幻想起点【ファンタジー】




 ジンテツの発する暗黒の噴煙は、スヴァルの監督するパーティが籠城している氷の砦からも見えていた。

 見張りをしていた受講生がそれを確認し、拡声魔術を用いて下の者達に伝えたことで一斉に動揺が渦巻く。

 これはいかんと、スヴァルが二度拍手をして宥める。


「はいはーい! みんな、落ち着きましょーねー!」


 パーティの震えはすぐに収まり、見回したスヴァルは嬉しそうに笑う。しかし彼女の心中は、誰よりも警戒し、緊迫していた。


 黒い霧? それってまさか、黒霧の怪物がいるってことだよね? おかしくない? アレが居るっていうのは北東。真逆の方角じゃん。まさか、受講生の中に紛れていた? ありえない筈だけど、その線でいくと可能性があるとすれば、あの魔力をほとんど持ってないっていう野兎くんかな?


 監督する冒険者には、事前に受講生達の情報が渡される。特に、性格と能力面には目を凝らしていたから、野兎くんことジンテツ・サクラコの資料はより印象的に写った。

 魔力量は『000.01』という異例の低さ。系統バランスも軒並み最低限な上に属性も備わっていない。

 どれだけ技能や知能が優れていても、これでは『F』に割り振られて当然の筈だ。これで『A』クラスに置かれたというのだから、誰しもが驚いた。

 しかしスヴァルだけは好感を懐いた。ジンテツ・サクラコの魅力的な部分が性格にあるからだ。

 素行が粗野でありながらも、彼の最初の偉業である魔法陣の構想テストで易々と高難易度魔術を効率的に構成させた発想力の持ち主。挙げ句の果てには、パーティ内にいるアルフォンス・オカルティクスが所持している魔導書の制作まで成し遂げた。

 魔術を全く使えない身でありながら、魔術師として最も重要視されるスキル。魔術の発想力と構成力が、他よりも段違いに卓越している。

 これでジンテツ自身が魔術を使えていたら、想像するだけでゾクゾクさせられる。なんて惜しい。

 けれど、これによってスヴァルは一つ疑念が沸いた。  ジンテツが学園に編入したのを皮切りに、きっぱりと黒霧の怪物に関する進捗が途絶えてしまったことだ。

 彼女も黒霧の怪物の調査に関与したことがあり、縁に恵まれなかったようで邂逅は叶わず仕舞いだった。

 クレイが珍しく退いた案件ということもあって、かなり注目していた。そのため、スヴァルは残念に思っていた。

 だが、ジンテツが現れたことで一つの可能性を見いだした。


 ジンテツ・サクラコ=黒霧の怪物


 今、黒い噴煙に向かえばこれが仮定ではなく断定となる。なんとかパーティを落ち着かせて、駆けつけようとスヴァルは口を動かそうとする。――――が、それより前に動き出す一陣の風が横を通り過ぎた。

 振り返れば、小柄な人兎の後ろ姿が白髪を揺らしながら段々と遠くなっていくのが見えた。


「あれは、ヨシノ?!――――みんなはここに残って。絶対に出ちゃダメだからね!」


 スヴァルは砦から飛び出して、シラの後を追う。

 行き先は、黒い噴煙の上がる惨状の舞台。



 ++++++++++



「ゴルゥアァァァァァァァァァァァァ――――!!!」


 突如、咆哮と血飛沫と共に出現した最恐の権化“黒霧の怪物„。

 シェリルが見てそうと判断するまで、間は空かなかった。いつからか消息が絶たれ、この地を去ったとまで言われていた怪物が、オーガンの腹を裂いて顕現した。

 壮大な圧力に茫然とし、親友と憧憬を失った絶望がまっさらにかき消される。


「オ前、ナンダ?! ナニモノダァー?!!」


 悲鳴をあげるようにしてオーガンが訊ねる。


「俺は、俺だァァァァァァ―――――!!!」


 猛々しく吠えながら、オーガンの腸の底を穿つ勢いで頭と腕を突っ込み、大きく跳躍して距離を取る。

 口元には血肉にまみれたリングエルを咥え、腕に若干鱗が爛れたフェリヌスが抱えられていた。


「リン! フェリヌスさん! よかった······」


 安堵し、呟くシェリル。絶望が拭われ、うっすらと明るい笑みを浮かべる。

 オーガンは傷を埋めて治したが、体躯が三メートルまで縮んだ。回復するために、近くにいたシェリルに手を伸ばす。が、掴んだと思っていた人馬は跡形もなく消え、代わりに黒い霞が手中に収まっていた。


