第7話

魅李の頭がどうかしてしまい、後輩である璃々が軽い鬱状態になった本日。

昨日で肉体を今日はメンタルにかなりのダメージを貰っている俺だが、まだ休むことは出来ない。


俺は校門近くでゴミ拾い活動をしていた風紀委員長の白峰を訪ねた。


「うぃ〜やってるか〜い。」

「ひっ!さ、猿渡…」


俺が声をかけるとびくつく白峰。


鍛えられた長身の肉体で勝気そうな顔をした彼女が怯えてる姿はご飯3杯いけそうなぐらいたまらんばい!


怯える白峰を前に思わず涎を垂らしてしまうが自分に軽くビンタし正気に戻る。


涎を垂らしながらぐへへと笑っていた男が自分を殴った姿を間近で見た彼女の恐怖は最高潮に達し腰を抜かしていた。


俺は彼女と顔を合わせるためにしゃがみ込む


「げっへへ、白峰ちゃん。パンツが見えそうですぜい」


「き、昨日の件は改めてすまなかった。だから命だけは助けてくれ、猿渡くん。」


優しくパンチラを指摘する俺に彼女は助命嘆願をしてくる。

彼女は彼女で魅李とは真逆の方向で俺に対して酷い誤解をしている様だ。


俺はただ日常的に学校でセクハラをして、モテない男共を率いてカップルをしばきまわっているだけの男なのに。

これが偏見という奴か。

俺は白峰の言葉を無視して本を差し出す。


「この本を白峰ちゃんにあげよう。」

「こ、これは?」

「はじめての性教育。今の君に必要なものさ。」


そう爽やかに笑う俺に汚物を見る様な目を向けて身体の震えが大きくなる白峰。


「あと、これも差し上げましょう。」


そんな彼女に追撃に今度は紙袋に入った漫画を渡す。

無言で動かずに受け取ろうとしないので彼女の傍に置く。


「これはふ◯りえっち。君に必要な知識が全部載ってるアルよ。」


髪をかきあげて白い歯を剥き出しにしてにっと彼女に笑顔を向ける。

そんな俺に彼女は震えながら財布を差し出してくる。


「………あの、お願いします。本当に反省しています。だから許してください。お金なら十万までなら出せますから。」


彼女が涙目になって素の口調でマジの嘆願をしてくる。

その様子に流石の俺も焦って意図を説明しようとするが横合いから蹴りを入れられて中断された。


自分の存在を誇示する様にあからさまに近づいてきたので蹴りは避けることができたが彼女と離れてしまう。


「白峰さんに近づくな猿渡!」

「あっぶねぇな。風紀委員が善良な一般生徒にこんなことして良いのか?」


俺の言葉を鼻で笑うその風紀委員の大男。

名前は知らないが見た目が割と普通なのでネームド間男には見えない。

ふん、精々雑魚モブ間男って所か。

モブ間男など、ネームドに堕とされた女におこぼれ貰いに群がるだけの存在だ。

羨ましい限りである。


「ふん、何が一般生徒だ!!それに風紀委員と生徒会と武道系の部活は愛陰会への無制限の武力の行使を学校から許可されている。」


この学校は日本国の法律の枠外にいる様だった。

初耳である。

というか俺らが人間扱いされていないのだろうか。

たとえ動物でもみだりに殺生するのはあらゆる宗教で禁止されてるんだぞ!

俺と幹部は今更仕方がないにしても構成員達にはこれからはより闇に紛れて活動するように言い含めなくては。


「まあ、落ち着け。文明人同士話し合いといこうぜ。」

「貴様と話す事などない!!」


鎖国する未開人に対して俺は打つ手がない。

そうして白峰とふ〇りえっちを挟んでしばらく対立をする俺とモブ間男。


「・・・ぁ、あのぉ。」


そこに蚊の鳴くような声で割って入ってくる声があった。

白峰とは対照的に小柄で大人しそうな小動物系の彼女の名前は黒岩 凛子。

白峰と同様に寝取り野郎に堕とされるサブキャラである。


「おお、黒岩ちゃん。体調は大丈夫なの?」

「ぅ、うん。お陰様で…その節は助かりました」


やはり関西出身なのかイントネーションが向こうの人である。

小動物系の関西人キャラ…、うむアリだな!

