リリー・イン・ザ・ナイトメア(璃々視点)
先輩遅いな・・・
私は自室のベッドの上で携帯片手に項垂れていた。
駅で別れたのが午後5時半頃。先輩の家は駅から10分掛からないぐらい。
夕食を食べてから来るって言ってたっけ。
今日の夕食は先輩が作るって言ってたな。じゃあ帰る前にスーパーに寄ってたとして買い物は大目に見積もって30分掛かったとして家に着くのは午後6時頃かな。
そこから料理してごはん食べたら7時半ごろには家を出れるはずだ。
現在時刻は8時半。
私の家は先輩の家から15分も掛からないぐらいの場所にある。
遅いな。先輩ごはん食べたらすぐ来るって言ってたのにな。
再度先輩の携帯に電話を掛ける。
1コール目、2コール目・・・7コール目。
遅い。
電話も出ない。
私は不安といらつきで爪を強く噛んでしまう。
悪い癖だ。でもやめられない。
馬鹿みたいに鬼電するのも、勝手に先輩の行動を想像して想像通りいかなくてイライラするのも悪い癖だ。でもやめられない。
大丈夫。大丈夫だ。
先輩は私を決して裏切らない。私は先輩の一番なんだ。
私が先輩の初めての人なんだ。
不安になる必要はない。ただ、今日は魅李先輩と久しぶりに会ったからおかしくなっているだけだ。
あの人と久しぶりに話した所為か精神的にかなり疲弊した。
不安を解消するには先輩と交わるのが一番良い。
一つ年上の先輩をデリヘルの様に扱っている事に暗い愉悦が内から湧き上がる。
しかも無料だ。
先輩との関係は2年前の中学2年生の冬から始まった。
あの地獄から解放されたあの時から。
ゴリ豚。私が入部していたバスケ部の顧問の男性教諭だ。
見た目はあだ名の通り醜く、友達とよく奴の容姿を裏で笑いのネタにしたものだ。
しかし、内面は外見が可愛く見える程更に醜かった。
3年の先輩達が引退して暫くたった頃に私は奴に呼び出された。
「なん、です、か。これ。」
「見て、分かんねーのか?お前はプレーも遅けりゃ頭の回転も遅いのか?」
見せられた映像にはゴリ豚が魅李先輩の身体をまさぐる光景が写っていた。
「見ての通り魅李は俺の言いなりなんだよ。あの女をこれから調教するのが楽しみだ。」
そう言って奴は下卑た顔で笑った。
ゴリ豚は困惑して黙り込む私を他所に下卑た妄想を垂れ流し続ける。
「とりあえず無理やり処女を奪ってやって一晩中犯し続けてやる。その次はあのデカパイの使い方を教えてやって。調教が済んだら一晩10万で貸し出しをしてみてもいいなぁ~」
なんだこの生き物は。なぜ仮にも教師ともあろうものが未成年の教え子に対してここまで最低になれるのだろう。
「や、やめてください・・・」
私は弱弱しい声でゴリ豚を止めようとした。
それに奴はにんまりとした笑みとなった。
「そうかそうか、そうだったな。お前は魅李の事を慕ってたもんなぁ~」
あいつが私にこの映像を見せた意図はこの時点で理解した。
この次に言う言葉も予想がついた。
「お前が魅李の変わりに俺のいいなりになるならあいつには手を出さないでやるよ」
私は予想通りのゴリ豚の言葉に間をおかずに了承した。
「分かりました。だから魅李先輩には手を出さないで下さい。」
その迷いのない回答にゴリ豚はさすがに虚を突かれたのか驚いた表情をしていたが
私の期待通りの回答に下卑た笑みをより一層濃くした。
「よく言ったぞ璃々!先生がいつも教えているチームワークの精神をよく理解しているな。」
私の肩を抱く糞野郎。
「補欠のお前はチームの為に先生の肉便器としてがんばれ♡」
そうして私の部活での努力を嘲笑った後に私は雑にこの男に犯されて処女を散らした。
私が痛みで泣き叫べば叫ぶ程奴は興奮して動きを早くした。
奴は私の身体を2時間程楽しんだ後、倒れ伏す私に部屋を片付ける様に言い含めて去っていった。
身体が痛い。あんなゴミに私は汚された。
荒れ狂う感情の中でしかし私は満足感を感じていた。
あのゴミとのセックスが気持ちよかったからではない。
魅李先輩の役に立てたと私はこの時無邪気に思っていたのだ。
決してそんなことはなかったのに。
魅李先輩に対しては今も憧れている。
家に居場所がなかった私は練習が厳しくて遅い時間まで練習をしていてお金の余りかからないバスケ部に入部した。
バスケ部で出会った魅李先輩は部活内で孤立しがちだった私を気にかけてくれて教室では友達が作れていなかった私に同級生の友達を作る切っ掛けをくれた。
そしてバスケ部の試合の時に時間の関係で昼ご飯を学内で食べる機会があった。
その時に私が他の部員たちがお弁当を食べている中でコンビニで買ったパンを食べているのを見た彼女は次の時に私の分の弁当を作ってくれた。
呆然とする私に対して作りすぎちゃったから貰ってほしいと照れ笑いしながら。
その日から私は先輩について回る様になった。
