8 お久しぶりのティーパーティー(2)

「ああ」

 この国の二大公爵家のもう片方であるルーファウス家長男、レイノルド・ルーファウスだ。

 透き通るようなプラチナブロンドの髪。ペリドットの瞳。

 この上なく綺麗な顔だけれど、

「君も来てたんだね、アリアナ」

 すでに機嫌は悪いようだ。

 レイノルドはスンとした顔でそっぽを向いた。


 嫌な奴が相手でも。

 嫌な顔に、ならないように。

 笑顔を、絶やさないように。

「お久しぶりね」

 アリアナはにっこりと笑った。


 どれだけ綺麗な顔でも、コイツはハーレムには要らないだろう。

 私が一緒に居て嫌な奴がハーレムに居ても、仕方ないものね。


 アリアナとレイノルドは、キアラを挟んで座った。

 レイノルドの隣のエリックが、レイノルドに向かってニコニコと笑いかける。

 レイノルドは機嫌を悪くするばかりだ。


 アリアナとレイノルド、そしてエリックは、同い年ということもあり、小さな頃からの幼馴染みだった。

 子供の頃は何度も3人で遊んだ。

 アリアナがレイノルドにちょっとした怪我を負わせて以来、なかなか会わなくなってしまったけれど。


 幸いな事に、王家とそれぞれの公爵家は仲が良くても、公爵家同士はそれほど仲良くはない。

 サウスフィールド公爵に言わせれば、仲良くしてはいけないのだそうだ。

 王家を挟まずに公爵家同士が仲良くしてしまうと、貴族派だ革命だと騒ぐ輩が出てくるから、らしい。


 今でもまだ、怪我を負わせた事を恨んでいるんだろうか、なんて思ってはみるけれど。

 当時、ちゃんと謝罪はしたし、何も言われていないのに気負うような態度をするのも、おかしな話なわけで。


 けど。


 主人に興味はなくても、その付き人には、ある。


 レイノルドの付き人である、アルノーだ。


 ルーファウス家は“王の盾”とも呼ばれる、王家直属の大魔術師の家系だ。

 アルノーは、そんなルーファウス家長男といつも一緒にいるだけあり、魔術の素質もなかなかいいらしい。

 ハーレムにするなら、ルーファウス家と繋がりのある魔術師を囲っておくのも、悪くない。


 跳ねた赤茶の髪。人懐っこさが滲み出る表情。

 なかなかいいじゃない?


 アリアナは、ジェイリーの隣に立つアルノーと目が合うと、手を振った。

 そんなアリアナに、ジェイリーも手を振ってくれたし、アルノーもにこやかに振り返してくれた。


「公爵家の人間が何やってるの。アイツらは従者だよ」

 口を出してきたのはレイノルドだ。

 エリックがクスクスと笑う。

「アリアナはいつもこうなんだ」

「いつも……?」

 レイノルドの顔はより一層不機嫌になる。

 エリックがレイノルドに笑いかける。

「護衛とも仲がいいみたいでさ。家がそういう方針なんだろうな」

「アイツらは仕事中だよ。公私混同しててどうするのさ」


 む〜。

 確かに従者と仲良くするのは、家の方針だ。

 ルーファウス家の統制力と違って、サウスフィールド家の方針はいつだってこうなのだ。

『上下関係を越え、背中を預けられる従者を持て』

 みんなが家族のように一丸となって戦えるように。

 信頼できるように、言葉を交わすのが推奨されているのだ。


 貴族としてはそうかもしれないけど。

 家の方針が違うんだから、ほっといてくれたらいいのに。


 アルノーを攻略するには、やっぱりコイツが障害になるみたい!



◇◇◇◇◇



ジェイリーとアルノーはけっこう仲良しです。

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