森道中―夜―【ドゥミ・スプソン】




 昼の内に、オウゴンオオカブトを見つけ出すことは叶わなかった。空が赤みがかってきたため、四人は大森林の開けたところで野営をし、一泊することにした。

 スヴァルが結界を張って、クレイとカインの二人が【収納空間ストレージ】から寝袋やらテントやら、その他野営道具を準備する。残るジンテツは一度クレイに預けていたものを回収してから、石を囲んで枝を折ってくべ火を焚きあげた。

 結界を張り終えたスヴァルは、料理器具と食材を並べ揃えているのを見て訊ねた。


「騎士くん、その肉はなんだい? 見たところ、鳥類のだよね?」

「ロックバード」

「え? 昼、なんか騒がしいなって思ってたけど、そんなヤバいの仕留めちゃってたの?」

「うん。だから、今夜はとびっきりの馳走ができるで」


 不適な笑みを浮かべるジンテツに、スヴァルは苦笑で返した。

 テントを張り終えたクレイとカインの鼻が、美味な匂いに擽られる。振り返れば、ジンテツが料理をしているところで、二人は興味を惹かれて近づいた。


「サクラコさん、お料理をしてますの?!」


 カインがあまりに意外な光景を前にして驚いた。


「悪いかよ?」

「いや、悪くはありませんけど。できましたの?」

「めんどクセェからやんないだけ。できないわけとちゃうわ」


 ジンテツは淡々と答えた。

 正直に言えば不安、とカインは内心で心配した。野生を地で行くようなジンテツが、ある意味で対照的な料理をするところなんてまったくイメージが湧かなかった。

 精々、丸焼きにしたのをなんの恥ずかしげもなく「これが料理だろ」と原始的極論を謳うのが彼に似合う。

 まさか、バサバサとその得物で切り分け、串に刺して焼くというのか。やりかねない、と三人の妖精は揃って固唾を飲んだ。

 しかし実際は――――ちゃんと料理をしていた。

 包丁で食材を食べやすいサイズに切り分け、順当に熱が通りにくいものから鍋へ投入している。

 オリーブオイルやバターといった調味料も用いて、枝の足し引きで火の加減も調整してと、誰が見てもそれは文化的行動に違いなかった。

 だが、カインとスヴァルは安心するどころか思っていた以上に普通だったことに仰天と落胆が混雑し、ズッコーン!!? と崩れた。


「おいおい、塵が立つからあんましはしゃがんといてよ?」


 のんびりとたしなめられ、二人はなぜたか悔しい気持ちになった。それを端から眺めるクレイは、クスクスクス、と口を押さえて笑っていた。

 ジンテツは三つの蓋のされた厚底鍋を火に吊り下げていた。内一つは、別の焚き火にあって、残り二つの鍋からは、辛みと甘味と別々の芳ばしくまろやかな匂いが漏れ出ていた。

 スパイシーな芳香からして、程々に刺激のある辛いものだと察したスヴァルは焚き火から二歩退いた。


「何をお作りになられているんですの?」


 カインが訊ねた。ジンテツは鍋の様子をじっと見て、答える暇もないといった様子だ。

 離していた鍋の蓋がカタカタと震え、白い湯気が昇った。それを目にした瞬間、ジンテツは即座に鍋を火から離して地面に置いた。


「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、一握りの藁燃やし、赤子泣いても蓋取るな――――っと」


 歌いながら火を消して、ジンテツは蓋を取った。すると、蒸せる熱を放つ湯気と共に厚底鍋一杯に真っ白な米が詰まっている様が四人の目に写った。

 クレイには心当たりがあって、一際驚いた。


「ジンくん、これって」

「ゴーシュから貰ったやつ」

「ああ!」


 クレイは合点がいったが、カインとスヴァルはなんのことやらさっぱりだった。二人して顔を見合わせて、肩をすくめている。


「へぇ~、米を届けてくれたんだ」

「クレイ嬢、まさかとは思いますが、先程サクラコ様の言われたとゴーシュというのは?」

「うん、ゴーシュ卿のことだよ。最近、色々あってね」


 カインは目を丸くさせた。ゴーシュ卿と言えば、ドラグシュレイン区の貴族の中でも聡明なことで有名な皇立政府セラフィム所属の役員だ。

 特に農業への関心が高く、それに関係した事業を興しては成功させたという話題が一番に挙がる。

 以前、ジンテツは誰と変わらない態度をとっていたが、普通ならそう接することが憚れるかなりの大物だ。


「ゴーシュ卿と来たら、気に入った相手に自分に納められた品を譲るって噂があるけど、実際に王族以外でそうされた人を見たのは初めてだね」


 スヴァルが感心し、カインも同意するように何度も深く頷いた。


「正直、あのときはヒヤッとさせられたけれど、ゴーシュ卿程の方に出会えたのは儲けだったかもね」

「本当に何があったのかな? 儲けどころかお釣りが出せるでしょ」

「まあね」


 三人が狼狽えている内に、ジンテツは残り二つの厚底鍋も開放した。一つには黄色みがかった茶色い水と固形の間に位置するソースのような粘液が、もう一方からはバターの風味が香る野菜とロックバードの肉が入っていた。


