第2話

時刻は夜中の二時半。どうやら一時間ほど外にいたらしい。僕は自分の部屋に戻り、すぐにこの懐中時計について調べた。しかし、ネットでいくら探してもそれらしい情報が載っていない。仕方がないので自分で調べることにした。偶然にも、僕は工業系の学校を卒業したため機械の扱いには慣れている。

リビングから静かに工具箱を取ってきた。

十五分ほどかかったが、蓋などをはずしこの時計の仕組みを見ることができた。僕は動揺した。中には何もないのだ。普通、時計の中身にはゼンマイなどの部品があり、それによって針が動いている。しかし、この懐中時計にはそういったものが全くなく空っぽなのだ。

だが僕は妙に納得した。この時計を見つけたときから一本しかない針は動いていないのだ。針を動かす仕組みがないのならば針は動くはずがない。

しかしなぜこんなものが農道に落ちていたのだろうか。しばらく考え込んだが、僕の頭もこの時計と同様に中身がないということを思い知らされた。見当もつかない。

その後も状況は変わらず時間だけが経った。私はだんだんとこの懐中時計への興味が薄れていき、飽きてしまった。だが、このまま持っているのも申し訳ないような気がしてきた。落ちていたとはいえ、俺は人のものを勝手に拾って持ち帰ってしまったのだ。少し悩んだが、俺は懐中時計をもとあった場所に戻すことにした。つまり、もう一度農道まで行くことにしたのだ。


先ほどと同じ装備で外を出た。一つ違う点があるとすれば、それは右手に懐中時計を持っていることだ。時間が経ったせいか、虫の鳴き声が小さくなった。自分の足音がよく聞こえる。

野生動物に気をつけて歩いていると枝分かれの道が見えた。その先には農道もある。一時間前のように農道を進んでいくと、僕はあることに気がついた。車がない。車があったのはこの辺りで間違いない。

僕はどうするか迷ったが、懐中時計を地面に置いた。そして、そのまま帰ろうとした。すると突然、田んぼの中から草木が擦れるような音が連続して聞こえた。風は吹いていない。恐怖を感じた僕は駆け足で家に戻った。後ろを振り向く余裕はなく、ひたすらに走った。


五分ほどで家に着いた。あの音の正体はなんだったのか。ベッドで横になりながら僕は深呼吸をした。心が落ち着いた頃には空が薄い青色になりかけていた。

「夜更かししちまったな。」

独り言を言った後、僕はそっと瞼を下ろした。

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夜更かしの朝 もも団子 @momodango2525

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