夜更かしの朝
もも団子
第1話
一日が終わる。
今日何かしただろうか。僕は瞼の裏を見ながら考えた。しかし、空っぽの頭を働かさせても何も浮かばない。無駄な時間だけが過ぎていった。
いつもならすぐに眠るのだが、今日はなかなか寝付けない。十分、二十分と時間が経ち、近所の家の電気はほとんど消えていた。眠りを妨げるものはない。だがいくら時間が経っても眠ることができない。
睡眠薬が欲しくなったが、そんなもの家にはない。
そうだ、散歩をしよう。僕は思いついた。運動をすれば少しは眠たくなるだろうと考えたのだ。
懐中電灯を持ち、寝室にいる両親にバレないよう抜き足差し足で庭から道路に出た。
僕が住んでいる場所は、周りが山に囲まれている田舎町だ。建っている家の数よりも住民が少ない。
夜は特に静かで暗い。虫の声が鮮明に聞こえ、月明かりが眩しく感じるほどだ。そのため雰囲気があり、散歩がより一層楽しくなる。
僕は歩み始めた。コオロギの鳴き声が心地良い。そんなことを考えながら歩いていると、道が三つに枝分かれになった。山の方へ行く道。車通りの多い道路へ続く道。農道。
山には猪や猿などがいるため近づきたくない。
また、車のライトはせっかくの雰囲気を壊しかねない。僕は農道を歩くことにした。しばらく進むと車が一台止まっているのが見えた。俺は気になって早足で近づき、懐中電灯の光を当てた。
三十七年間生きてきたが、初めて見る車だ。軽トラックぐらいの大きで、壺を寝かせたような、歪な形をしている。前は小さく、後ろがやたらと大きい。
エンジンはついておらず周りに人はいない。
車をよく観察していると、左前輪が側溝にはまっていることに気がついた。
農道は道幅が狭く、両サイドには広大な田んぼに水を送るための側溝がある。そのため車がそれにはまることがよくある。この車も例外ではなかった。
できれば車の救出を手伝いたいと考えたが、持ち主がいないのではどうしようもない。
僕はそんなことを思い通り過ぎようとした。すると、車のすぐそばに落ちている何か光るものが目に映った。俺はすぐにそこをライトで照らした。懐中時計のようなものが落ちている。俺は恐る恐るそれを手に取り観察した。少し錆びているが、別段古いものでは無さそうだ。スイッチがあったので押してみると、蓋が開いた。やはり懐中時計だ。しかし、不思議なことに、時計には数字の代わりに零から三十八までの漢数字が、円を書くように細かく書かれている。しかも、針は一本しかなく三十七時を指していた。僕は、怪しいものではないかと疑ったが、何か話のネタになればいいという軽い気持ちで持ち帰ることにした。
コオロギの鳴き声はまだ聞こえる。
早足で来た道を戻り、静かに家の中に入った。
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