「これってもしかして」

「東南部の海域で発祥したとされる、カリー?」


 クレイ、カインと目の前の晩食を言い当てた。スヴァルはなんだそれ、という風に首を傾げていた。


「それって、美味しいの?」

「スヴァルは種族的に、熱いのがダメだから知らないのも無理ないわね。このカリーって、とっても辛い食べ物でね、だからスヴァルには相性が――――」


 クレイは途中で口をつぐんだ。

 マズいことを言いかけたと彼女は思っていたが、別にスヴァルは気にしていなかった。

 種族の壁は誰にでもある。共有できないのはもどかしいが、こういうものがあると知れるのはスヴァルにとってそれ程苦ではない。


「大丈夫だよ。アタシは冷やせばなんとかなるし」

「でもスヴァル様、確か辛いのって得意な方では」

「確かに汗をかかされる系はキツいけど、飢え死にするよりマシ。それに、今の季節ならまだ一晩で戻れると思うし。平気、平気」


 スヴァルは満面の笑みで言った。

 気まずい空気が妖精達の間に立ち込めた。それもこれも、原因は料理をチョイスしたジンテツにあるのだが、文句を言うにも気分が引ける。


「安心しろ。これはただのカリーじゃないから」


 ジンテツの声が、三人の間を通り抜けた。


「辛さ控えめ甘味マシマシのマイルド仕様だ。具材にもバターを漬けて蒸したから、辛そうに見えてかなり甘い。なんなら、一口いっとく?」


 木彫りの匙でカリーを一掬いし、クレイ達に差し出すジンテツ。火を止めたばかりのため、湯気が立っていてとても熱そうだ。


「私がいきますわ。料理のことでしたら、クレイ嬢よりうるさく言える自信がありますので。それに、私は熱さに強いですし」


 カインが挙手した。

 クレイの反応からして、日頃は料理していないのだろうと推察しての積極的な毒味だ。

 ジンテツから匙を受け取り、恐る恐る口に含む。すると、急に悶絶してその場に伏した。


「カイン!? ちょっと、大丈夫?」


 クレイの呼び掛けに肩を震わせるカインが上げたときの顔色は、笑みを我慢しているようなふにゃふにゃな表情だった。目にした二人は、思わず押し黙った。


「ど、どう?」

「お、美味しゅうございます。大変、美味で······」


 カインは涙を浮かべていた。

 相当辛かった、というには反応が些か恍惚としているようにも見える。今にも溶け落ちそうな頬を包んで、ちょっと可愛らしい。


「どうよ」


 自慢気に微笑むジンテツに、カインは憎たらしいと語る眼差しを向けて答える。


「おいしィーですよ!! 飛びっきり、おいッ! しィー

ッ! ですッ! これで満足ですの?!」


 悔しそうに叫ぶカインを見て、ジンテツはご満悦な陽子だ。

 というわけで、ジンテツの作ったロックバードと野菜のバターカリーを皆で食べた。スヴァルは霜を生やして、ガリガリと食事では絶対に出ないような咀嚼音を流した。

 感想は、食べやすいと非常に好評だった。食感も喉ごしも柔らかく、野菜は噛み応えが程々に残されていて、ロックバードの肉は噛んだ瞬間から溶けるように解れた これに加えて、甘さマシマシの辛みと反則的な味わい。

 クレイはもう、泣くしかないと思った。自分がいくら努力しても、ここまでの出来映えに至ることは決してないだろうと、受け入れがたい圧倒的料理力に羨望や嫉妬を飛び越えて、崇拝の域に達しそうだった。

 カインも、最早不安も躊躇も跡形もなく消し去られ、クレイと同様に半べそをかきながら食べていた。ナッツレールの実家では一流の料理人を雇っているが、それと比肩するか凌駕するかのところまで差し迫る。