正直鬱陶しいぐらいだったと思うが彼女は私を決して拒絶しなかった。
家でも、学校でも居場所がない私に魅李先輩は生きる意味を与えてくれた。
大げさではなく私はそう思っていた。
先輩は無価値な私と違って幸せに生きるべきだ。
その為に犠牲になるのなら私の人生にもきっと価値があった事になる。
朝起きてリビングのテーブルの上にある500円玉を取って学校へと向かう。
朝ごはんは食べない。用意されていないし一度私が食材を使ったら余計なことをするなと父親に殴られた事がある。
途中のコンビニでパンを買う。
学校につく。
空き教室へと向かう。
ゴリ豚に口を犯される。
授業を受ける。
昼休み。教室を出て人気のない男子トイレに入る。
ゴリ豚に手でやるように言われる。
私のパンに奴の液体を掛けられた。
食べる気のなくなったそれを奴は私の口に無理やり詰め込む。
午後の授業を受ける。
放課後、バスケ部の練習。
7時をまわりそうになるまで練習をする。
帰る前にゴリ豚に呼び出される。
犯される。
9時に家につく。
両親の話声がリビングから聞こえる。
この時間に帰った私に何も言うことはない。
既に両親は夕食を食べ終わっておりテーブルの上にあったごはんと納豆パック。そして缶詰を一人食べる。
10時就寝。
この日々は2か月続いた。
大丈夫だ。なんてことはない。ゴリ豚に犯されることが私の日々に追加されただけだ。耐える。耐えて魅李先輩の役に立つんだ。
初めは痛かったが私の身体も慣れてきた。
しかしゴリ豚曰く私の身体は不感症らしく濡れるまもなく挿入されるので結局痛いものは痛かった。
あいつは私が感じてないと思うとムキになって長く犯すので感じているフリをする様にした。
そしてこの日々は突然終わる。
「・・・はい?」
私は急に連れられた警察署の中で女性警官から聞いた話をすぐには飲み込めなかった。
ゴリ豚は捕まった。
名前は伏せられていたが私以外の女生徒が襲われそうになった所を捕まったと。
魅李先輩の事だと思った。
あいつは約束を守らなかったのだ。
頭がぐるぐる回る。夢の中にいる様だ。
取り調べが終わり私は1人部屋を出る。
話し声がどこかから聞こえる。
私は女性警官に座って待っている様に言われていたがそちらに歩いて行った。
魅李先輩がいた。
彼女の家族や佐藤先輩に囲まれていた彼女は泣いていた。
私は魅李先輩を守れていなかったのだとその時やっと悟った。
そしてそんな彼女を抱きしめて慰めの言葉をかける彼女の父親と母親を見て私はふと思った。
あれ?私って魅李先輩のなんだっけ?
彼女の周りには彼女に愛情を注ぐ家族がおり親密な男の子もいる。そして友達も数多くいる。
ぼんやりその光景を眺めていると彼らに近づく別の集団が現れた。
あれは、猿渡先輩。魅李先輩と仲の良い人だ。
彼が魅李先輩に近づいて行く。
「魅李ちゃんがあいつを嵌めて、強力な証拠を残してくれたおかげで逮捕出来たんだから大手柄だよぉ〜!」
「あいつ…魅李ちゃんが初めてじゃなかったみたい。余罪があってさ、脅されていた女性が何人もいたんだって。」
「だから魅李ちゃんは大勢の女性を救ったんだよ。自分も辛かっただろうによく頑張ったね。」
………。
猿渡先輩が言った言葉に涙を流す先輩。
その光景を離れた場所から私は眺める。
私を探していたであろう女性警官に後ろから声をかけられる。
「ここにいたのね。…あの、あなたの両親だけど、迎えにくるのが少し遅れるみたいなの…。部屋で待ってましょうか。」
「…いえ、仕事が忙しくて来れないんですよね。分かってますよ。大丈夫です。1人で帰れますから。」
私に気を遣って両親の言葉を優しく変換して伝える女性警官に私は無機質な声で返答する。
それに苦しそうな顔をする彼女。
とても優しい人なのだろう。
魅李先輩の様に。
送っていくという彼女に断り私は1人帰路へと着いた。
私は頭の中に自分の中で分かっていながら目を逸らしていた事について考えを巡らせていた。
魅李先輩には優しい家族がいて、仲の良い男の子もいて友達も沢山いる。そして大勢の人に慕われている。
当たり前だ。彼女は優しく容姿も良くて頭も良いのだから。
慕われて当然。
私が彼女を慕っていた様に。
尚且つ彼女は強い。私がただ従うだけだったあのゴリ豚に反抗して奴を捕まえたのだから。
対して私には何もない。
父親も母親も、子供がこんな目にあったっていうのに迎えにも来ない。友達も魅李先輩が作らせた人達だけだ。
というか彼女らは本当に友達なのだろうか。
彼女らと私が2人きりで遊んだことはない。
そして頭も悪く鈍臭い私をバカにする人間はいても慕う人間もおらず尊敬もされない。
更に私は弱い。
強い魅李先輩に群がる人間の中でも最も惨めで愚かで弱い人間。それが私だ。
私は勘違いしていたのではないか?
