84 道の上で(2)
「迷惑、掛けたくないんだ」
「怖いんだろ?アリアナちゃんが誰を見てるのか知るのが」
「…………」
「あの二人にはそんな雰囲気はないよ。婚約者候補である事にも気づいてないみたいだ。ジェイリー本人に聞いてるんだ。間違いない」
「そう」
ジェイリー・アーノルド。
アリアナの護衛騎士だ。
本人達は気づいていないようだけれど。
侯爵家次男。年齢も近い。優秀な騎士で、常にアリアナの隣に居り、二人きりで出掛けることも許された男。
アリアナの婚約者候補としてサウスフィールド公爵がアリアナにつけているのは、まず間違いない事だった。
そうでなければ、あれほど年の近い男と二人きりなんて許されるわけがないのだ。
サウスフィールド公爵は、二人が恋人同士になっても構わないと思っていると考えるしかなかった。
それに比べて僕は……。
剣術が得意なわけでもない。
ルーファウス家を継がなくてはいけないから、サウスフィールド家に入れるわけでもない。
……アリアナのハーレムに選ばれる事もない。
まあ、ハーレムに入って嬉しいわけでもないけど。
けど、ジェイリーにしろ、アルノーにしろ、誰にしろ、アリアナが誰かと結婚することに我慢できるだろうか。
想像するだけでこれほどまでにゾッとするのに。
アカデミーに入って、アリアナと会話できるようになった。
理由はあるものの、二人でパンケーキを食べる事もできた。
そのせいで、欲が出てしまったのかもしれない。
足掻いてもダメなことを知っていても。
好かれていないことを知っていても。
それが、気持ちの一つも伝えず、仲良くなることも拒否して、距離を取る理由にはならないはずだ。
このままでいいなんて、思ってるわけじゃないんだ。
君の隣に居たい。
カポカポと歩く馬の上で、青い空を眺める。
綺麗なものを見た時に、思い出すのはいつだって君の事だ。
「どこまでなら、許されるかな」
呟くように言う。
まるで独り言だったのに、有能な弟子は聞き漏らす事はしなかった。
「お前なら、なんだって大丈夫だと思うよ」
「プレゼントはどうかな。花束とか」
言うと、アルノーが吹き出した。
「アリアナしか目に入らないやつは怖いな。そのままプロポーズでもしてしまいそうだ」
「していいものならやってるよ」
「何の迷いもないんだな」
「アリアナ以外、欲しいと思ったものがないからね」
「花束だってドレスだって、アリアナちゃんはお前からの物は受け取ると思うよ」
レイノルドは、ひとつため息を吐く。
「そりゃあ、幼馴染みっていう意味で、貰ってくれるだろうけどさ」
パンケーキを二人で食べにいく事だって、受けてくれたくらいなんだから。
アルノーは一度空を見上げて、
「その考えは、よくないな」
とだけ呟いた。
◇◇◇◇◇
アルノーはかなり優秀な弟子だと思います!がんばれアルノー!
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