 残るスヴァルは、二人程の感動は無かったものの、感心が深まっていた。彼女だけは貧乏舌である。

 食事を堪能し終えた三人は、ジンテツを見張りに残して三人は付近にあった浅い河川を風呂代わりに入ることにした。



 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎



「あぁ、ホント、クレイ嬢の騎士ナイトくんはなんでも出来るねぇ~。羨ましいよ」


 髪をかき上げながら、石垣の向こうからスヴァルが言った。


「確かに。奴隷の身であれだけの料理の腕前は、かなり珍しいですわね。元々はいいお家に生まれたのでしょうか」

「そうそう」


 二人がジンくんを称賛してくれるのは嬉しい。だけれど、同時に不思議に思った。

 カインもスヴァルも、ジンくんが黒霧の怪物なのはとっくに知っている筈。なのに、まるでその事を見逃しているような様子だ。

 何より驚きなのが、あのカインまでジンくんを称賛していることだ。昼までは顔を会わせるのも嫌という程険悪な仲だったのに。


「そこまで言わなくても。あれくらいなら、カインのお家の召使いにだってできるんじゃない?」

「そう言われますと、確かに頼めばやってくれそうではありますが、いざあそこまで完成度を高くできるかどうかはやはり難しいところかと」


 私もそれなりに美味しいものは食べているけれど、ジンくんの料理はかなり衝撃的だった。アリスに言ったら対抗心燃やしてちょっかいをかけてきそうだから、教えないでおこっと。


「それにしても、騎士ナイトくんって本当に何者なんだろうね」


 スヴァルが不意に言い出した。


「何者って、そりゃあ······」


 あ、どうしよう。と思った私は、言おうとした口を結んだ。

 自分でもなんだかわからない輩を、私が端的に纏められるわけがない。だから、スヴァルの今の質問が一番困る。


「なんで、そんな急に?」


 代わりに、質問を返すしか思い付かなかった。


「だって気になるじゃん? 奴隷ってことは、元々は悪いことをしてたんだよね? 何やったんだろうねぇ?」


 こうなったときのスヴァルは厄介だ。本格的に、ジンくんに迫ろうとしている。

 今までは、警戒していて積極的に近づこうとしなかったのに。

 切っ掛けはやっぱり、ビルアの街での決戦? いや、スヴァルは前々から当たりをつけていたから、探りを入れてくるにしても今更すぎる。

 どうして、今になって······。


「スヴァル様、他人の過去をほじくりかえすのは、感心しませんわよ」

「カイン······」


 まさかの助け船だった。本人としては、単にそういうしつこい態度に嫌悪感を抱く性分だからかもしれないけれど、正直助かった。


「ふーん······。ねえ、カイン。君、昼に彼と何かあった?」

「ひゅ!」

「さっきのロックバードの肉を見るに、あれの襲撃されたところを助けられたってところかな? カインのことだ。彼に意識を割いて油断していたんでしょ? 想像がつくよ」


 スヴァルは見透かしたように言った。カインの顔が真っ赤になっている。この動揺ぶりから、スヴァルの予想は的を射ているらしかった。


「ねえ、クレイ嬢。教えてよ。彼は、あの野生動物をどこで拾ってきたのかな?」

「······」

「ただの訳アリとは違う。前にも言ったよね? 長引けば長引くほど、何て言ったっけ――――」


 こんなに容赦の無いスヴァルは久し振りだ。表情は笑っているけれど、本心はそうじゃないのが伝わってくる。

 本当のことを言ったらどうなる? 隠してきたことを洗いざらい吐露したら、彼女達はどんな顔を私に向けてくる?

 想像すると、後ろめたさで胸の奥が締め付けられた。

 二人は大事な親友だ。彼女達に隠し事をするのは心苦しい。

 スヴァルが言ったことの続き――――『余計に彼を縛る鎖が伸びる』。

 これは、ジンくんに対しての仕打ちだとばかり思っていた。今思い返せば、いっそ明かしてしまった方が私にとっても楽なんだと、スヴァルは遠回しに訴えていたんだ。

 脅されている。そうとも捉えられるけれど、本意は私に対する警告を込めた心配。

 私はジンくんと接して、彼の人となりを知った。だからこそ、私は彼を善人にしようと思った。滅茶苦茶だけれど、悪いウサギさんじゃないと確信して。

 けれど、端から見れば彼は最恐の怪物。誰からも恐れられ、嫌われる存在。無法の獣。

 ただでさえ記憶を失くしているのに、これ以上の不安を懐かせたくない。

 どうすれば受け入れてくれる?

 どうすれば、ジンテツ・サクラコは楽になれる?

