6 私の家族

 1週間もの期間、倒れた事は外に漏れる事はなかったけれど、家の中にまで言わないのは無理がある。


 そんなわけで、翌日は、両親と兄弟達のお見舞いの時間が設けられた。


「お父様、お母様。こんな姿で失礼します」

「ああ、アリアナ……」

 アリアナはベッドで両親と再会した。


 茶髪で、髭を蓄えた美丈夫が、父親、“王の剣”サウスフィールド公爵。

 その隣の金髪の麗しきご婦人が母親だ。


 実際には1週間だけれど、長い夢のおかげでとても久しぶりに会ったようだ。


 長い夢の事を思い出す。


 左門の両親は、いつだって忙しくて、家には居なかった。

 その分祖父が面倒を見てくれていた。


 アリアナの両親も忙しく、こうして会う時間すら、簡単に取れるものじゃない。

 けれど、長い夢を見た今ならわかる。

 あまり会えなくても、両親はちゃんと愛してくれている。

 それに、両親以外にも、大切にしてくれる家族がいる。

 サナやジェイリー……、屋敷のみんな。


 それに兄弟達。


 サウスフィールド家の兄弟達は仲がいい。


 跡目争いをする必要がないからだろう。


 この国では、あまり長子相続は推奨されていない。

 一番能力が高い者が家を相続する事が、何より家の為になるという考えからだ。


 サウスフィールド家の子供達は4人。

 とはいえ、王の剣と呼ばれる騎士の家を継ぐからには、剣の腕が必須になってくる。

 長男のロドリアスはその点、剣の腕が天才的だった。

 それに比べて、あとの3人は、運動音痴の母親似なのか、どちらかといえば、勉学や芸術に秀でている。

 ロドリアスがこの家を継ぐ事は、この家の総意だ。


「姉様!」

 弟のアレスがベッドに飛びかかってきた。

「アレス!姉様が困ってるわ」

 ズカズカと割って入りながら、妹のルナがアリアナに抱きつく。

「お前も一緒じゃないか」

 追いやられたアレスが、むぅっとした。


 ロドリアスが優しい表情で笑う。

 髪色こそ父と同じ茶髪だけれど、細身で優しげ。これで、剣の達人なのだから、人間見た目ではわからないものだ。

「二人はアリアナが大好きだからね。昨日までは泣いて大変だったんだ」

「なっ……」

 それを聞いたアレスが顔を赤くした。

「泣いてたのはルナだけだよ」

「あら!毎日姉様の様子聞いては涙を浮かべてたのは、どこの誰だったのかしら!」

「ルナだろ!」


「ふふっ」とアリアナが笑いながら、弟と妹を抱きしめる。

「心配かけちゃったね」

 抱きしめると、二人は思いの外、素直な笑顔になった。


「姉様、元気になったら全員でお庭をお散歩しましょう」

「いいわね」


 懐かしい騒がしさ。

 主治医のオリバーも明日からは食堂で食事をしてもいいと言っていた。

 明日からはまた食堂でみんなとおしゃべりできるだろうか。

 普段から食事時以外はあまり会えないけれど、感じられる暖かな空気は、ここが自分の居場所だと、教えてくれるかのようだった。



◇◇◇◇◇



妹が一番の末っ子です。

次回から、物語が動きます。

イケメン登場〜!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る