彼女の存在は関西人はガサツというステレオタイプに一石を投じるであろう。

これが同人エロゲーではなく少年ジャ◯プの漫画のキャラだったらの話だが。


「聞いてくれよ黒岩ちゃん。俺はただ白峰さんに必要な知識を伝授したいだけなのにこの肉だるまが邪魔をするんだ。」


俺は黒岩に事情を説明し、泣くフリをする。

それに先程まで偉そうに仁王立ちしていたモブ間男が慌てて割って入ってくる。


「だ、騙されちゃダメだ黒岩くん。こいつは猿渡なんだぞ。」


先程とは違い何だかあたふたしてるその姿にこの男が黒岩に惚れていることにすぐ気付いた。


俺は奴を挑発する意味を込めて黒岩の後ろに隠れて身を縮める。


「僕はただ白峰さんがこのままだと知識不足で痛い目見るだろうから心配しているだけなのに…この男が僕が可愛いからって難癖つけてセクハラしてくるんです!」

「セクハラ野郎はお前だろうが!黒岩くん、その男に近づくな!」

「松本くん…」


俺の挑発に乗っておかんむりになるその男に黒岩はオドオドとした様子で話しかける。


「猿渡くんはそんな悪い人、じゃないと私は思う、よ?」


俺を庇う彼女の言葉に困惑する松本くん(おそらく包茎。)


