第2話 杏の激昂

☆茂山杏サイド☆


私は声が出せない。

何故出せないかといえば。

家族以外に言葉をあまり発せない。

その理由は分かっている。


私が強烈なPTSDを発症しているから。


PTSDが何なのかは分かっている。

友人が自殺して血まみれだったから。

その姿を見てから言葉が発せなくなった。

いわゆる失語症の様なものに近いとは思うが。

学校にも行けなくなった。


その中で。

私はとある人に全てを救われた。

その人は私を太陽の様に照らしてくれる。

名前を豊島裕さんという。

私が.....恐らく。


初恋をした人だ。


色々な場面であまり声が出せないが。

その事を笑う事もせず。

私を必死に守ってくれた。

だから私は裕さんが好きだ。

だけど.....裕さんは別の女性と付き合い始めた。


でもそれから今日に至るが。

何かおかしい気がする。

一体何がおかしいのか分からないが。


だけど何かおかしい。

思いながら私達は帰って来てから。

意思疎通用のスケッチブックを持ってから直ぐに私は家を後にする。

ポシェットを持ってから。

そして裕さんの家に来てからインターフォンを押す。

裕さんも帰っている筈だ。


ガチャッと音がする。

鍵が外れる音。

それからドアが開いてから私を見て驚愕する裕さん。


お兄ちゃんは私に慌てて駆け寄って来る。

どうしたんだ!?、的な感じで。

普段あまり家を出ないからであろう。

私は直ぐにスケッチブックに記載した。


(お兄ちゃんから違和感を感じたから来た)


そう書いて見せる。

するとお兄ちゃんは苦虫を噛み潰した様な。

そんな顔になってから笑みを浮かべる。

それから、何もないよ、と柔和な表情を浮かべる。

私はそれを聞いてから書いた。


(それはない。お兄ちゃんは隠し事が下手だね)

「.....杏ちゃん.....」

(私達は1年以上のお付き合い。だからそんなのは通用しない)

「本当に何もないよ。うん」


私はその言葉に唇を噛む。

ゴロゴロと雷の音がしてくる。

その音を聞きながら、お兄ちゃんのばか、と書く。

それから大きく見せる。

お兄ちゃんは目線を逸らしながら、取り敢えず上がって行かない?、と聞いてくる。


(上がるに決まっているでしょ。お兄ちゃんの隠し事を知るまでは)

「知るって.....いやいや」

(私は知りたい。貴方が何を隠しているのか)

「.....」


一生懸命に頷きながら反応する私。

するとお兄ちゃんは、まあ取り敢えず入って、と話す。

私はその言葉に室内に入る。

それから玄関を閉める。

そして私はお兄ちゃんに抱きついた。


「ちょ!?ま!?な!?」

(お兄ちゃんが抱きついて欲しそうだったから)

「そんな事言ってないんだけど!?」

(私が思いました)


それは誤解なんだけど、と慌ててお兄ちゃんは私を引き剥がす。

それから、君は仮にも美少女なんだから行動をわきまえないと、と話してくる。

私は首を振る。

そして、私は美少女だけど。.....そんなのどうでも良い、と書いた。


「.....そうか」

(うん。お兄ちゃん)

「.....知りたいのは何だ?」

(そうだね。お兄ちゃんの隠し事)

「.....」


私は直球で聞く。

どんな些細な事でも良い。

だから教えて、と私は縋る。

するとお兄ちゃんは、君にはキツイよ、と言う。

まだ教えてくれないのか。


(私だけ貴方に私自身を教えるのって嫌なんだけど?)

「.....まあそうだな.....」

(けち。お兄ちゃんのアホ)

「むっちゃ罵倒されているね」


私は頬にめいいっぱい空気を入れて怒りながらそっぽを向く。

するとお兄ちゃんは天井を見上げてから私を見る。

そして、浮気されたと思う、と語った。

私は、え?、と目をパチクリする。


「男と一緒に居るみたいでな。りん」

「.....!?」

「.....それで落ち込んでいる」

(そんなの.....え?)

「そうだな。そういう反応になるよな?」


愕然としながら、それって本当に?、と書いた。

するとお兄ちゃんは、ああ。ラブホに入ったしな、と答える。

私はスケッチブックをバサッと落とした。

そして涙を浮かべる。


「あ、杏ちゃん!?」


お兄ちゃんが寄り添って来る。

私は涙は浮かべたが。

悲しい訳じゃない。

メチャクチャ悔しいのだ。


はっきり言ってそんなの穢れている。

と同時に。

私自身の怒りが襲ってきた。

舐めすぎだ私達を。

私はゆっくりとスケッチブックを拾った。

それからガリガリと怒り混じりに筆圧を強く書いた。


(お兄ちゃんはこのままで良いの)

「良いわけは無いけど。だけどどうしようもないしね」

(なら私が説得する。許せない)

「.....有難いけどどうしてそこまでするのかな」

(私がお兄ちゃんが好きって事だよ。それだけ。だから私は絶対に許さない)


お兄ちゃんが文章を見てから驚愕する。

怒り混じりで全てがバレたが。

まあもう良いや。

そんな事を気にしている場合じゃない。

私は.....どうしたら良いのだ。

この怒りをどうしたら.....良いのだ?

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義妹がNTRました。そして義妹の友人が..... アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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