第8話
やる事だけが増えていき、状況は悪くなっていくばかりだ。早急に純一と魅李がくっついて純愛エンドへと達してほしい。純愛エンドの条件は魅李が誰にも犯される事なく純一と身体的に結ばれる事だ。奴らをさっさと恋人同士にさせないと。俺は純一に遊園地のチケットを渡す事にした。
「おい、純一。遊園地のチケットをやる。」
「お、これってお前が言ってたリニューアルした遊園地じゃん。何で?」
「これ持って魅李ちゃん誘って行ってこい!」
急に俺から施しをもらって胡散臭そうな顔をしていた純一に発破をかける。
「はあ?縁助昨日の話もう忘れちゃったのか?お互いに大会が近くて忙しいんだぞ?そんな時間ないよ。」
それに純一が呆れた顔をして諭す様に言ってくる。血管が切れる音が体内でする。こいつ本当に殺して山に埋めてやろうか。
「大会近かろうが軍隊じゃねぇんだ!1日ぐらい予定空けれるだろうが!ぐだぐだ言わずに行ってこい!」
俺は奴の頭を掴み前後に振りながら怒鳴る。
「お前魅李ちゃん好きなんだろうが!」
「だから、魅李とは幼馴染なだけだって!」
興奮する俺に一丁前に反論してくる純一。
よくもそんなことが言えたものである。
「お前…、想像してみろ。あの毒島と魅李ちゃんが突きあってる姿を。」
俺の真剣な言葉に上を向き黙り込んで素直に想像する純一。
「先輩のおちんぽがあれば何にもいらなぁい♡とか言ってあいつの小遣い稼ぎに風俗で働かされている彼女を想像してみろ!」
「何言ってんだ!」
「悔しく思うだろう!悲しく思うだろう!嫉妬しただろう!」
怒鳴る純一に怒鳴り返す。
そして奴の右胸に拳を当てる。
「それが、恋心って奴だぜ。」
「いや、そりゃあ嫌だけど。それは大切な幼馴染だからってだけで…」
まだぐだぐだ言うので勢いで押し切る事にした。
「知らぬうちに快楽堕ちして自分との思い出の場所がおっさんとのセックスの思い出で汚されてもいいのか!週刊寝取られビデオレターを送りつけられる様になっても良いのか!高校卒業前に妊娠して退学、そしてAVデビュー!みたいな事態になっても良いのか!」
「嫌だけども!つーか幼馴染じゃなくても知り合いがそうなったら誰でも嫌だわ!ていうか魅李に限ってそんな事あるか!」
あるんだよ!お前のあのチョロマンに対するその高い信頼度はなんなんだ!
ゲームのエンドの話は奴にとって現実的じゃないのか想像が難しい様だ。仕方がないのでありえないが身近な例えを出す事にする。
「俺と魅李ちゃんが付き合う事になっても良いのか!」
その言葉に目を大きく見開く。俺が彼女と付き合うことはないが、こいつにとっては俺は魅李に自分以外で最も近しい異性である。リアルにその光景を想像できるはずだ。
嫌だろう横からエロ猿に大事な幼馴染を取られるのは、だからさっさと付き合ってズッコンバッコンしろ!