「ヌ?!」


 驚愕し、首を傾げるオーガン。

 ジンテツに向き直ると、左腕を馬体の背に右手を人体の腰に回して器用に抱えていた。


「なに、ボーッとしてんだよ」

「お前は、ジンテツ・サクラコ、なのか······?」

「あ? 寝惚けてんの?」


 シェリルは、ジンテツが黒霧の怪物であると確信していた。そうとわかっていながらも、不思議と恐怖が沸かなかった。寧ろ、今までにない喜びがシェリルの顔を熱くさせている。


「よかった、生きていてくれて――――きゃ!」


 嬉しさのあまり、抱きつこうとするシェリルであったが、直前でジンテツが腕を離して落とされる。


「お前は少し離れてろ。こっから先は、俺の狩場なわばりだ。巻き込まれたくなかったら、とっととそいつら連れて行きな! いいな?」

「············」


 シェリルは恍惚とした表情でジンテツを見上げていた。


「惚けてる暇があるならとっとと行け! その四本足はなんの為にあるんだ!」

「わ、わかった! 気をつけろよ!」


 シェリルは急いでフェリヌスを背負い、リングエルを拾って急ぎ足で走り去った。


「ったく。一々、うるせんだよ。めんどクセェ」


 呟いて、ジンテツは拳を強く握り締める。

 向かう先では、オーガンが態勢を整えていた。回復を終わらせて膝から手を離し、ずっしりと地を踏みしめて構えていた。


「オ前、懲リズニマタ私ト戦ウカ? ドウセ、マタ喰ワレルダケダ。潔ク、私ノ腹二収マッテイレバイイモノヲ······」


 ジンテツはオーガンの膝を見て、ニヤついた。


「おいおい、震えてるぜ? 腹から血がドバドバ出たんだし、あんまり無茶するもんじゃないよ? それに、これは戦うんじゃねェ――――――――ぶっ殺すんだよォ!」

「フン。戯言ヲ!」

「ケケッ。滾らァ、滾らァ! 取り敢えず、徹底的に獣懸けものがかっていくぜェェェェェェ!!」


 ジンテツは駆け出し、飛び上がって、オーガンに向けて乱暴に足を振るって襲いかかる。すぐさまオーガンは回避して、地面が大きく砕けた。

 土埃が昇り、晴れた地点はジンテツを中心に大きく窪んでいた。これを見たオーガンは、ただの食物から驚異の害敵へと認識を改める。

 今、目の前にいるのは、野を駆け回る野兎ではなく、餓えて牙を剥けるケダモノ。

 まるで異質。考えることをやめた殺戮衝動の塊。


「ダガ、マダ痛ミハアルダロー!」


 オーガンは数十本の触手を伸ばして反撃する。

 捕らえようと迫る触手郡をジンテツは隙間を縫うように軽やかに躱して、落ちていた白鞘を拾い上げ、一薙ぎ振るって全て切り捨てた。

 そのままの勢いを絶やさず、触手を切り落としながら急接近、オーガンの腹を切り裂きながら真上に跳躍、オーガンがすかさず両腕を肥大化させて挟み込むようにしてジンテツを拘束し、圧迫。

 しかし刃が生えたかと思えば、止まること無く無秩序に暴れ回る、オーガンの手をバラバラに解体して、ジンテツは得物を大きく振りかぶった。


「デ・ミ・ハァァァァァァンヌッ!!」


 叫びながら振り下ろし、ザシュッ! とオーガンを肩から袈裟斬りに掛け、深い深い斜め一閃の傷を与える。

 真っ赤な温かい血が噴出し、頭から被って全身が深紅に染まっていく。


「グワァァァァァァ!!! オノレ、オノレオノレオノレオノレオノレオノレェェェェェェイッ!! チョコマカチョコマカト、煩ワシイ!! イイ加減二喰ワレ――――」

「ッるせェー!!!」


 オーガンの顔面に突然、ジンテツが足を付き出してめり込んだ。靴底の型がくっきりと残って体が大きく仰け反るが、辛くも立て直す。

 その隙に、ジンテツは距離を詰めてオーガンの頭部に何度も回し蹴りを繰り出して血飛沫を撒き散らす。

 蹴りと蹴りの合間には流れるように斬撃も交えて、短く悲鳴をあげながらオーガンの頭部はみるみる凹凸を激しくし、裂傷も増やしていく。

 反撃の隙を与えられず、緩むことなく連続して蓄積されていくダメージ。

 肉が弾かれる音と切り裂かれる音がする度に、真っ白な大地に、真っ黒な木々に、オーガンから噴き出される真っ赤な体液の飛沫が散り散りに、歪な斑模様が彩られていく。

 一瞬、攻撃が止んだかと思えば、ふらふらと揺れる腕を引っ張られて「ドォォォォォォ、ルァッ!!」と、最も重いドロップキックがクリティカルヒット。

 ひび割れるように肉が破裂し一段と激痛が噛みつく。

 オーガンの頭部は凹みや裂傷で痛々しく、見るに耐えない有り様に成り果てていた。


 ドウナッテイル?! ナゼ、?! ナゼ、ナンダ?!!


