第10話 迷宮の出現

 街へ着いたカインは、さっそくクエストを確認するため、ギルドへ向かう。


「あ、お久しぶりです。クエストをお探しですか?」

 メイと挨拶を済ませ、クエストの内容を確認する。

 すると、新たな迷宮が発生したようで、討伐クエストが出ていたのである。


 迷宮は、レアな素材を入手しやすいため、カインは受注することにした。

 ついでに、水の伝説モンスターの情報が出たら教えて欲しいとメイへ伝える。


「……また伝説モンスターを仲間にするのですか?」

 水の伝説モンスターを仲間にすることが目的であるカインは呆れられるが、了承されたようだ。

 動機はどうであれ伝説モンスターの情報を把握できるのは、ギルドにとってもメリットがあるからである。

 迷宮の討伐クエストを受注したカインは、メルとチロルとともに迷宮の出現場所へ向かう。


 迷宮の入口へ到着すると、以前、決闘をしたCランクパーティーのマッドたちと出会う。

 決闘では勝ったとはいえ、実力を認められていないカインは、嫌味を言われ、競争を持ちかけられる。

 乗り気ではなかったが、返事待たずにマッドは先に進んでいった。

 しょうがなく、カインたちも後を進んでいくことにする。


 地下三階へ到着したところで、採掘ポイントを見つける。

 レアドロップの入手も目的であるカインは、採掘を進めることにした。

 なんと、採掘を始めた途端、『金』をすぐさま入手することができたのである。

 迷宮では、通常の洞窟より、レアなものが出やすく、幸運スキルも上乗せされたのであろう。

 チロルのレベルも上げておきたかったカインは、入手した素材を全て吸収することにした。


「あちらを見てください。どなたかきたようです」

 メルが言う方向を見ると、見慣れない三人組のパーティーがやってきた。


「……負傷している方がいるようですね」

 二人は重傷の怪我をしているようだ。

 話を聞くと、地下五階にいる迷宮のボスにやられたというのだ。


 迷宮のボスは必ず一体存在しており、最下層にいる。

 どうやら、この迷宮は地下五階までのようだ。

 地下三階まででマッドの姿が見当たらないことから、心配になったカインは先を急ぐことにする。


 地下五階に到着すると、すでに戦闘が発生し、全滅しかけているマッドを発見する。


「あれはマッドさんたちです。急ぎましょう」

 とどめの一撃を受けるところをカインたちは、すかさず助けに入る。

 ギリギリのところでボスの攻撃を受け止め、カインが反撃をしようとするとチロルが止める。


「待ってカイン。ボクにやらせてよ」

 どうやら、チロルはボスと戦いたいようだ

 まだ小さいチロルに不安を感じながら、実力を見ておきたいカインは許可を出すのであった。


 チロルに対し、余裕を見せるボスは、笑みを浮かべながら大きく振りかぶって攻撃を仕掛ける。

 攻撃を余裕で避けたチロルは、爪による一撃をボスに入れた。

 すると、凄まじい衝撃とともに、ボスは一瞬で砕け散っていったのである。


「やったよ。カイン」

 チロルは、褒めて欲しそうに笑顔で戻ってきた。


「……こ、これがチロルの実力ですか」

 伝説のモンスターとはいえ、まだ小さいチロルの実力がこれほどあることにカインとメルは唖然とする。

 言葉を失っていると、ふと、足下でキラキラ光るものが気になった。


「こ、これはダイヤモンドですよ!」

 メルが言うには、とてもレアな素材だと言う。

 おそらく、ボスがドロップしたものであろう。

 あとで、おっちゃんに鑑定してもらうことにして、ダイヤモンドを入手する。

 無事にボスを倒し、迷宮をクリアしたカインはギルドへ戻ることにした。


「……助かったよ。ありがとう。お前もなかなかやるな」

「今度から、おれたちはライバルだからな。負けないぞ」

 ようやく、マッドからも実力を認められたカインは、今後はライバルとなることを約束し、解散するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る