
私は蚊帳の外にいたと思ったがそういえば私はこのイカれた組織のNo.2だった。
「えーっとぉ、多分ゴリ豚は魅李先輩の家に同じ様な方法で警察を仕向けてる筈です。取り敢えず魅李先輩の家に行ってください。それと街中走ってるパトカーも確認してくださいねぇ。女性警官だけだったらそれはおそらくゴリ豚の手先です。」
私は出来るだけ落ち着いて彼らに命令をする。
まず魅李先輩の保護を命令しよう。
「後、先輩の家にもすぐに行きましょう。ここから近いですし志島くん含め数名で行って先輩の家族を保護します。どちらかの家、もしくは両方が既にもぬけの殻の可能性も高いのでここにいない残りの子達には街中で先にパトカーを探してもらいましょうか」
「御意っ!」
数十名の厳選された変態達が私の命令に従って街に散らばる。
権力者の気分を味わって体がゾクゾクする。
後とんでもない事をやらかす事になったと胃が痛くなる。
「ふん、流石元締め補佐って所かな。でも油断しない事だね。その場所は僕のものだ。」
「志島くん…」
私ほとんど何もやってないけど。
「取り敢えず私たちは美咲ちゃんの家に向かいましょう。」
先輩任せてください。
変態の舵取りをして先輩の大切な人達を私が守ります。
週末の深夜。
愛陰会と警察の大戦争の火蓋を私は切って落とした。
ーーーーーーーーー
〈美咲視点〉
お母さんの呼ぶ声で私は寝室からリビングの方へ降りて行った。
「美咲!縁助から連絡が来てたでしょ?」
「んんぅ?そうなの?起きたばっかで見てないけど」
私は携帯を取り出して見る。
確かに兄貴から着信履歴とメッセージが来ていた。
最新のメッセージを見る。
5分前のものだ。
【美咲、家に性犯罪者が向かっている。警察がその犯罪者の仲間で下半身露出した目出し帽被ってる方が味方だ。俺も向かっているから家から出ずに待ってろ。】
内容を把握するのに数分を要した。
兄貴は何を言っているのだろう。
メッセージの内容の意味が一切分からない。
書き間違いだろうか。
性犯罪者が理由は分からないけど私達の家に向かっている事はわかった。
そしてその性犯罪者はなんと仲間がいて複数犯らしい。
そしてその仲間は警察官。
だが有難い事に私達の味方もいるらしい。
それは目出し帽の露出狂らしい。
書き間違いだろうか?
外からサイレンの音がする。
私は窓から様子を伺う。
誰かの言い争う声が聞こえる。
「ここは通さんぞ!」
「どきなさい!あなたのせいでご主人様からご褒美貰えなかったらどうしてくれるの!」
「下半身を露出した集団が街で徘徊している!応援頼む!」
そこには目出し帽を被った変態達と警察と対峙していた。
兄貴…、本当にあっちが味方でいいんだよね?
私はかつてないほどに兄貴を疑った。
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