 オーガンはひどく狼狽えていた。

 相手はたかが一羽の野兎。

 弁えを知らない一羽の野兎。

 恐れを知らないだけのたった一羽の野兎。

 それなのに、まったく喰える気配がしない。

 オーガンの魔式は強力無比。肉体に触れたものをその時点で溶解し、吸収する凶悪な暴食。

 それがまったく機能していない。

 この力の最たる利点は、喰えば喰うほど体が巨大になり、比例して力が増す。逆に拭えない弱点として、傷を負えば負うほど体が収縮し、肉体の強度が衰えてしまう。

 どういう理由かは定かではないが、このまま防戦一方、攻撃を許し続ければいずれは野兎の戯言が現実のものとなってしまう。

 そんな屈辱、味わいたくない。オーガンは無数の棘を生やして身を包み、攻防一体の形態となった。

 この形であれば、防御も可能となり、同時に攻撃も叶うとして、高を括った。


 だが、無駄でしかなかった。


 ジンテツは迷わず接近し、剣ではなく、左足を大きく振るってオーガンを思い切り爽快に蹴り飛ばした。

 ピンボールのように地面と木々を跳ね回り、棘と肉片がポロポロと崩れ落ち、血が飛び散ってまたも肉体が収縮。落ち着いたところで、間髪入れずにジンテツが刃を刺し込んで木に打ち付ける。


「オ前、カハッ······痛ミヲ、感ジナイノ、カ······」


 ジンテツの左足はオーガンを蹴った際、棘に貫かれていた。絶えず流れ出る血は、地面に広がって染み込んでいく。

 “普通„なら、激痛に悶え、立つことすら儘ならないところ。しかしこの狂獣は、折れない、挫けない、倒れない。


「それがどうしたよ? あぁ?」

「グゥウ······」

「痛ぇ。痛ぇーよ。無茶苦茶に痛ぇーさ。だからなんだ? なんでそんな程度のことに、昼飯を諦めなきゃならないのかなァ!」


 ジンテツは痛みなど棄てたと表明するように左足で、オーガンを木諸とも蹴り倒す。追撃しようと白鞘を振りかざすが、オーガンの挙動に不審を抱き、急停止する。


「ポォォォォォォ――――」


 起き上がったオーガンの口が、螺旋を描いて筒状の突起物に変化していた。

 空気の流れが一点に集約していくのを肌で感じたジンテツは、すぐにその場から離れようとするが、左足がついていけず動きが遅れる。

 その隙をついて、オーガンは貯蓄した空気の砲弾を放つ。

ボォーォォォォォォ!!!」と、地を大きく貪り、周囲の木々や黒霧をも巻き込んで強烈な衝撃波が襲い掛かる。

 荒れ狂う暴風に上半身が仰け反りながらも、脚力で耐えきろうとしたジンテツであったが、あえなく土煙の中へ吹き飛んでいった。


「ハァ、ハァ······――――コレデ、モウ······」


 仕留められた。ようやく、オーガンは安寧を手にしたと息をつく。

 元の首無しの巨人の形態に戻り、どすんと重く腰を落とす。


「ココマデシタノハイツブリカ。バラバラニナッテシマッタダロウナ。探スノ二一苦労スルダロウガ、マア、イイ、仕留メラレタノナラ――――」


 安堵したのも束の間。刹那、オーガンはただならぬ殺気を感じて身体が固まる。

 視界を上げると、全身がぼろぼろなジンテツが暗黒の霧中に仁王立ちして構えていた。

 最早、傷の規模と数ははオーガンより勝り、血で肌は真っ赤に、藍鉄色だったローブは砂利を被ってすっかり白と黒が入り雑じっていた。

 立つどころか、意識さえ保つことも難しい筈の痛々しい状態。それでも、黒霧の中から突き刺してくるジンテツの瞳孔は、鋭利になって活力が溢れていた。


「おいおいおいおいウォーイッ!! どれだけ俺を焦らせば気が済むんだよ、オイ!! こっちは結構我慢してるんだぜ? 腹ァグゥーグゥーグゥーグゥー喧しいわ、とにかくひもじィんだよ!! 背と腹が引っ付きそうなんだよ!! ええ加減に仕留められろや!! マジで鬱陶しいんだよ!!! いつまで俺を苦しめるつもりだ、アァ?!! 取り敢えずさァ、お前ガチでェ、フズァァァァァァけンじゃァァァぬェェェェェェェェェェェェ――――――――!!!!」


