第15話 魔王の迷宮へ

 カインたちは、魔王の迷宮に向かっていた。

 途中で何度かモンスターと出会うが、Sランクパーティーがすぐさま対処し、目的地へ進んでいく。


 半日が過ぎようとした頃、迷宮を見つけたカインたちは、すぐに中に入っていくのであった。

 中に入ると、これまでの迷宮よりとてつもなく広いことがすぐにわかる。


「やはり相当でかいな。ここからは手分けして最下層を目指すぞ」

 指揮権があるSランクパーティーは、パーティーごとに分かれて進むことを指示する。

 カインたちは、途中で何度か採掘場を見つけては、入手した素材を吸収し、レベルアップをしながら進んでいく。


 二時間ほど経ったであろうか。

 地下八階にきたところで、地下十階が最下層となっており、そこにボスがいるという情報が入ってきた。

 おそらく、そのボスが魔王なのであろう。

 先行していたパーティーが既に魔王との戦闘に入っており、負傷者が出ているようだ。

 カインは地下十階へ急いで向かった。


 地下十階へ到着すると、すでにマッドは倒れており、Sランクパーティー以外は全滅しているようであった。

 Sランクパーティーも、苦戦しながら戦っている状況である。

 どうやら魔王は、仲間を呼ぶことができるようだ。

 大量のモンスターが突如、目の前に出現し、Sランクパーティーはその対応で手いっぱいとなっていた。

 カインが到着したことに気づいたSランクパーティーは、大声で叫んだ。


「やっときたかカイン! おれたちはこいつらの相手で手いっぱいだ! 魔王はお前がやれ」

 Sランクパーティーが魔王の手下、カインが魔王を相手することになった。

 魔王は、チロルやドラルも見たことがないモンスターであった。

 二本の角、三つ目、四本の腕、四刀流かのように四本の太いこん棒を持っている。


「カイン、こいつはめちゃくちゃ強いぞ」

 伝説のモンスターで一番強いドラルが、この魔王は強いというのだ。

 魔王が、とてつもない強さであることは、カインでさえ感じることができたのだ。

 目が合った瞬間、魔王は話し始めた。


「お前たちで最後か? すぐに灰にしてやろう」

 今、まさに最終決戦となる魔王との戦闘が始まろうとしていた。


「チロル、ドラル、頼んだぞ」

 まずは、チロルとドラルで戦うようにカインは指示を出した。

 チロルとドラルで攻撃を仕掛けるが、魔王にダメージは与えられない。

 魔王は攻撃を防ぎながらも、四本の腕で的確に反撃を入れてくる。

 チロルとドラルは、徐々にダメージを受けていく。


 見かねたカインは、全員での攻撃を指示する。

 メルも含めて、四人全員で同時に攻撃を仕掛けるが、四本の腕でそれぞれの攻撃が全て防がれて、いまだにダメージを与えられない。

 カインたちは攻撃が一切通じず、徐々に体力が減っていくのであった。


 「……カイン、話を聞け」

 苦戦する状況の中、ドラルから案があるという。


「痛いのでできればやりたくなかったのだが……」

 実はドラゴンの皮膚にはもう1つ、アレキサンドライトがあり、それを採掘しろというのだ。

 つまり、アレキサンドライトを『採掘』スキルで取得し、『素材吸収』スキルでレベルアップをするということだ。


「……すまない。少し我慢してくれ」

 とっさに、カインがドラルからアレキサンドライト採掘する。


 痛そうに一瞬、目を瞑ったドラルだが、すぐに力強い目でカインを見た。

 言葉はなかったが、心配するよりも、すぐに吸収しろという想いが伝わってきた。

 カインは、すぐにアレキサンドライトを吸収する。


 これまで何度も、『素材吸収』スキルにより、鉱石を吸収してきたカインだったが、この時の爽快感は感じたことがないものであった。

 カインの体は、眩いばかりに光り輝き、しばらくすると消えていった。

 吸収するときに、光ることも、初めてのことであった。

 鉱石の中で一番価値のある素材を吸収し、カインたちは大幅なレベルアップに成功したのであった。


「……急に強くなったのか? 何をしたのだ?」

 カインたちが、急激なレベルアップをしたことに魔王は気づき、不思議がった。

 おそらく、あの魔王のレベルでさえも超えてしまったのであろう。


「これで決めるぞ! チロル! ドラル!」

 ここでも、チロルの雷、ドラゴンの炎をまとったつるはしで、全力攻撃を仕掛けた。


「……そ、そんなばかな! ぐ、ぐわぁぁぁぁ……」

 カインの会心の一撃は、魔王の胸に直撃したのだ。


「や、やりましたね! 魔王は消滅しました」

 とうとうカインたちは、魔王を倒すことに成功するのであった。

 魔王の討伐と同時に、Sランクパーティーが戦っていたモンスターも、消滅した。


「……ふぅ、やったな。カイン」

 Sランクパーティーに労いの言葉をかけてもらい、緊張が解けたのであろう。

 カインたちは、笑顔で座り込むであった。


「よし、帰ろう」

 冒険者たちは、無事に魔王討伐を終えて、ギルドへ帰るのであった。

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