223 パーティーが始まる(1)

 ドレスに着替える。

 鏡の前にいるアリアナは、サナを始めとした侍女達の素晴らしい力によって作り上げられていった。


「お嬢様!とおおおおおおおっても綺麗です!!!」


 アリアナがドヤ顔で、鏡の前でふわりとドレスをひろげる。


「きゃああああああああ」


「ありがとう、あなた達」

 キメ顔でそう言うと、侍女達のため息が漏れた。


 そこまでは、いつも通りだった。

 いつものパーティーの身支度。

 学校主催のパーティーという事で、時間が早い事以外は、それほどおかしな事なんてない。


 けれど、ロドリアスが先に馬車に乗り行ってしまうと、なんだかそわそわとし始めた。


 ……いつも兄様とだったから、なんだか違和感がある。


 すぐにレイノルドが迎えに来るはずだ。

 そうすれば、二人で馬車に乗って学校に行く。


 それだけだ。


 それだけなのに。


 玄関の方が騒がしくなったのを聞きつけ、アリアナはバルコニーに身を乗り出した。

 かろうじて正面玄関の方が見える。


 来たかしら!?来たかしら!!??


 落ちるんじゃないかと思うほど乗り出したアリアナに、真っ白な馬車が見えた。


「……………」

 ベランダの手すりで項垂れる。

「王家の馬車だわ……」


 ルナがエリックのパートナーなので、エリックがルナを迎えに来たのだろう。


 そこで、

「わあああああ、お嬢様!」

 と後ろから声が聞こえた。

「何してるんですか、落ちますよ!」


 ぐいっと腰が引き上げられる。

 振り返ると、そこに居たのはジェイリーだった。


「…………あなた、こんな所で何してるの」

「何って、護衛ですけど」

 ジェイリーは、今日は学生としてパーティーに出席する方のはずだ。

 確かに、既に正装してはいるけれど。


「行かなくていいの?お迎え」

「まだいいですよ。キアラ様と俺はそういうんじゃないんで」

「…………」

 アリアナがジェイリーを据わった目で眺める。

「……エリックとルナだって、そんな関係じゃないじゃない」

「そうですけど〜」


 そこでまた、玄関の方が騒がしくなった。


「…………来たかしら」

 呟く。


「そんな風にお嬢様に想われて、レイノルド様も嬉しいでしょうね」

 あまりにもニコニコとしたジェイリーの顔に、拗ねたような声を放った。

「……私達だってそんなんじゃないわよ」


 開きっぱなしの扉の向こうで、数人の足音が聞こえる。

 案内をしてきた執事と、レイノルドの足音のはずだ。


 ドキドキする。


「どこかおかしい所はない?ジェイリー」


 スカートの位置を確かめる。

 足元を確認する。

 髪型を鏡で整えると、真っ直ぐに前を向いた。


「大丈夫。お綺麗ですよ」


 ジェイリーがにっこりと笑った所で、入口に、レイノルドが顔を出した。



◇◇◇◇◇



さてさて、パーティーで盛り上がって終わりにしたいと思います!

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