 ジンテツの怒号が森中に反響する。

 正に滅茶苦茶。狂乱怒濤。

 どうしようもない衝動の矛先を突きつけられ、オーガンは戦慄を覚えた。

 どれだけ恐れさせようとも、どれだけ傷つけようとも、まったくもろともしない。

 ただタフなだけでは決して片付けられない、野兎の度を超えた野性。

 心臓を打ち付けられるような強烈な威圧感に、オーガンの目は恐怖を写していた。

 獰猛、凶暴、それらが可愛く聞こえるくらいにまで、ジンテツ・サクラコという存在が歪な怪獣に見える。

 捕食者は自分ではなく······――――そう認識した瞬間、己の死を嫌でも予感させられ、底無しの戦慄が沸き立つ。

 喰われたくない、喰われたくない、喰われたくない、喰われたくない、喰われたくない――――!!!


「来ルナ······来ルナ······――――コッチニ、来ルナァァァァァァ!!!」


 苦し紛れに、オーガンは腕を伸ばした。

 これは殺す為の攻撃ではない。生きる為の攻撃だ。

 生き延びる為の必死の抵抗。

 だが、こんな程度で折れてくれる程、ジンテツの牙は脆弱でも寛容でもない。

 オーガンの腕を正面から刃で受け止め、両足を踏ん張って両断しながら走り出す。距離が縮まっていき、腕から胴へと刃の道を繋いで、腸にすっぽりと隠れる程に奥深く刃を押し通して、清々しく斬り割く。

 ジンテツのけたたましい咆哮と、オーガンの悲鳴が騒がしく森を木霊する。

 大量の血液と腸に詰まれていた残骸がドチュドチュと地面に無造作に流れ出て、みるみる惨状が出来上がる。


「どォーや! ちくしょー!! ゴルゥアァァァァァァ――――!!!」


 大きく身体を仰け反らせ、天を打ち鳴らさんばかりに勝利の雄叫びを張り上げるジンテツ。その様には、理性も知性も感じられない。

 生意気な野兎はどこにもいない。ただ命を刈り取るためだけに存在しているような、ぶっ壊れた怪獣だけが君臨している。

 それの足元に広がるは、かつて害悪なる敵だった醜く汚い、油臭い生肉の残骸。


 黒霧の怪物、“迷惑の森ミュルクヴィズ„を征す――――。



 ++++++++++



 スヴァル・ストライクは目の前の出来事に驚愕していた。どう反応していいのかわからず、消去法で選んだように苦笑を浮かべている。

 シラを追っている最中、進行方向から立て続けに爆音が響いてきて只事でないことを察した。

 遅れて駆けつけてみれば、黒霧の怪物と臓物の魔獣が殺し合っているところだった。

 今まで、様々な人外を見てきたスヴァルでも、初めて見るこの二体の存在には思考を停止させられた。

 わかりやすかったのは、黒霧の怪物。

 臓物の魔獣を圧倒し、戦々恐々とさせた威圧感と存在感。相手をしているわけでもないのに、喉元に剣を突きつけられているかのような気分だった。

 また、シラの様子も不審に思った。

 黒霧が確認されたと同時に、我先にと動いた謎の行動力。そして、黒霧の怪物を見るシラの表情は、まるで不可思議だった。

 なんとも嬉しそうで、胸に手を置いて懐かしく思っているようにも見える。とにかく、とてもこの惨劇を前にして不相応な顔をしていた。

 臓物の魔獣が倒され、黒霧の怪物が高らかに吼える。

 耳を塞いでも鼓膜を破りそうな雄叫び。声量といい、張りといい、大型のドラゴンといい勝負だ。

 スヴァルは決断した。ここで黒霧の怪物を倒そうと。

 しかし出ようとした瞬間、臓物の魔獣の死骸が僅かに動いたのが見えた。そしてすぐに、血肉を掻き分けて、ガラスの骨が姿を現した。

 背中を向けている黒霧の怪物に、鋭利な爪を振り下ろそうとしている。


「危ない!」


 シラが叫び、刀に手を掛けると同時に、天から一筋の雷光が落ちてきた。轟音をあげ、ガラスの骨を跡形もなく粉砕。同時に、白黒の世界が崩壊して色が戻る。

 雷光の中から現れたのは、細剣レイピアを打ち立てたクレイだった。

 黒霧の怪物が振り向き、顔を会わせると笑う。


「やっほ······」


 スヴァルは焦燥感にかられた。

 お世辞無しで【真珠兵団パール】屈指の実力を持つ冒険者と、ドラグシュレイン区最恐の野良魔物クリーチャー

 とんだ怪獣大戦が勃発するとスヴァルは身構える。だが、彼女の予想するような展開にはならなかった。

 クレイは細剣レイピアを【収納空間ストレージ】に納めて、黒霧の怪物に接近した。彼女から全く戦意が感じられない。


 何を考えているんだ?!