だが純一は下を向いて唇を噛んで俺が渡した遊園地のチケットを押し返してきた。
「…お前なら、いいよ。」
「は?何言ってんだ?」
「お前ならいいよって言ってんだよ!!………魅李を助けたお前なら。」
沈痛な面持ちで奴は俺らがいた空き教室から出て行こうとしたので、俺は奴の後ろからヘッドロックをかけて止める。
「ぐぉっ…!」
「いや、何1人で納得して逃げようとしてんだ。どういう事?」
「うぅ…離せ馬鹿…!」
俺は純一を解放してあげた。
「だから、お前になら魅李を任せられるって言ってんだよ。」
「純一………、お前もしかして気にしてたのか?」
何にも考えていないと思っていた俺だがこいつもあの中学3年生の冬の出来事をずっと気にしていたのか。辛い思いをしていた幼馴染を自分が救えず俺に助けられた事を。
「当たり前だろっ!俺は何も出来なかった。気付いてすらいなかった。今も、魅李を助けられる程強くもない。お前みたいに…」
あいつは悔しそうに同好会で鍛錬したおかげか中学の頃より硬く大きくなった拳を壁に向かって叩きつける。
「正直…、悔しいが魅李の気持ちはお前の方を向いていると思う。だけど、強いお前なら俺と違って魅李を守れるお前なら俺も我慢出来る…」
「純一…、お前…」
俺は唇から血が出そうなほど噛み締めている親友のその悔しそうな姿に立ち尽くしてしまった。
純一…、お前本当に、マジで。
「なぁに勝手に諦めてんだボケがああああああ!」
俺は情けなく俯いている奴の顔面に右ストレートをぶちかました。
「げふぅっ!」
「お前もしかして全然魅李ちゃんに積極的にアプローチかけなかったのってそれが理由か!ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!俺のこれまでの労力を何だと思ってんだ!!」
「知るか!とにかく俺はいいんだよ!」
「簡単に諦めてんじゃねぇよ!彼女を幸せに出来るのはお前だけなんだよ!」
性に溺れる以外の方法で幸せに出来るのはな。
俺の言葉に黙りこくる純一。俺は怒鳴るのをやめて穏やかな口調で奴を説得する方針に変える。
「良いか?俺だってお前ら2人は大事なんだ。幸せになってほしいんだよ。」
「それなら…、お前でも。」
「俺じゃあダメなんだよ。俺では彼女を幸せに出来ない。」
何故なら付き合ったが最後、恋人がすぐに死ぬ事になるからな
「お前だって魅李ちゃんが大事で、異性として意識してるんだろ?」
「…。」
「だったら一度の失敗程度で諦めんなよ…」
俺の説得に純一はのろのろと先程突き返したチケットを受け取る。
「分かった…、だけど選ぶのは魅李だ。」
「分かってるよ。」
「だからこの遊園地には縁助も行こう。」
え、なんで?
ようやく重い腰を上げた純一に俺は安堵したがまたよう分からんことを言い出した。
「さっき言った通り魅李はお前に惹かれてる。そんな彼女が好きな男に避けられてその男が俺と付き合わせようとしてるって知ったらどう思う?」
「それは…」
「彼女のためにも、こういう事をする時は。縁助、お前も一緒だ。」
純一は珍しく正論を言ってきた。
「安心しろ縁助。」
黙る俺に対してあいつはいつも通りの笑みを浮かべてサムズアップする。
「絶対に魅李の気持ちを俺に向かせて見せるからさ。正々堂々お前と向き合って!」
ゲームをやってる俺からすれば何にも信じられない主人公の言葉だが。この現実での親友としてゲームと違って色々考えているこいつを信じたくなった。まあ、遊園地行ったら適当な理由で離脱すればいいか、とゲスな考えを持ちながら。
「分かったよ…、取り敢えず日程を決めよう。」
「あれぇ?先輩達ぃ、遊園地行くんですかぁ?」
ようやく話がまとまったところにメスガキが乱入してきた。というか璃々だった。
「げっ、璃々…」
「何ですかぁ?その反応はぁ?男2人でコソコソと誰もいない所でいやらしぃ〜。」
こいつ、俺らの話を盗み聞きしてたな。
嫌な予感で腹が痛くなってくる俺の横で純一が意外そうな顔で璃々を見る。
「えっ、君って…中田璃々か?」
「そうでぇす!お久しぶりです佐藤先輩。」
「久しぶり、何か見違えたなぁ。」
「高校デビューって奴ですよぉー、高校デビュ〜。」
純一は中学校の頃の後輩の変わりように驚いていた。
無理もない。純一の知っている彼女は純朴が服を着て歩いているような見た目だったのだから。高校デビューした璃々は自分の健康的なエロい体を惜しげもなく晒すような改造制服に身を包みアクセサリーで自分を煌びやかに見せている。
コギャルって奴である。おっぱいは全然小さくないがなぶへへ
「それよりぃ、先輩達遊園地行くんですかぁ?」
「え?ああそのつもりだけど・・・」
「それ璃々も行っていいですかぁ?」
「おい・・・、璃々。」
急に話に入って邪魔をしてくるメスガキを注意しようとしたが逆に純一から見えない様に足を強く踏まれた。
