第九話 初めての交戦

「......お前ら、そいつを離してやりな、離さなければそこに......」


俺は、その少女を知っている。ルリアだ。

もし、この国の大公令嬢が行方不明になれば、この国は混乱に陥るだろう。

なんというか実は、ずっと前から尾行ストーカーをしていた。

魔力が強い3人になぜかつきまとわれていたからな。

まあ、とりあえず脅すか。


火炎ブレイズをぶっ放すぞ」


俺は、浮遊魔法を作動させながら、小さな威圧...声と共に、微量の魔力を放つ。

だが...


「ふはは、おいおいガキ...ちょっと威圧する相手が違うぞ?」


やつは、手をひらひらと上下左右にうごかして煽ってくる。


「俺たちは、Bランクパーティーだからな」


すぐ真下にいた仲間が鉄の剣を持ちながら、飛んでくる。

流石、Bランクだ。身体能力が現世ではもちろん、普通に今まで見てきたやつとは比べ物にならないだろう。


風刃ウィンドカッター


「そんなぁ、攻撃ぃ、甘いなぁ」


剣を持つ男は剣を斜めにして、風刃ウィンドカッターをいなした。

剣技も美しく、まるで.....俺の後輩くらいの剣技だった。


「...チッ...」


だが、風刃ウィンドカッターを受けた男は、速度を減速してしまい、俺に刃が届かなかった。あと、50cmあたりで届いていたのだがな。


「降りてあげようかな」


俺は、浮遊ふゆうの魔法をやめた。少しは慣性が残っているため、着地するときはそこまで強い衝撃にはならなかった。


「ふっ」


男は、剣を右側から左側と、横に薙ぎ払う。現在、俺は身体障壁しんたいしょうへきがついているため、致命傷にはならないだろうが、相手はBランクなので、対抗しておこう。



俺のよく使う道具、弓だ。武器の中では、一番好きな武器だ。なんというか...ちょこちょこ撃っていれば勝てるし。


「くそ、火属性魔法を付与していやがるな...」


「俺も手伝う...」


「騎士を舐めるなよ」


こいつらは、クエストでも剣士・騎士・魔術師のパーティーなんだろう。

やはり、ずいぶん連携が取れている感じがする。


火球ファイアーボール


「二進双法」


右からは騎士が、そして左から剣士、真ん中からは火球ファイアーボールが飛んでくる。こんな状況、普通なら詰んでしまう。だが.......


「お前ら、上を見ておけ!!!」


俺は、走り出す。少女に向かって...走り出す


「逃がすかぁ.....っ!」


「もう遅いんだよ」


俺は、少しだけ前のときに、ある魔法を放っていた。それはもちろん。


「弾けろ......火星グラディウス


俺は走っていた体を浮遊ふゆうで浮かす。そして、空の上を拳にして、手のひらを握る。その瞬間、火星グラディウスが弾け飛んだ。

ここは、幅の広めの路地裏だ。だから、多少の強さの魔法ならイケるかも。

更に、俺は、火星グラディウスを打つときなら、方向を自由自在に操れるようになった。だから...あの三人に向かってすべての岩が飛んでいく。


「「「?!!!!!」」」


彼らは俺ほどの実力は持っていない。だからあの火星グラディウスの岩を相殺したり、跳ね返したりはできなかった。すぐ近くに落ちた火星グラディウスの岩に吹き飛ばされて奴らは住宅の壁に強く叩きつけられた。


「......死なしてはないはずだと思う...」


3人共、気絶していた。......なら大丈夫だわ。

てか、ルリアって子、大丈夫かな?


「...お〜い。大丈夫か?」


「............あ、えっと?今の...何だったんだろ........」


ルリアは先程の魔法の威力が高すぎて、現実か現実ではないかよくわからなくなっている。やはり、初めての人はそうなってしまうんだな。


「....怪我はないか?ないなら、帰るぞ」


「えっと....今の戦い?ありがとうございます」


「ああ、俺は一応ソロパーティーでAランクだから」


つまり、俺は1人で4人組のAランクパーティーといい勝負ができるというわけだ。なんというかバケモンだな。


「......!そっか、さっきまで私は誘拐されそうになっていたんでしたね...」


「ルリアは物忘れがひどいな...」


「.....なんで?私の名前を知っているの?まさか...あなたも仲間...?」


「......いや、俺は上級貴族だから知っているだけです」


俺は、少しだけ笑顔を作って見せて、そう返答した。






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