 疑問に悶えるスヴァル。しかし、それは蔓延する黒い霧と共に晴れることとなる。


「また、いっぱい無茶したね······」


 クレイが悲しげに言うと、黒霧の中から酷く傷ついた黒髪の人兎属ワーラビットが倒れてきた。親友に優しく抱き止められ、そのまますやすやと眠りについて髪の色が根元から真っ白に染まった。

 スヴァルは、その人兎に見に覚えがあった。彼女自身が注目していた、稀代の問題児ジンテツ・サクラコだ。


 なんで? え? マジで······?


 止まない疑問符にスヴァルは頭を抱え、今見た現状から、胸の内で燻っていた説が立証されたと確信する。


 黒霧の怪物=ジンテツ・サクラコ――――大正解。


 疑問が解消された爽快感と、なんてこったと危機感が複雑に絡み合う。

 何よりも震撼するべき実態は、クレイが受け入れているということだ。ジンテツを抱き止めた彼女の顔は、まるで絵に描いたような聖母の慈愛に溢れた微笑みだ。

 何を、どうして、どうやって、どのように、どうしたら、こんな奇々怪々な光景が出来上がるのか全然理解できない。


 いや、人の良い彼女のことだから推察できないこともないけど――――


 とにもかくにも、これは捨て置けないとしてスヴァルはクレイ達の前に重々しい足取りで出ていった。


「これはこれは奇遇だね、クレイ嬢」

「······スヴァル!?」


 クレイはスヴァルを見て、顔を青くした。ジンテツを見て、慎重に口を動かす。


「その、カルス様から森に異変があったって聞いて、急いで駆けつけてきたの。そしたら、なんか······」

「そうだね。アタシも驚いたよ。まったく、何がなんやらで受講生達も叫喚しまくりだよ」

「そう······」


 スヴァルは笑顔でいたが、クレイは彼女の表情を見たまんま受け取らなかった。何故なら、親友だから。

 親友だからこそ、この場合に対してどう思っているのか容易に想像がつく。

 クレイは基本、友好的なスタンスでいる。相手が例え野良魔物クリーチャーでも、武力を行使する前に可能な限り話し合いで説得を試みる。

 対して、スヴァルは対極だ。北方の蛮族の出身で、思考が過激で極端なのだ。

 相手が盗賊だろうとチンピラだろうと、問答無用で責苦を与える。情状酌量の余地があっても関係無い。

 二度と下らない過ちを犯さないように必要以上に痛め付けて更生を促す。場合によっては、永久凍結させることも屡々。

 仲間に対して情が厚く頼もしいが、敵にはとことん容赦がない。

 そして、それを何の疑りもなく『親切』と笑顔で言ってのけるのが、“氷血嶺ブルー・ブラッド„スヴァル・ストライクだ。

 ここは慎重にならなければならない。一か八か賭けてみるか、とクレイは危うい行動に出る。


「スヴァル。多分、今忙しいと思うのだけれど、手伝ってくれない?」

「手伝うって、君の腕の中にいる黒霧の怪物の隠蔽を?」

「······ッ!?」


 クレイは押し黙った。その反応から、やはり、とスヴァルは残念そうに自身の額に拳を付ける。


「やっぱり。その野兎くんがそうなんだ。いけないんだぁ~。確か黒霧の怪物は銀級魔物レベルシルバーだったっけ。銅級ブロンズ以上は原則、捕縛か討伐。前者の場合は、【黒曜兵団オブシディアン】に身柄を預けて拘束する。それをしなかった挙げ句に、未来ある若者達に混ぜ込むなんて。『国防委員ケルビム』や『皇立政府セラフィム』に知られたら、一体何を言われることか」


 野良魔物クリーチャーの危険度は低い順から、『鉱級ストーン』『鉄級メタル』『鋼級スティール』『銅級ブロンズ』『銀級シルバー』『金級ゴールド』と例外を除けば六段階で振り分けられている。

