214 ダンスレッスンをいたしましょう(1)
それからも、普通の日常の中で、アリアナは出来る限りの平静を保った。
パートナーがどうとかざわつく教室の中で、平静を保っているつもりだった。
けれど、パートナーについて何も言わないばかりか、その話題を避けようとするのは逆に怪しかったかもしれない。
「アリアナは、パートナーはもう決まったの?」
とうとう隣に座るエリックが、アリアナに直球で聞く。
そこへ通りすがったアルノーが、
「アリアナのパートナーは、」
と割って入って来た。
「決まらなかった場合は俺がパートナーだから」
その爆弾発言のようなものに、エリックとアリアナが沈黙した。
アリアナが、気まずそうに話す。
「そうなの。けど、もう、決まったから」
「そ〜か〜」
アルノーとエリックが、心底残念そうな顔をする。
そのアリアナの態度で、アルノーに相手が誰なのかわかってしまい、そのアルノーの反応でエリックにまで相手が誰なのかわかってしまう。
「よかったね、アリアナ」
エリックが、残念そうな顔のままアリアナに笑顔を贈った。
アイリが、教室で恥ずかしそうにアリアナに声をかけたのは、その日の午後、昼食を食べた後の事だった。
「アリアナ様……」
「どうしたの、アイリ」
「実は……」
アイリがそっとアリアナのそばに寄って耳打ちする。
「ダンスの練習がしたいんです」
「あら、いいわね」
確かに、夏休み前のダンス練習以来、ダンスの練習をする機会はなかった。
アイリなど特に、ダンスに触れる機会はないだろうから、不安なのだろう。
それに、相手が……。
「パートナーは決まっているのかしら」
アリアナがそう聞くと、そばにいたシシリーだけでなく、クラスの女子の少なくない人数が聞き耳を立てる気配がした。
「はい!あの……ドラーグに誘ってもらいまして……」
やはり、相手はドラーグか……。
確かに、ドラーグもダンスに慣れてはいないだろうから、やはりダンス練習は必要そうだ。
「えへへへ」と照れ笑いをするアイリを、女子達はすっかり取り囲んでいた。
「よかったじゃない」
にっこりしたアリアナの嬉しそうな笑顔にほっとしたのも束の間。
女子達に圧倒されてしまう。
「なんて言われたの?」
「あ、あの……。『俺のパートナーになってくれないか』って……」
「ほぉぉぉ〜」
女子達のため息が漏れる。
「それで……、花を差し出されて……」
「きゃああああああああ」
女子達が控えめながらも本格的に羨ましさの混じる感嘆の声を上げる。
「で、でも1本だけですよ!?」
「ガチなやつね……!」
「ガチなやつだわ……!」
「え、プロポーズってこと!?」
「どうかしら?けど、この二人、仲良いなって思ってたわ……」
「私も、二人には幸せになってほしいわ……!」
それから、ドラーグが教室に入ってきた時、女子達が一瞬、「ほわぁ……」というような声を上げたのだけれど、ドラーグにはそれがどういう意味の声なのかはわからなかった。
◇◇◇◇◇
このお二人も知らないところで何かとあったみたいですね〜!
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