31 1週間(1)

 朝。

 いつものように、馬車はのんびりと走る。


「アリアナ、学校は慣れた?」

「ええ」

 アリアナの楽しそうな表情に、ロドリアスとジェイリーも笑顔になった。


 新学期が始まって1週間。


 校舎の玄関ホールで二人と別れるのも、だんだん慣れてきた。

 一人、教室へと向かう。


 途中、廊下で、エリックが女の子達に囲まれて、にこにことお喋りしている場面に出くわした。


 案の定というかなんというか、人当たりのいい王子様は、すぐに女の子達に囲まれるようになった。

 かといって、男友達がいないわけでもない。

 ただ、王子様とお近づきになっておこうという女生徒がとにかく多かった。


「やぁ、アリアナ」

「おはよう、エリック」


 挨拶を交わす。

 必要以上に王子が寄ってくる、必要以上に近い会話。


「今度の休日、お茶でもどう?」


「え、ええ」


 そんなに近づかなくても聞こえる。

 と思いつつも、ハーレム候補なのだし、と思い直し、こちらからも寄っていく。


「楽しみにしてるわ」


 周りの女生徒からも、「おはようございます!」と口々に挨拶の声がかかる。

 女生徒に囲まれている人間から親しくされるなんて、いじめの入り口では?なんて思ったのも束の間。

 女生徒達は、王子とアリアナが交流する事を、否定する事はなかった。

 王子と公爵令嬢が仲がいいのは仕方がないと思っているのか、いつも隣に居るせいか。はたまた、ただの友人だと思っているせいか。



 レイノルドも、公爵令息というなかなかの地位を持つけれど、王子ほど目立った存在ではない。


 アリアナが、レイノルドを見つけた時には、廊下で数人の男子と穏やかに話しているところだった。


 新学期から1週間、数人の友人ができたようだ。

 学校に馴染んでいて、少しほっとする。


 けれど、女の子達はどうやら近づき難いと思っているようで、できた友人は男子ばかりだ。


 しらっと通り過ぎようとしたけれど、レイノルドと目が合った。

 目が合ったからには、無視するわけにもいかないか。


「おはよう、レイ」

「ああ、おはよう、アリアナ」


 にこやかに挨拶したのにも関わらず、どこかしらムッとした声が返ってくる。

 やっぱり、仲良くできないみたいね。


「おはよう、アリアナ」

 にこやかに近づいて来たのはアルノーだ。

「おはよう、アルノー」


 そこに居るとレイノルドの空気が一段と悪くなりそうだったので、立ち止まらずに教室へ向かう。


 声をかけてきてくれるみんなと、挨拶を交わす。

 中等科の時は、友人こそ多かったものの、みんなどこか、よそよそしかった。

 公爵令嬢というだけで、親から何か言い含められるのだろう。

 こんなに仲良くしてくれる友人は居なかったんじゃなかっただろうか。


「アリアナさん!」

 後ろから小走りに走ってくるのは、アイリだった。

「おはよう」

「おはようございます!」


 この子ともすっかり仲良くなれたようだ。


 幸先いいじゃない?


 にこにこしながら、アリアナは教室へと入っていった。



◇◇◇◇◇



アリアナとエリックは幼馴染みなだけあって今でも仲良しです。

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