「黒岩くん…?なぜ?なぜそんなやつを庇うんだ!」

「…昨日保健室で優しくしてくれたから。」


何故か頬を赤らめてそういう彼女に松本くんはショックで身体が崩れ落ち膝をつく。


「ね、ね。」

「ね?」

「寝取られやんけぇ〜!!」


そして校門の前で大声でとんでも無いことを口走った。

白峰と、黒岩。

更に他の近くで見守っていた風紀委員達もドン引きした様子で松本くんを見ていた。

逆に俺は奴に対する好感度が急上昇した。というか愛陰会に入れたくなった。


膝をつく彼に俺はよりそう。


「落ち着け、松本くん。俺は彼女に何もしていない。」

「さ、猿渡…、猿渡ぃぃぃ」


弁解する俺に恨めしそうに名前を呼んでくる松本くん。

今は説得は無理そうだ。

俺は優しくヘッドロックをかけて首を絞めて気絶させた。

そして愛陰会の連絡先が書かれた紙をそっと胸ポケットに忍ばせておいた。


「さて………白峰。」

「ひっ!」


邪魔者を排除し改めて彼女に向き合う。

黒岩もいるし丁度いい。

白峰が原作と同様のファンタジー的価値観を持っているか確認しておこう。

俺は小声で周りの人物に聞こえない様に白峰に話しかける。


「白峰ちゃん、あンた純一に惚れてんだろ。」

「な、なに!?どうして!」

「見たら誰でもわかるっつーの」


純一以外はな。


「そして純一と付き合うためにも色々男女について知りたいと思っている………違うか?」


そう問う俺に呆然とした顔を見せる白峰。ザ図星という感じだ。


「な、何故それを…」


あんたらが出演するエロゲーやってたからですとは流石に言えないので不敵な笑みを浮かべて誤魔化す。


「まぁまぁ、それはともかく。じゃあここでクイズです。白峰ちゃんと黒岩ちゃんにはそれぞれ解答権が与えられます。」


急にクイズ大会が開かれ困惑する白峰。巻き込まれた黒岩も目を白黒させている。


「子どもはどうやったら出来るでしょう?」


その問題に顔を赤くする2人。

げっへへ、初心やのぉ〜。嬉しい反応についオジサン化してしまう。

顔を赤くして白峰が怒鳴ってくる。


「きゅ、急に何をいうんだ!君は!」

「あー、はいはい。そういうの良いから。で、答えは?」


彼女は雑に対応する俺に顔を真っ赤にして小声で回答する。


「ちゅ、ちゅ〜をしたら出来るに決まってるだろう。男女の事に私が疎いからってバカにするな…!」


………。


俺は知っていたので覚悟していたがイかれた回答をした自分の友人に黒岩は唖然としていた。

知らなかったのだろう、あまりこの手の会話はしなさそうな2人だ。

俺らの反応に白峰は慌てて弁解をしてきた。


「あ!なんだその呆れた顔は!勘違いするな、ちゅ〜と言ってもあれだぞ?え、えっちな方の奴だぞ?」


わざわざちゅ〜と言うときに口を窄めて言う彼女。

彼女の言うえっちなちゅ〜とは何だろうか。

ダブルフ◯ラ後に男の性液を女優同士で舌で絡めながら交換する俺の好きなアレだろうか。

俺はそんな彼女の様子を無視して質問を続ける。


「昨日胸を触られるのを嫌がったのは何で?」

「人に触らせるものではないし、お前に裸など見せられるか!」

「そうなんだ、でもそれじゃあ中里魅李の胸には勝てないぜ。純一はおっぱい星人だ。仮に彼女を作る場合奴は胸の大きい順にリストを作り上から順に告白をしていくぐらいおっぱい好きだ。」

「え?ほ、本当か?」


俺の嘘にあっさり騙されて真剣な顔で聞いてくる白峰。本当におバカちゃんである。


「ああ、正直お前の胸は魅李に負けている。だが人に揉まれる事によって胸は大きくなるんだ!」


そう力説する俺の話に真剣に耳を傾ける白峰。

引くぐらい馬鹿である。

実際黒岩はドン引きした顔を自分の友人にむけていた。


「だ・か・ら。俺が白峰ちゃんの為におっぱい揉んだげる!」

「………お前なんかに身体を触らせたくないが、くそっ!仕方がないのか?」

「………嘘だよばぁ〜か」

「なっ、貴様ぁ!」


俺の雑な嘘にあっさり騙され提案を検討をし始めた白峰に流石に怖くなりネタバラシをする。

俺は猛る白峰を無視して黒岩を見る。


「…な?騙されやすい上に無知でしょ?」

「…。」


こくりと頷く黒岩。

そう、この女。

白峰 美鈴は利発そうでお固い印象とは裏腹に無知っ娘なのだ。

ムチムチの無知っ娘なのである。

彼女のえっちシーンの殆どは性知識に疎い彼女が悪い男に騙され知らずにエッチなことをしてしまうという無知シチュだ。

だから俺は彼女に男女の付き合いについてと性知識を早急に入れ込むのが一番の寝取られ対策だと考えた。

俺は何も理解していない白峰を無視して黒岩に向き合う。


「黒岩ちゃん、正直こんな彼女がこれから先男に酷い目に合わされるんじゃないかと不安なんだ。純一の昔馴染みみたいだし、黒岩ちゃんの友達でもあるしね。なんとかしてあげたいんだけど…」


俺は黒岩ちゃんの肩を掴み真剣な顔で見つめてお願いする。


「お願いだ!黒岩ちゃん。キャベツ畑から採れたての性知識しかない彼女にまともな知識を教えてやってくれ!」


俺の圧に黒岩は真っ赤な顔で頷いてくれた。

よし、これである程度は白峰も間男に騙されることは無くなるだろう。

SEXが子供を作る行為だと知らないままお腹が大きくなる事態は避けられるはずだ。

本当によくこの現実と大して変わらない世界でエロ漫画のロリみたいなとぼしい性知識で生きてこれたものである。

少し安心した俺に対して黒岩は真っ赤な顔のまま俺の制服を掴む。


「さ、猿渡くん…」

「ん…?どうした黒岩ちゃん。」

「ぁの、その………」


もじもじして中々切り出そうとしない彼女に穏やかに微笑んで俺は彼女の言葉を待つ。

それに安心したのか彼女は深呼吸をしてようやく話を切り出した。


「わ、私も詳しくはし、知らないから猿渡くんに教えて欲しいな。」


「………マジで?」


彼女は顔を両手で隠して恥ずかしそうにしながらそう言った。


俺の心労を減らす為に早期に問題に対処しようとした俺だが、結局同級生にSEXエデュケーションをするという新たな仕事が加わってしまった。

面倒極まりない。

俺は既にキャパシティオーバーなのだ。

しかしその本心とは裏腹に同級生に性教育というワードに俺の聞かん棒はこっそりと大きくなり始めた。

本当にこいつには困ったものである。

俺は第一回目の授業の内容を白峰を説得する黒岩を眺めながら考えていた。


取り敢えず初回の授業では挿入は勘弁してやるか…と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る