 主な推定基準は、対象の種族、魔力量等は勿論。被害内容に逃亡期間。何よりも性格と能力の厄介さ。

 下三段は盗みや恐喝といった程度のもの。殺人容疑が挙がれば『銅級ブロンズ』より上に認定される。

 そして『銀級シルバー』は冒険者十人以上で対処し、『金級ゴールド』ともなれば一ギルドが総動員を導入してかからなければならない規模となる。

 また、捕縛された野良魔物クリーチャーは国内唯一の監獄である第七号学園ギルド【黒曜兵団オブシディアン】に必ず収容しなければならない決まりだ。

 これに背けば、少なくとも謹慎は免れない。黒霧の怪物の悪評次第では、冒険者資格の剥奪もあり得る。

 落胆したスヴァルは、冷徹な眼差しを向けた。


「それに、アタシ以外にも野兎くんの正体を知っているのいると思うよ。少なくとも、一人はね」


 野良魔物クリーチャーと共謀関係にある者も、同様の処置が取られる。

 スヴァルはシラのいるところに目を向けたが、そこに彼女の姿は無かった。

 全く気配を感じなかった。逃げ足の速さに、軽く口笛を吹いて感心した。氷の砦に戻ったのだろうと思って、シラは後回しにする。

 それよりも、先程のスヴァルの発言にクレイはまた図星を刺されたようだった。やはり、協力者がいる。

 シラかどうかは別として、この妖精姫は誰かに誑かされてしまったのだろうか。まさか、野兎の顔の良さにやられたのか。そんな面食いではなかった筈。危ないロマンスに憧れていた気はあったが‥‥‥。

 考えれば考える程、親友として哀れでならない。――――まったく、世話が焼ける。


「まあ、アタシが黙っていられるような温かい性格じゃないのは、クレイ嬢が一番知ってるよね? 悪いことは言わないからさ。そんな爆弾抱えてたら、火傷じゃ済まされないのはわかってるでしょ?」


 スヴァルの周囲に霜が立つ。すると、クレイはジンテツを強く抱き締めた。右手を肩に、左手を後頭部に回して、断固として拒否しているようだ。


「これはちょっとなぁ~」


 猫のような警戒心を向けられ、困り果てるスヴァル。

 クレイの頑固な性分は周知の事実。だとしても、何を思って銀級魔物レベルシルバーを懐に抱えているのか。

 親友に教えてくれないあたり、相当に複雑な事情があるのは容易に察せられる。

 葛藤を覚えるが、考えるだけ無駄だ。

 無駄ならば、無理にでもへし折るのがスヴァルのやり方だ。例え親友クレイを泣かすことになっても、親友の安全を優先する。

 空気がさらに冷たくなる。吐く息が白く色付いて、肌につんざくような刺激が伝う。


「クレイ嬢、考えて。隠すのが長引けば長引くほど、余計に彼を縛る鎖はキツくなる。クレイ嬢がよかれと思っていても、実のところはクレイ嬢が一番彼を苦しめているんだよ。その事に気づいてるの?」


 心苦しいのを我慢して、スヴァルはクレイの良心を利用する手段に出た。

 親友以前に国民として尊ぶべき第二皇女なのだ。そんな大事な存在が愚かな道を辿ろうとしているのなら、何が何でも止めるのが責務というもの。

 最終的に力ずくでも阻止してやる。

 スヴァルの冷厳な覚悟に対して、クレイは――――


「それでも、それでも私は‥‥‥このウサギさんを信じてる。私の“幻想„に、彼も一緒に連れていきたいの」


 クレイの澄んだ翡翠の瞳から強い意志が感じられた。――――何があっても、彼を手離さない。

 スヴァルはジンテツに目を向け、嫉妬と憤りを覚えた。――――止むを得ない、力ずくでも。


「あ、あそこです! あそこにいます!」


 二人で睨み合っているところに、シェリルが急ぎ足で戻ってきた。後から区衛兵が数名ついてくる。


「これは、クレイ嬢に、スヴァル嬢!?」

「キミは?」


 不機嫌のスヴァルに訊ねられ、シェリルはピンと背筋を伸ばす。


「はっ! 私はシェリル・グルトップと申します。その、クレイ嬢の抱えられているジンテツ・サクラコと同じパーティの者で」

「そう。じゃあ、彼をお願いしていいかしら」

「は、はい!」


 クレイはジンテツをシェリルに渡して、他のパーティと合流しようと区衛兵を引き連れて向かう。途中で微笑みを浮かべるスヴァルから、「話は後でじっくりと」と囁かれてずっと顔を青くしていた。


 事態が終息した後、スヴァルの判断により冒険者資格試験は中断。

 ビル・ヒューキは死亡。

 フェリヌス・ミリーメットは瀕死の重症。

 幸いにも一部を除いて受講生達に怪我は無かったのだが、迷惑の森ミュルクヴィズ騒動は多くの若者にトラウマを植え付けた大事件として、新聞や週刊誌の一面に飾られた。

 尚、行方不明者が一名――――ヴァーグ・ティーヴァ。



 ++++++++++



 ヴァーグこと、ヴェルゴーニャ・テウメッサはジンテツとオーガンの戦闘に乗じて、逃げおおせていた。

 かのバケモノ達と同じところに行けば、今頃、形を保てていたかもわからない。これ以上の依頼の継続は無理と判断した。

 迷惑の森ミュルクヴィズが消失して景色が元通りとなり、ギルドからの追手も無いようでほっと胸を撫で下ろす。


「まさか、あそこまで激化するなんて、予想外でしたね」


 黒霧の怪物の出鱈目さは前々からわかっていたつもりでいたが、その中身、ジンテツ・サクラコの本質を垣間見たことで依頼達成は本来の意味で十分と言える。

 これなら依頼者も満足するだろうと、足を急がせた。

 人目につかぬよう足場の悪い道を行き、しばらく進んだら気配が無いのを確認して木の陰に身を潜めて一息つく。非常食の味のしないスティックを齧り、スタミナを回復させていく。


