第15話 空きビル

 以前住んでいたマンションの近くに、二階建ての空きビルがありました。

 ずっと使われていないようで、昼間でも人の出入りはありません。

 入り口は落ち葉が溜まり、シャッターは固く閉ざされたままです。


 ある日の日暮れ、子どもが泣き止まないので、非常階段であやしていた時のことです。

 あの空きビルの窓に、人影を見ました。

 電気もついていない二階の一室に、人影がうろうろしているのです。

 誰か従業員さんが来たんだろうか。

 そう思って入り口を見ましたが、車などは見えません。

 なんだろう、泥棒かな。

 その日は特に気にもせず、子どもが泣き止んだので、家に帰りました。


 翌日。特に事件にはなっておりませんでした。

 空きビルは相変わらず人気ひとけが無いままです。

 なぜ放置されているのか分かりませんが、あの空きビルは今もそのまま残っています。


 終わり。

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