そして一瞬こちらを睨むように見てきた。
その顔には嘘つきと責める様な意味が籠っていた。俺を無視して二人は話を進める。
「女の子1人に男2人じゃあバランス悪いですよぉ。ダブルデートにしましょうよぉ」
「えっと、俺は良いけど。どうする縁助」
「うん・・・、良いんじゃないカナ・・・」
はっきりと断りたかったが昨日璃々に言った言葉を思い出し断るという選択肢は封じられた。
こうして今週末に璃々を交えた4人で遊園地デートをする事となった。
璃々と魅李か・・・、会わせるのはまだ早いと思っていたが。
何事もなく済んでほしいものだ。絶対にそうはならないがな。俺は今週末の事を思い
既にお腹が痛くなってきた。当日ドタキャンしたら流石に純一に殺されるだろうか。
・・・
週末に俺は待ち合わせ場所である最寄り駅で3人を待つ。俺はこういった時に待ち合わせ時間ギリギリに向かう派だが今回の場合は誰よりも先に行くと決めた。
何故なら魅李と璃々を仲裁する俺なしの状態で会わせたくなかったからだ。
璃々、中学時代のゴリ豚のもう一人の被害者。純一にはそのことを隠しており事情は知らない。魅李は璃々に罪悪感を感じており、璃々は魅李に複雑な感情を持っている。事件直後、魅李は璃々と謝罪の為、支える為に会おうとしたが璃々は拒絶した。それは彼女を恨んでいるからとかそういった単純な問題ではない。だから魅李には俺に任せる様に伝えて璃々のケアは俺がする事になった。2年のケアでようやく無理をしていながらも明るく振舞える様になったが、今の二人を会わせるのは大分不安だ。
魅李と純一が一緒に待ち合わせ場所に現れた。俺がすでにいるのを見て二人は驚いていた。魅李は清楚な白のワンピースにつばの広い帽子をかぶっていた。うーん、ザ清楚系といった感じの服装だな。肉体は全然清楚じゃないがな。
「珍しいな縁助が一番乗りなんて。」
「まあな、・・・ところでお前魅李ちゃんの服装ちゃんと褒めたか?」
俺の問いかけに惚けた顔をする純一。昨日こいつを信じた俺に謝れ。
「おはよう、縁助くん。ごめんねチケット貰っちゃって。」
「おはよう!魅李ちゃん!気にしないでよー、忙しい所ありがとね。ところで・・・、魅李ちゃん。今日来る璃々の話だけど。」
俺が挨拶もそこそこに璃々の名前を出すと魅李は痛みを耐える様なつらい表情になる。
「うん、璃々が私を許してないのは分かってるよ。でも今回璃々が私もいるのに来てくれるんだよね。この機会を大事にして彼女とちゃんと向き合いたい。」
辛そうな表情の中に彼女の覚悟が見える。璃々は魅李を許していないのは彼女がゴリ豚に汚される原因になったことが主な理由ではないのだが、俺の口から理由を伝えるのは憚れた。
そうして待っていると待ち合わせ時間から10分程遅れて璃々がやってきた。
「ごめんなさぁい!お待たせしましたせんぱあい!」
手を振りながらわざとらしく駆け寄ってくる璃々に魅李は瞠目した。
まあ、そりゃあ中学時代の彼女を知っていれば驚くだろう。
喋り方も見た目も大幅に変わっている。
魅李の清楚な服装とは対照的でホットパンツにキャミソールという肌を惜しげもなくさらけだした服装をしている。
「り、璃々・・・」
「ああ、中里先輩じゃないですか」
「っ!」
昔は魅李先輩と親しげに呼ばれていた彼女に他人行儀に呼ばれて苦しそうな顔となる。
「おい、璃々。」
意地悪をする璃々を注意の意味を込めて名前を呼ぶ。それに嬉しそうに振り向く璃々。
「せんぱあい!今日は誘ってくれてありがとうございます!」
飛び跳ねて俺に抱き着いてくる璃々。
女の子らしい柔らかい体が俺に触れる。肌色面積が広いため温かい体温が伝わり頭が沸騰しそうだよぉ~。
思考能力を奪われた俺おいて自体は進んでいく。
「璃々?縁助と仲いいんだな。」
中学の時に親しくしている様子を見た事がない純一は困惑した顔でこちらを見る。
魅李も俺と璃々の事は知っていながらもこういった関係とは知らなかったからか呆然とこちらを見る。
その様子にニヤニヤと眺める璃々。そして璃々は俺と腕を組みもう一つの手で自分の身体のへその部分に手を当てて蠱惑的に撫でる。
「知らなかったんですかぁ~?璃々と縁助先輩は大大大仲良しですよぉ。時間ではどうしようもない深いつながりで結ばれているんです!」
そして遊園地に行く前のデートの序盤も序盤で爆弾を落とした。
「心も・・・、身体もね♡」
挑発的にそう言って笑う璃々に呆然と魅李が自分が持っていたカバンを落とす。
その様子に何が何だか分からない表情で観客となった純一。
うーむ、やっぱりドタキャンするんだった。俺はこれからの長い1日を思い心の我慢汁を漏らした。
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