第8話 伝説のモンスター
翌朝、目が覚めたカインは、ぐっすり寝たことで疲れが完全に癒えていた。
ラビッターの肉で朝食を済ませ、カインたちは、さっそく森の奥深くへ出発するのであった。
すぐにモンスターと出会い、戦闘を行うが、決して弱くはないモンスターにまだレベルが低いカインたちは、苦戦する。
一時間は経ったであろうか。
一体も倒すことができなかったカインたちは、一度拠点まで戻ることにした。
「一体も倒すことができませんでしたね……モンスターより私たちのレベルが低いからではないでしょうか?」
メルの言う通り、レベル上げが必要と判断したカインは、採掘による素材集めをすることにした。
しかし、素材吸収スキルはカインしか持っていない。
ステータスを確認するが、やはり、素材吸収スキルには『パーティー共有可』の文字はない。
メルに経験値が入らないことを心配するカインだったが、パーティー登録をしていることで、メルにも経験値が入るというのだ。
さらに、幸運スキルが共有され、レア素材をドロップしやすくなり、効率よくレベル上げが行えると考えたのだ。
この日、一日中レベル上げを行ったカインとメルは大きくレベルアップに成功する。
翌日、再度、森の奥深くへ出発するのであった。
昨日と同様に幾度となくモンスターと出会うが、レベルの上がったカインたちは、順調にモンスターを倒して森の奥へ進んでいく。
「だいぶ暗くなってきましたね」
ふと気がつくと、すでに日が沈み始めていた。
一日中、出会ったモンスターを記録し、倒し続けてきた。
おそらく、百体以上は倒してきたであろう。
「だいぶ記録できましたね。今日はこのあたりで野宿にしますか?」
拠点からだいぶ離れてしまったカインたちは、野宿をすることにした。
野宿の準備のため、木を伐採して集めることにする。
「きゃああああああ!」
伐採を開始した途端、メルの悲鳴が聞こえた。
カインが駆けつけると、そこには、横たわるモンスターがいた。
「すみません。びっくりしてしまって……モンスターの赤ちゃんでしょうか?」
よく見ると、たしかにモンスターなのだろうが、狼のような見た目だ。
助けることにしたカインは、水と食料を与えてみることした。
フラフラしながらも、水と食料に手をつける元気はあるようだ。
少しすると、すぐさま横になり、寝息を立ててしまった。
「寝たみたいですね」
怪我をしているわけではなさそうなので、寝て起きたら元気になるだろうか。
心配しながらも、カインたちも、横で一緒に寝ることにした。
顔に違和感を感じたカインは、目を覚ました。
目を開けると、顔を舐めているモンスターの赤ちゃんがいたのである。
驚いて声を上げると、メルも目を覚ます。
「あ! この子、元気になったんですね! よかった!」
笑顔でカインを見つめるモンスターは、すっかり元気になったようだ。
懐かれてしまったカインは、連れて行くことにする。
「では、名前を付けてあげませんか?」
メルは、名前を付けることを提案する。
たしかに、名前がないと呼ぶ時に不便であろう。
悩んだ末にカインはモンスターの赤ちゃんを『チロル』と名付けた。
カイン、メル、チロルで引き続き、無人島の探索を進めることにした。
少し進んだところで、大きな音が鳴った。
どうやら誰かが戦闘中のようだ。
音が鳴る方へ向かうと、そこには全滅しかけたBランクパーティーがいた。
大きな狼のようなモンスターと戦闘中のようだ。
すかさず、カインが助けに間に入る。
「フン! また人間か。 死ね!」
大きく振りかぶった右手を、カインに対して振り下ろそうとした瞬間、チロルが叫んだ。
「待って! パパ!」
なんと、チロルは、この大きな狼のモンスターの子供であった。
カインが命の恩人であることを説明すると、モンスターは大人しくなった。
「パパは伝説のモンスターなんだよ」
「そういえば聞いたことがあります。狼のような伝説モンスターがいると」
どうやら、このチロルの親が伝説のモンスターだったようだ。
そして、チロルは伝説のモンスターの子供ということになる。
「わが子の恩人とは知らず、失礼した。もう人間には手を出さないと誓おう」
すっかり仲良くなり、戦闘は終わった。
「伝説のモンスターと出会ったとなると、すぐにギルドへ報告したほうがよさそうですね」
伝説のモンスターを仲間にしたかったカインだが、メルの言う通り、報告が優先と考えたのだ。
ギルドへ報告するため、すぐに帰ろうとするカインをチロルが止めた。
「カイン! ボクも一緒に行きたい! いいだろ? パパ」
なんと、チロルはカインについて行くというのだ。
「……いいだろう。いろいろ勉強してこい」
親も認めたため、チロルは正式に仲間になったのである。
まだ、赤ちゃんながらも、伝説のモンスターを仲間にしたカインは大喜びする。
傷ついたBランクパーティーも連れて、すぐさま船で無人島を出発したのであった。
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