 考えても、考えても、泥沼に沈んでいく気しかしない。

 こんな重荷を抱えていくくらいなら······――――――――。


 そう思い至ったとき、私の身体は川辺の湯船から飛び出していた。なぜだか、彼のところに行かなきゃって、無性にかきたてられた。

 パジャマに換装して無我夢中でテントに戻ると、ジンくんは木に寄りかかって寝ていた。髪の毛は白に染まっている。

 今夜は満月で月明かりが強く、彼の白髪はいつもより輝いて見えた。そして、身体の周りにはたくさんのステルンベルギアの花が咲いていた。

 ブランケットとか暖かなものをかけていないから、見ているこっちが余計に冷えてきそうになる。


「寒く、ないのかな······」


 正直に言えば、不安が全く無いわけではない。

 ふとして、ジンくんには記憶が無いことを考えてしまう。その際、釣られて出てくるのが――――記憶を失う前と後のジンテツ・サクラコの相違。

 物語フィクションの悪い影響なのかもしれないけれど、もしかしたら今の性格は元のとは全くの別ものなんじゃないか。記憶が戻ったら、今までの全部が虚構になって、いきなり袂を分かつことになるのではないのか。

 図々しい傲慢な悩みだと、自分でもイヤになる。最後に決定権があるのは、ジンくん本人なのに――――。


「······」


 私は目にかかったジンくんの絹糸のように柔らかく軽い前髪を、指でそっとずらした。

 見れば見る程、キレイすぎる。

 頬を指先で撫で下ろして、顎に落ち着かせる。

 恐ろしいとも思えるこの美麗の中には、猛々しい本性が詰まっている。

 もっと近くに、寝息が当たるまで顔を寄せる。

 この口は、今までどんなことを吠えてきたんだろう。

 この花は、今までどんなひとの血の匂いを嗅いできたんだろう。

 この足は、今までどんな苦境を踏み越えてきたんだろう。

 この手は、今までどんな痛みに触れてきたんだろう。

 この目蓋の裏で、どんな幻想を描いているんだろう。

 この心の奥底で、どんな真実が眠っているんだろう。

 想えば想う程、もっと近づきたくなる。

 重なりたくなる。


「――――」


 ······あれ? なんか、唇にやんわりとした感触がする。しかも、温かい。


「んんッ?!!」


 いつの間にか閉じていた目蓋を開けた瞬間、私は心臓が弾けそうになった。

 急いで距離を置いて、唇を手で押さえつける。動悸を力ずくで止めながら、状況を端的に整理する――――とか思いつつも、そんなの端から見ても一目瞭然でしょうが!


「私、ジンくんと······き、キキキキきぃ~いーィ~???!」


 うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァやっちまったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――――――――!!!!!!!!!!


「私、無意識で?! いや、なんで?!! なんで私、はぁァァァァァァッ!!!?」


 待て待て待て、落ち着け! 落ち着くんだクレイ!!

 冷静に、冷静に······なれるわけないでしょーがこのバカちんがァァァァァァ――――!!!


「はぁ······なんだって私は、あんなことを······」


 私は膝を抱えて踞った。

 まともにジンくんの顔が見れない。というか、ジンくんに顔負けできない。

 信頼してはいるけれど、恋愛そこまでの感情は持っていない。少なくとも、身分が違くても対等な関係。アリスやカイン、スヴァル皆となんら変わらない。

 そうやって、ずっと接してきた筈なのに······。


「······んぅ~······」


 ジンくんはまだ寝ている。

 何も言わなければ、バレない。バレたとしても、彼ならなんとも思わずに「あっそ』の一言で呆気なく流しちゃうんだろうな。それはそれで、また複雑なのだけれど。

 私はジンくんの顔を見ないように、テントへ逃げた。寝袋を頭まで被って、焼けるように熱い胸を痛みを我慢して押さえつけながら、眠りにつく。



 因みに翌日、気まずい空気のままカブトムシ探しを再開するも、結局見つけることができなかった。

 カルス様は残念そうにしていたが、逆に見つからなかったことで却って安心したと本人は言った。――――完全に気を遣わせてしまったわ。無念。

 ぶっちゃけ、探す必要が無かったと思ったのは私だけではないと思いたい。

 それと今日一日、不思議なことが二つあった。

 一つは、スヴァルが頭を下げて謝ってきたこと。昨晩は酷く言いすぎたって訳らしいけれど、私も彼女なりの親切心を無碍にしようとしたのが引っ掛かっていたから、お互いに落ち度があったってことで仲直りできた。

 もう一つはジンくんのこと。ずっと彼を見ていたのだけれど、昨晩のことは全然覚えていないみたい。でも、なんだか気を張り詰めさせていて、ずっと何かを警戒しているみたいだった。

 ――――私が寝た後、なんかあったのかな?





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