魅李先輩の何者でもない私が1人で自滅してあいつに嬲られたことで彼女の特別になったと勘違いしていたのではないか?
実際彼女は私のおかげで助かった訳ではない。
彼女は私が一切関係ないところで勝手に助かったのだ。
私の献身は全て独りよがりの意味のないものだった。
私は魅李先輩の特別ではない。
というより無価値な私を特別に思っている人間など誰1人いない。
家族も、友達も。
私はそのことに今更ながら気付いた。
いや気付いていたことにようやく向き合った。
あの私を犯したゴリ豚も私は魅李先輩を彩るオードブル程度にしか思っていなかった。奴の言動と魅李先輩に手を出していた事からそう思った。
なんて間抜けな道化なのだろう。
私は勝手に自分を特別視していただけで私以外の全員にとって私などただの一山いくらのモブにしか過ぎなかったのだ。
誰の特別でもない私は最近の日課となっていたゴリ豚に犯されるという行為がなくなり。その事について誰にも言及される事なく彼らのモブとしての日々がただまた明日からスタートするだけだ。
何も特別なことなどない。
ただモブの私が犯されてそれがメインの話のついでに終わっただけだ。
そして自惚れを自覚した私自身も自己を特別視など到底できなくなった。
ピンポーン。
チャイムの音で目を覚ます。
どうやら寝ていた様だ。
ようやく先輩が来た。
魅李先輩と話したせいか昔の夢を見た。
私は誰の特別でもない。私はあの時そう思った。
親からの愛情を受け取った記憶がない私は生まれた時から誰にとっても無価値だった。
だけど………。私は玄関へと歩いて行く。
扉を開けるとそこには待ち望んだ人物がいた。
「よお、悪い悪い。ちょっとチンポジがいまいち決まらなくてよ。」
「さっさと脱いでください。」
わたしは意味不明な言い訳をする先輩を無視して服を脱がして行く。
「ちょっ、お前ここ玄関だぞ。」
「待たせた先輩が悪いんです。良いからさっさと私のためにち◯ぽおったてて下さい。」
口では抵抗しつつも素直に脱いでいく先輩の首筋を舐める。
少し感じた声。
調教の成果が出ている事に私は満足する。
誰の特別でもない私。
だけど先輩だけは違う。
私は彼の特別となり、先輩も私の特別だ。
そこに至るまでの過程は常識から考えれば非難されて然るべきなのかもしれない。
だが過程などどうでも良いのだ。
結果私は彼を手に入れた。
奇しくもゴリ豚が魅李先輩にした様な形で。
今日の遊園地で分かった。
魅李先輩は縁助先輩に惚れている。
わざとらしくあの女は縁助先輩との関係を私にアピールしてきた。
無駄なことだ。この私が彼女を哀れだと腹の中で笑ってやった。
もう遅いのに。
彼の特別は永遠に私の物だ。
「璃々、せめて食材を冷蔵庫に入れさせてくれ。」
玄関に置いてある彼が買ってきた食べ物を指さして彼はそう言った。
当然無視だ。
私の体は既に縁助先輩を捕食するために火照っていた。
さあ今日も貪ろう。この私だけの身体を貪ろう。
心と身体は相互関係にある。
ゴリ豚とのSEXに何も感じなかった私だが縁助先輩と初めて結ばれた時は失神してしまう程だった。
縁助先輩も何回も何回も果てていた。
精神的にも肉体的にも私と先輩は特別な関係なのだ。
「せんぱぁい♡」
「…なぁに?璃々ちゅわん?」
「今日はぁ、ちょっとS風に行きますよぉ〜?」
「…なんだい璃々ちゃん。その蝋燭は?普通にコンビニにある様な蝋燭に見えるんだけど。璃々ちゃん知ってる?SM用の蝋燭はね、それ用の火傷にならない熱さで垂れるものを使ってるんだよ。だから普通の蝋燭をプレイに使うのは本当のドマゾというか人生捨ててる様な人しかあつづあああああああああ!!」
大声を上げる先輩に私は自分のパンツを口に詰め込んであげる。
心配はしていないとはいえ魅李先輩のことがあって私もピリピリしている。
だからネットで見たSMプレイをしてみてストレス解消をしよう。
初めての試みだけど私たちは特別な関係なのだ。
きっと気持ち良くなれるはずだ。
私は目の前で悶えている先輩に嗜虐的笑みを浮かべる。
先輩。先輩。先輩。
きっと無理矢理先輩の心と身体を奪った私は地獄に堕ちるだろう。
あのゴリ豚の様に。
だが後悔はない。
私の様なモブが誰かの特別になるにはそうするしか他なかったのだから。
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