「彼といると、凶事が耐えませんね。まったく」


 ヴェルゴーニャにとって、この一年は死期の連続であった。これより長期間の案件はいくつもあるが、終始濃密な体験をしたのは初めてだ。

 恐ろしくも、心をくすぐられる学園生活は中々に楽しくかった。いっそのこと素性を隠し通して、本当に受講生時代を謳歌するのも悪くないとも思った程に。

 ジンテツのような、居るだけで空気を変える存在は非常に稀有だ。

 それこそ、世界最強の人外と認められたものに与えられる称号“聖王„に迫るかもしれない。

 無能と罵られても笑い飛ばし、因縁をつけられても自身を貫き通すその気概は眩しく見え、素直に称賛したくなった。一時でも、肩を並べられたのが嬉しい。


「浸ってはいられませんね。私は意地汚い狐。このまま、影も形も残さず、卑劣に退散するのみです」


 体力が戻って、ヴェルゴーニャは立ち上がる。

 瞬間、何者かの視線を感じた。振り返ると、木々が並ぶだけの閑静な景色のみ。


「気のせい、でしょうか?」


 向きを直ると、目の前に男が立っていた。

 身に纏った裾がぼろぼろのキャソックも、肩までない毛先の跳ねた髪も、清澄な烏の濡れ羽色をした若い男だ。

 右手には黒い本を持ち、襟元の翡翠のブローチが目を引く。そして、左手には正十芒星模様の刻印がある銀の懐中時計を開いていた。

 突如、気配を感じさせずに現れた男にヴェルゴーニャは動揺するも、鼻腔に入り込んだラベンダーの香りで男の正体に感付く。


「この匂い······まさか!」


 この男こそが、ジンテツの調査を依頼した宗教家だった。

 男は、優しい顔をしていた。しかし、その朗らかな笑みからはこれっぽっちも色彩が無く、瞳の奥はまるで底無しの空洞を覗いているようだった。


「やあやあ、ヴェルゴーニャ・テウメッサ。このようなところで、奇遇なものだな」


 優しい口調。されど同じく、爽やかとは程遠い。どこか不安を憶えさせられる。


「そうですな。やっと顔が見れて、嬉しく思いますよ。お客様」


 ヴェルゴーニャは警戒心を強く懐いて腰を低くした。

 なぜ今になって顔を晒して現れたのか、その意味を考えるだけで汗が止まらない。


「そう固くなるな。我は、なんじの働きの成果を聞きに訪れただけだ。こうも長い時間を掛けてくれたのだ。さぞ、有意義なことなのだろう?」


 男は懐中時計を閉じて、ヴェルゴーニャへ手が届く距離まで歩み寄った。


「まあ、それなりには。相手が相手なので、少々難儀してしまいましたがね」

「ハッハッハ! 構わん。汝より上手く立ち回れた者など、五指で数える程もいないだろう。もとより無期限の依頼だったのだ。文句は無い。勤労、痛み入る」

「はぁ······」


 ヴェルゴーニャは男の労いを素直に受け取れなかった。それ以上の強い違和感に惑わされて暇が無かったのだ。

 何がと訊かれれば、よくわからない。ただ単純に、本能を揺さぶられるというのか、ジンテツと向き合ったような感覚。否、それよりも重いプレッシャーだ。

 見た目はなんの変哲もない二十代半ばの好青年。気さくで、朗らかな雰囲気を保っている。――――が、筆舌し難い異常な空気が漂ってくる。

 彼がいることで、空間にそれが充満していくような恐れを孕んだ不快感を思わせるのだ。

 無抵抗を強制させられているような息苦しさが、ヴェルゴーニャの首を締め付けている。


「知っているか? 迷惑の森ミュルクヴィズの真相を」

「え?」


 きょとんとしたヴェルゴーニャに構わず、男は喋る。


「あれは現象ではない。厳密には一つの巨大な生命体だ。蒼穹を覆い尽くす程に、途方もなく巨大な人外なのだ。休眠期間が長くてな、その間は空に擬態しているのだが、地上に降りてくるのが百と幾年に一度。まったく、手間を・・・かけさせてくれたわ・・・・・・・

「······それはまるで、あなたが迷惑の森ミュルクヴィズを引き連れてきた、みたいな言い様ですね」

「事実、そういうことだ」


 ヴェルゴーニャは愕然とした。男の言う通りだったとしたら、全ては掌の上で踊らされていたことになる。

 いつから? 本試験のとき? それ以前? まさか、依頼したときから······?!


