227 パーティーが始まる(5)
レイノルドが何か言いかけた。
レイノルドのそばにあったアリアナの手を、レイノルドが握る。
んなっ!?
「…………」
驚いて、レイノルドの様子を見る様に、アリアナがそのペリドットの瞳を覗いた。
じっと見つめるその瞳が、綺麗で、それでいて、どこか緊張している様だった。
強く握られた手から、熱が伝わってくる。
「こんなこと言って、驚くかもしれないけど」
ばたん。
その時突然扉が開いた。
「…………」
入ってきたマーリー・リンドベルが、
「おはよう、二人とも」
と声をかけるまで、レイノルドはそのままの格好で何も言えなくなっていたし、アリアナは離すに離せない手とレイノルドの視線についてずっと考えていた。
「おはようマーリー」
なんとか持ち直し、振り向いたアリアナは、不自然なくらい睨みつける様な顔をしていた。
「おはようございます」
にっこりと華やかな挨拶をしてくれたのは、マーリーがエスコートしてきたパートナー、ナナカ・ブラウン。
どうやら市民の学校で芸術を教えようと活動している芸術家の娘で、マーリーとは以前から知り合いだったらしい。
エスコートしながら、流し目で、
「どうぞ続けて」
と難なく言うマーリーに、意図はあるのかどうなのか。
少し離れたベンチで二人は座り、すぐにこちらには目もくれず会話を始めたけれど、レイノルドとアリアナは、もう続きを話せる状態ではなかった。
アリアナはガチガチになった顔で、庭園を凝視する。
今のは……何だったのかしら。
なんだか……。
なんだか…………。
『女の子と盛り上がる為の58本』の恋愛ものの少女漫画が頭の中をぐるぐると回った。
レイが言いたい事……。
あんな顔で?
よくある、教室での二人きりシーンが、頭の中を駆け巡った。
「………………???」
それとも私ったら、レイの事を考え過ぎて、そんな風に思い込んでしまったのかしら。
けど、もし……。
もしそんな事が起こったら、私はどうしたいんだろう。
「…………」
隣に座るレイノルドを意識してしまう。
すぐそばに居るのに、手を繋ぐ事もままならない。
顔を見る事も。
部屋の中には、マーリーとナナカの楽しそうに話す声が聞こえる。
…………どうして私達よりあっちの方が仲が良さそうなのかしら!!!!
それから、アルノーとシシリーがやって来たのを皮切りに、部屋の中はザワザワし始めた。
小さな声で、
「大丈夫だよ。あの二人に何かあるわけじゃないって」
と、落ち込んだシシリーを慰める様なアルノーの声が聞こえた。
「気にしてないわっ」
と、強気なシシリーの声が聞こえた。
…………シシリーには、好きな人が居るのかしら…………。
アリアナは、隣に座るレイノルドを、ずっと意識したままだった。
何か動くなら……きっと、パートナーとして隣に居られる今夜しかない。
私は……レイとどうなりたいんだろう。
◇◇◇◇◇
失敗したので、エンディングまでまだもう数話かかりそうですね。
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