217 え、ちょっと待って(1)
それから、2週間が過ぎ、流石にアリアナもレイノルドと踊る事に慣れてきた。
学年末の試験も終わり、教室は楽しみしかないざわめきになる。
試験が終わってからはみんな、学年末のパーティーの準備で忙しい。
パーティーまでの間は自由登校となり、パートナー探しやドレス作り、ダンスや作法の練習などにあてられた。
アリアナのハーレム軍団も、週に2回集まってダンスレッスンを続けていた。
それに、アリアナ達は『ハローハーモニー』の作業が残っており、毎日のように会議室を訪れていた。
会議室のテーブルに寄りかかり、メガネをすちゃりと掛け直したマーリーが、アリアナに向け、偉そうに眉を上げる。
「今年は1度勝ったからな」
「1度って」
とアリアナは嘲笑の笑顔を作った。
「来年こそは!」
「来年こそは〜?」
「2回勝つ!」
「あら、低い目標ですこと」
「ホホホ」と笑うアリアナに、差し出されたのはデザイン画だった。
『ハローハーモニー』の服は人気があり、数点買ってくれたお得意様を中心に、新しいデザインを見せていこうとしているところだった。
「どうかな」
フリードが、はにかんだ笑顔を向けてくる。
……この人は、こんな表情も似合うからずるいわね。
レイノルドがこんな顔をしていたら、妙な扉を開けてしまう人間は多いだろうが、似合うか似合わないかと言われると、レイノルドが有利になるようには似合わないだろう。
アリアナの頭の中で、奴隷商人よろしくな人身売買オークションの光景が広がる。
そんな光景を広げつつも、アリアナは新しいデザイン画を眺めた。
「すごいわ」
本当にフリードのデザインはそれぞれのテイストの味を掴み、洗練されていっていた。
「これ、いいわね」
「そうですねぇ」
「フムフム」と横から覗いてきたのはアイリだ。
「数着でしたら、ここのテカテカ素材、使えそうな生地を見た事ありますよ」
そこへアイリの後ろから顔を出したのはドラーグだ。
「ああ、ここなぁ」
同じく「フムフム」とデザイン画を見る。
……この二人……ちょっと距離が近いんじゃないかしら。
アイリとドラーグの距離は、確かに近づいていた。
見るからにスキンシップが多くなっている。
今だって、ドラーグはアイリの頭の上からアイリにひっつくほどの距離でデザイン画を覗いている。
そんな二人を見る度に、アリアナは心の中でつい照れてしまう。ポーカーフェイスを崩す事はなかったけれど。
みんなどうしてこの二人を見て平然としてられるのかしら。
そんな、いつも通りの日常だ。
その日は間違いなく、アリアナにとっていつも通りで平和な1日だった。
だから、思わなかったのだ。
まさかそんな日に、アリアナの心に大嵐が吹き荒れるなど。
「え、ちょっと待って?だってそんなの、嘘でしょう?」
◇◇◇◇◇
さて、ここからラストスパートに入ると言っても過言ではないのではないでしょうか。
最後までよろしくね!
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