「なんの為に? なんの理由があって――――」

「あの野兎だ」

「なんですって······?」


 男は意味深に微笑み、ヴェルゴーニャの周りを歩き出す。


「迷える子羊ならぬ仔兎、ジンテツ・サクラコ。我の狙いはアレの“真なる覚醒„だ」

「真なる、覚醒······?」

「うむ、そうだ。今、かの野兎は暗き茂みの中を駆け回っている。未来も過去も見通せぬ程の、暗い暗い旅路だ。しかし、それはアレの真意ではない。だから、導いてやらねばならないのだ」

「言っている意味がわかりかねますね。一体、あなたの狙いはなんなんですか? どうしてそこまで、彼に拘る?」


 振り払うような強い語気で訊ねられ、一蹴し終えてから男はゆったりと正面を向いて答える。


「“まつろわぬ古の英雄„と“救世と奇跡の申し子„、その再来と回帰。さすれば、天地がひっくり返り、いつかに途絶えた神話が甦らん。其即ち――――『幻想起点ファンタジー』!」


 両手を広げ、身体で十字架を作りながら言い切った男の迫力にヴェルゴーニャの恐れは最高潮に達した。

 意味のわからない言葉が緩やかに羅列され、まるで怪文書の内容そのもの。だが、男はまるで満ち足りているというような、恍惚とした表情を浮かべていた。


「汝はよくやった。汝はよく働いてくれた。我はそれだけで深く感謝している。よくぞ、かの“獣の王„に数多くの刺激を与えてくれた。この調子であれば、“時„は近い」


 はっきりわかった。この男は人類ヒューマンでありながら、言葉の通じる類いの輩ではない。

 こいつは腹の中に、途轍もなく得体の知れないを闇を買っている。そういう類いの、“人外„だ。

 ヴェルゴーニャは尻尾に手を伸ばし、飛び退きながらダガーを取り出して投げた。

 一直線に男に向かったダガーは、進むに連れて錆に犯され、届くことなく塵となって消滅した。


「別に、誰かに話すようなことはしませんて」

「わかっている。だが、それでも知りたがりはいるのだよ。我を除けば、八······いや、七人程な」


 男は懐中時計を懐にしまい、ヴェルゴーニャを見た。

 明確な敵対心。ヴェルゴーニャは自身に付与を施そうと魔法陣を展開す――][――崩壊。身体中を漆黒の杭が貫いて、血を吹き出しながら倒れる。


「がっ······え······?!!」


 何が起きたのか、全くわからなかった。

 男は、目の前で悠々と黒い教典を開いていた。なにかをした様子は無い。

 攻撃されたタイミング、魔術の瓦解。

 気づけば、全てが成立していた。目に見えなかったとか、そういう感覚の次元ではない。

 ヴェルゴーニャは本能的に、そう覚った。


「あなたは、一体······なに、もの······」


 今にも意識が薄れそうな最中、ヴェルゴーニャは訊ねた。


「『己の抱えた疑念は、他者の理解で汲み取るべし』――――汝の謎に解を与えよう」


 男は微笑み、一度目を閉じて教典から顔を上げる。


「あまねく者共は、我をこう呼んで慕い、恐れ、敬っている――――“逆天世界リヴァーサル„、と」


 ヴェルゴーニャは驚愕した。

 この世で最も恐れられている、十名の白金級魔物レベルプラチナム。総じて彼等彼女等は、こう呼ばれている。

 “魔帝候補„――――災害に並ぶ金級魔物レベルゴールド以上の危険度を誇り、またそれとは別に一国以上の影響力を持つとされている、知性を有した天変地異。

 そして、“逆天世界リヴァーサル„という名はそれ等の中で最も早く、最も広くに周知された第1位の座に君臨する最強の野良魔物クリーチャー

 世界最大の宗教団体の長を勤める聖職者の頂点が、同時にならず者の頂点など、どんな冗談であろうか。


「すまないな。時間が押しているのだ。長引かせたくはない。汝の“時„は無駄にはしない。とくと、己の勤労を誇ることだ」


 男、逆天世界リヴァーサルは懐中時計を見ると、ヴェルゴーニャの頭を撫でてどこへと姿を消した。

 ジンテツと言い、眼前の魔帝候補第1位といい、つくづく不幸の絶頂だと笑いが込み上げてくる。


「はは······」


 視界がどんどん霞んでいく。

 身体が徐々に重くなっていく。

 男の足音が遠くなっていく。

 薄れて、薄れて、渇れていく。


 全てが、烏の濡れ羽に消えていく············。





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