224 パーティーが始まる(2)

「アリアナ」


「レイ」


 途端に、レイノルドはアリアナのそばにジェイリーが立っていたので、ムッとした顔をした。

 ジェイリーを睨みつけながらアリアナのそばまで行ったので、ジェイリーが苦い顔をする。


「では、ここからは僕が引き受けるので」


 そう言われ、ジェイリーは営業用の笑顔で引き下がるしかなかった。


 レイノルドと改めて向かい合う。


「綺麗だね」

 と言われたので、アリアナは一瞬びっくりした。


 綺麗???


 レイノルドが私に???


 そこでハッとする。


 ここは褒めるところでは???


 確かにそうだ。

 オシャレにしていれば褒めるのはマナー。


 私もお返しに褒めるのがマナー!


『君も綺麗だよ』じゃなくて『この薔薇も霞みそうだ』じゃなくてえっと。


「あなたも、素敵よ」

 にっこりと笑う。


 危ないわ。

 危うく本気にするところだったじゃない。


 まあ、この私がいつもより綺麗にしてもらってるんだから、綺麗なのは当たり前なんだけど。


 レイノルドも正装だ。

 ……うん。そうね。カッコいいじゃないの。


 レイノルドが、手を差し出す。


「…………」


 ここからエスコートするの!?

 ハードル高いわ!!


「今日はよろしく、ね」

 その手を取る。

 顔を見上げると、掴まれた手に力が入った。


「…………」


 嬉しくないわけではないけど。


 ……手を繋いで行くのは、ちょっと恥ずかしいんじゃないかしら。


 廊下を歩くと、やっぱりメイドさん達の視線が痛い。

 数分後には、屋敷中に噂が広がっていそうな視線……。


 ……やっぱり、手を繋いで歩くのは、恥ずかしいんじゃないかしら!!



 馬車へ辿り着いた頃には、アリアナはすっかり疲弊していた。


 ……馬車へ乗り込むと、目の前にレイノルドが座る。


「…………」


 ルーファウスの馬車に乗って学校へ行くなんて、なんだか新鮮ね。

 ルーファウスの馬車は……というか、ルーファウス家の調度品も含め、全体的に色が重い。

 家の色が紺色だというのもあるだろうけれど、馬車の内装も全体的に焦茶色で、金細工が施されている。

 ……うちも高級品で埋まっているけれど、どちらかといえばひたすらキラキラしたものが多い。

 ルーファウスの物はどうしても物々しくて、余計に緊張してしまう。


 ……けど、窓の外の景色は、いつもと同じね。


 いつもは、兄とジェイリーと一緒に登校する道。


 王都の中を突っ切っていくので、まわりはなかなかに騒がしい。


 空は青くて。

 道はなだらか。


 みんな上手くやっているかしら。


 ジェイリーは、キアラをうまく迎えに行けただろうか。

 うちのアレスとルナなんて目じゃないほどのイタズラっ子だ。


 兄様……、はきっといつも通りね。


 アイリは大丈夫かしら。

 シシリーと私でメイドは準備しておいたし、ドラーグはそこらの貴族には劣らないお金持ちだ。

 けど……、まさか商会の馬車で乗り付けたりしてないでしょうね?

 御者はちゃんと準備しているかしら。

 まあ、ドラーグが直接手綱を握っていたとしても、アイリなら喜ぶんだろうけど。


 そんなところを想像して、思わずふふっと笑う。


 そこで、レイノルドと目が合った。


「何考えてたの?」


 そう言って、レイノルドがふっと笑った。


「…………」


 思わずかぁっと顔が火照ってしまう。


 何って……何って……。

 あなたのキラキラした顔で、考えてた事なんて吹っ飛んでしまったわ!!



◇◇◇◇◇



シシリーちゃんは自分の恋愛は放置で人のお世話ばっかりなんですね……。

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